生命保険に契約していると、所得税・住民税の生命保険料控除を適用できることがあります。
保険料を払い込んだ年には、年末近くになると契約先の保険会社から「生命保険料控除証明書」が送られてきます。
年末調整で申告することがありますが、生命保険料控除でどれくらいお得になるのか気になるかもしれません。適用すると、どれくらい税金が安くなるのでしょうか?
対象になる生命保険や控除額などについて解説します。
記事の目次
生命保険料控除とは?
生命保険料控除とは、所得税と住民税の計算上で軽減を受けられる税制上のしくみです。
その年に払い込んだ所定の生命保険の保険料額に応じて、課税の対象になる所得の一部を「控除」することで、税の負担が軽減されます。
控除の対象になる生命保険は?
生命保険料控除の対象になる生命保険は、大きく分けて3つあります。
①一般の生命保険料、②介護医療保険料、③個人年金保険料で、それぞれについて、払い込んだ保険料の額に応じて控除を受けられます。
一般の生命保険
定期保険、収入保障保険、終身保険などです。
財形保険、保険期間が5年未満の貯蓄保険、団体信用生命保険などは対象外です。
介護医療保険
民間の介護保険、医療保険、がん保険などです。
個人年金保険
個人年金保険のうち、「税制適格特約」という特約が付加されている契約です。
年金受取人が被保険者と同じであること、保険料払込期間が10年以上である(一時払は不可)といった要件もあります。
生命保険料控除の対象になる生命保険の種類
控除の分類 | 保険の種類 |
---|---|
一般生命 保険料 |
定期保険・ 収入保障保険・ 終身保険 など |
介護医療 保険料 |
介護保険・ 医療保険・ がん保険 など |
個人年金 保険料 |
「税制適格特約」がついた 個人年金保険 |
控除の対象になる保険料は年間いくらまで?
生命保険料控除の対象にできる保険料額には、上限があります。
上限額は、一般の生命保険、介護医療保険、個人年金保険それぞれについて、1年間に支払った保険料のうち、所得税では上限8万円分、住民税では上限5.6万円までです。
3種類の生命保険料控除を全て適用する場合には、所得税では最大24万円分の保険料を、生命保険料控除の対象とすることができます。
配偶者や子どもなどの家族の保険料を払い込んだ場合には、要件を満たせば、その分も納税する人の保険料控除の対象に含められます。
生命保険料控除でいくら(所得から)控除される?
所得税や住民税を計算する際には、対象になる保険料額に応じた控除額を、所得から控除します。控除とは、課税される所得から一定額を差し引くことです。
控除される金額は、一般の生命保険・介護医療保険・個人年金保険それぞれについて、所得税で上限4万円まで、住民税で上限2.8万円までです。
3種類合計では、原則、所得税では最大12万円、住民税では最大7万円をその年の所得から控除することができます。
生命保険料控除で控除できる上限額
控除の 分類 |
控除できる 上限額 |
|
---|---|---|
所得税 | 住民税 | |
一般生命 保険料 |
4万円 | 2.8万円 |
介護医療 保険料 |
4万円 | 2.8万円 |
個人年金 保険料 |
4万円 | 2.8万円 |
合計での 控除の上限額 |
12万円 | 7万円 |
※住民税の所得控除の上限額は、保険種別ごとの上限は2.8万円ですが、全体での合計額は7万円です。
保険料ごとの控除額(控除額の計算式)
1年間に払い込んだ年間支払保険料額が、保険種類ごとに8万円(所得税)・5.6万円(住民税)に満たない場合には、払い込んだ保険料額に応じて、下記のように控除額が決まります。
所得税の控除される額
年間支払 保険料 |
控除される 金額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料全額 |
20,000円超 40,000円以下 |
(支払保険料×1/2)+ 10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 |
(支払保険料×1/4)+ 20,000円 |
80,000円超 | 40,000円 |
住民税の控除される額
年間支払 保険料 |
控除される 金額 |
---|---|
12,000円以下 | 支払保険料全額 |
12,000円超 32,000円以下 |
(支払保険料×1/2)+ 6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 |
(支払保険料×1/4)+ 14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
2011年以前に契約した保険は控除額が異なる
2011年(平成23年)12月31日以前に締結した保険契約(旧契約)については、生命保険料控除の控除額が下記の通り異なります。
所得税の控除される額
年間支払 保険料 |
控除される 金額 |
---|---|
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 |
(支払保険料等×1/2)+ 12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 |
(支払保険料等×1/4)+ 25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
住民税の控除される額
年間支払 保険料 |
控除される 金額 |
---|---|
15,000円以下 | 支払保険料全額 |
15,000円超 40,000円以下 |
(支払保険料×1/2)+ 7,500円 |
40,000円超 70,000円以下 |
(支払保険料×1/4)+ 175,000円 |
70,000円超 | 一律35,000円 |
生命保険料控除で税金はいくら安くなる?
生命保険料控除を受けると、税金は実際にはどれくらい安くなるのでしょうか?
所得税の軽減額
所得税は、その年の所得から、所定の控除を差し引いた後に、課税される所得金額に応じた税率(5%~45%)をかけて計算します。
細かな計算は個別の条件によって異なるため一概にいえませんが、かりに、生命保険料控除額が12万円で、所得税率が10%の場合には、軽減額の目安は1.2万円になります。
住民税の軽減額
住民税のうち、所得に対して課税される所得割は、基本的にほとんどの自治体で税率10%とされています。
したがって、かりに生命保険料控除額が7万円の場合には、軽減額の目安は7,000円になります。
生命保険料控除の申告と合わせて生命保険の見直しも
生命保険料控除を受けると、所得税や住民税の負担が軽減されることがあります。
適用には年末調整または確定申告による申告が必要ですので、保険料を払い込んだ年には忘れずに申告したいですね。
また、生命保険料控除を適用するには基本的に、契約先の保険会社から発行される「保険料控除証明書」が必要です。
毎年、年末にかけて送られ、1年間に払い込んだ保険料の金額などが記載されています。このタイミングで、生命保険料をいくら支払っているのかを確認してもよいですね。
また、生命保険料控除をきっかけに、どのような生命保険に契約しているか、契約内容を確認したり、見直しを検討したりするきっかけにすることもできますね。
個別の状況で判断が異なることがありますから、詳しくはお近くの税務署や税理士などの専門家に確認すると安心です。
※この記事は2024年12月時点の税制、法令に基づいて執筆しています。記載された情報は随時見直しておりますが、最新ではないことがあります。
※一般の方に理解しやすいよう、税制等に関する表記を一部簡略化している箇所があります。正式名称や個別のケースに関わる厳密な数値については、専門機関等でご確認ください。
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執筆者プロフィール
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザーマネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。