2025年の年金改革に向け審議が開始 国民年金保険料は65歳まで納付も検討
加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る
5年ごとに見直される公的年金制度について、今年10月から次の改正に向けた審議が開始されました。
見直しは少子高齢化や経済状況の変化に対応した制度維持のために行われるもので、今回は国民年金保険料の納付期間の延長や年金の受給開始時期の拡大、高齢期に働きながら年金を受け取るときの「在職老齢年金」の見直しなどが検討される見込みです。
ニュースのポイント
- 2025年に公的年金が改正予定 今年10月から審議が開始
- 検討事項には国民年金の保険料納付年齢の引き上げなど
- 国民年金保険料を65歳まで納めた場合、年金の給付水準は約3割増加も
国民年金保険料が65歳まで納付も 5年ごとの年金改革の審議が開始
公的年金制度の見直しに向けた審議が、厚生労働省の社会保障審議会で開始されました。次回の改革は2025年の予定で、少子高齢化により年金財政が悪化するなか、年金の受給水準を維持するための改正案が検討されます。
このうち国民年金では、特に保険料の納付期間の延長が注目されています。
国民年金保険料の納付期間の延長 40年から45年へ?
年金改革案のひとつが、国民年金の保険料の納付期間の延長です。現在は、国民年金の保険料を納付するのは原則20歳から60歳の40年間です。これを65歳までの45年間へ延長する案が挙げられています。
納付期間を45年とした場合、65歳以降に国民年金から受け取る老齢基礎年金の給付水準はモデル世帯の所得代替率で25.6%~30.4%プラス(経済情勢により異なる)になり、現行よりも改善すると試算されています。
現行は要件を満たす場合のみ60歳以降に任意加入可能
国民年金は現在、加入できる年齢は原則60歳までで、その間の保険料納付に応じて、老後に受け取れる年金額が決まります。40年間納付した場合、65歳から受け取れる年金額は満額で月額64,816円です(令和4年度)。
納付済の期間が40年に満たないときや、年金の受給資格を満たしていないときなどに限り、60歳以降でも国民年金に「任意加入」をして保険料を納めることができます。
保険料を納めることで年金額を満額に近づけることができます。
厚生年金では働きながら年金を受け取る際の支給停止の見直し
厚生年金に加入している人については、働きながら年金を受け取る「在職老齢年金」について見直されるようです。
現在は賃金と老齢厚生年金による収入の合計が一定額を上回ると年金額が減額されたり、支給が停止されたりします。この収入水準を見直し、仕事による収入がある人でも年金を受け取りやすくすることも検討されています。
すでに2022年4月からは60歳から64歳の人について、基準額が28万円から47万円に引き上げられました。
65歳以上の人は従来から47万円が在職老齢年金の基準とされていますが、これを今後緩和、廃止する案が検討される見込みです。
年金の所得代替率とは?
年金を受け取り始める65歳時点での年金額が、そのときの現役世代の手取り収入額と比べてどれくらいの割合かを示すのが、「所得代替率」です。ある年のモデル世帯の年金と、その年の現役世代男子の平均手取り賃金とを比べて算出します。世帯の一人あたりの所得が高い世帯ほど、所得代替率は低く、所得が低い世帯ほど所得代替率が高くなるように、年金は設計されています。
ただし、実際に支給される年金額は現役時代に納付した保険料額や加入期間に基づいて決まりますので、低所得世帯の年金額が高所得世帯の年金額より高くなるしくみではありません。
出典:厚生労働省「第1回社会保障審議会年金部会 資料2」
出典:日本年金機構「令和4年4月分からの年金額等について」
出典:日本年金機構「任意加入制度」
参考:厚生労働省「所得代替率と年金の実質価値」
この保険ニュースの解説者
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー