ドル建て保険 短期解約でリターン低下 金融庁調査
加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る
米ドルなどで運用する外貨建保険について、継続期間が短いと長期運用した場合に比べてリターンが劣ることが、金融庁の調査で明らかになりました。
外貨建保険のうち一時払の契約については4年間で約6割の解約が発生しており、継続期間の短期化も見られました。
外貨建保険のしくみとあわせて解説します。
ニュースのポイント
- ドル建て保険などの外貨建一時払保険のリターンは、短期解約の場合劣ることが明らかに
- 調査対象の外貨建一時払保険では、契約後4年間で約6割の解約が発生
- 解約により発生する費用がリターンを押し下げる原因にもなる
ドル建て一時払保険のリターンは短期運用の場合劣る
調査は金融庁が代表的な米ドル建て一時払保険について、2023年8月時点での運用実績を分析したものです。
調査対象となった8商品の実績では、5年以上継続して運用した場合には平均リターンが約5%だったのに対し、2.5年の場合には4%以下にとどまっていました。
契約後4年間で約6割が解約
また調査対象の外貨建保険では、購入後4年間で約6割が解約されていることもわかりました。
その多くは「ターゲット型」と呼ばれる保険で、払い込んだ保険料額が運用の結果、あらかじめ設定した目標値に到達した場合に、自動的に日本円建の終身保険等に移行する商品です。
金融庁によると、日本円建保険への移行と同時に保険が解約されるケースも多いようです。
外貨建保険など貯蓄性・運用性のある保険では、解約時に「市場価格調整」や「解約控除」という費用が発生することがあります。
調査では、これらが利益を押し下げる要因になっていることもわかりました。
解約直後に同じ商品の再購入で手数料負担が二重になるリスクも
加えて、契約期間の途中で解約した顧客に対して、同じ商品を再度販売するケースも報告されています。
外貨建一時払保険には契約時に販売手数料を支払うタイプがありますが、契約期間に応じた販売手数料を支払うと、基本的には途中解約時に以降の期間分の手数料が戻らないものが多いようです。
そのうえで同一あるいは類似の商品を再度購入した場合には、販売手数料等を二重で負担するリスクが懸念されます。
金融庁は、現状は業界でこうした乗換販売の実態把握や監査が十分に行われていないとも指摘しています。
外貨建保険とは
外貨建保険は、払い込んだ保険料が米ドルやユーロ、豪ドルなどの外貨で運用される保険です。保険料の払い込みや保険金、解約返戻金などの受け取りを外貨で行うものが一般的です(日本円を選択できる場合もあります)。
死亡時などの保障を確保するほか、貯蓄や資産運用の手段としても活用されることがあります。
金利の高い外国通貨で運用することにより高い利率を期待できる反面、為替変動の影響を受ける、通貨交換に手数料がかかるなどのリスクもあります。
保険会社などでの外貨建保険の販売時には、これらのリスクを顧客に十分に説明することが義務付けられています。
出典:金融庁「リスク性金融商品の販売会社等による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果」
この保険ニュースの解説者
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー