還付金詐欺の被害が全国で増加 医療費や保険料の払い戻しがあるとの電話に要注意
加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る
お金が戻ってくるという嘘の電話で被害者をATMに誘導して、不正に操作をさせてお金をだまし取る「還付金詐欺」が増加しています。なかでも「健康保険料が戻ってくる」「年金が未受領になっている」「医療費が過払いになっている」など、社会保険や医療費を名目にした手口が多いようです。
還付金詐欺の内容や傾向について解説します。
ニュースのポイント
- 嘘の電話でATMに誘導し、お金を振り込ませる「還付金詐欺」が2021年に増加
- 医療費や保険料が戻るといって、ATMを不正に操作させるのが典型的な手口
- 不審な電話があったときには警察や家族、自治体などに相談を
お金が戻るといってだます「還付金詐欺」が増加
医療費の還付金がある、保険料が戻ってくるなどの名目で被害者をだまして、ATMから犯人にお金を振り込ませてしまう還付金詐欺が、2021年に増加しました。2021年10月末までで全国で約3,400件、38億円以上の被害が発生しており、過去10年間のピークだった2016年の水準に迫る勢いです※1。
最近では、新型コロナウイルス感染症に関連した給付金を受け取れるという名目での手口が出てきたり、コロナ禍で対面を控える傾向がある中で、電話だけで被害者に接触できる還付金詐欺はオレオレ詐欺や預貯金詐欺のように対面でお金を受け渡す必要がないことなどから、被害が増えているとみられています。
還付金詐欺の典型例
還付金詐欺は、架空の話を名目にした電話がかかってきて、お金を受け取る手続きに必要という指示に従ってATMを操作すると、犯人の口座にお金を振り込んでしまう詐欺です。
犯人は自治体、税務署、年金事務所などの職員を名乗り、社会保険や税金が還付されると持ちかけるのが典型例です。
医療費や社会保険料の還付名目が大半
特に多いのは医療費や健康保険、年金を名目にした手口です。2021年1月から10月に発生した還付金詐欺のうち、医療費名目の被害は約半数、健康保険や社会保険は約4割を占めていました※1。
典型的な手口では、電話で「介護保険料が過払いになっているので、今からATMに行って受け取ってください」「年金をまだ受け取れていないようですので、ATMから受取り手続きをしてください」などと言われて、ATMから携帯電話で再度犯人に連絡するように誘導されます。
ATMで、電話口の犯人の指示に従って操作をしていると、自分がお金を受け取るのではなく、犯人にお金を振り込む手続きをしてしまいます。
不審な電話がかかってきたら、すぐに対応せずに警察や家族に相談を
公的機関から電話がかかってきて、医療費や社会保険の還付金をATMから受け取れることはありません。こうした電話がかかってきたら、すぐに相手に従わずに確認することが大切です。
まず、地域の窓口や税務署、年金事務所などの公式な電話番号にかけ直して確認したり、警察などに相談するなどで、被害を防げるのではないでしょうか。
お住まいの地域内での被害状況や、実際に起きた還付金詐欺の実例は、自治体や最寄りの警察のホームページやチラシで発信されていることがあります。
身近な例を確認しておくと、同じような電話がかかってきたときに詐欺に気づくことができるかもしれません。
還付金詐欺とは?
還付金詐欺は、税金や社会保険料、医療費などが還付されるという架空の話で、自治体や税務署などの職員を装った犯人が電話をかけ、被害者にATMを操作させてお金を振り込ませ、だまし取ってしまう詐欺です。オレオレ詐欺や預貯金詐欺、架空請求詐欺などとならぶ特殊詐欺のひとつで、全国で多数の被害が発生しています。
この保険ニュースの解説者
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー