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更新:(公開:2020年9月16日)

自賠責保険とは?補償内容と仕組みを分かりやすく解説

執筆者

加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る

自賠責保険とは?

自賠責保険は、運転中に思わぬ交通事故を起こして人にケガをさせた、死亡させてしまったなどで、被害者への賠償責任を負ったときの費用に備える保険です。クルマやバイク、原付のすべてに、法律で加入が義務づけられています。

自賠責保険の内容や、加入していないとどうなるかについて知っておきましょう。

自賠責保険は全ての車に義務付けられた強制保険

運転していて交通事故を起こして、人にケガをさせてしまったり、死亡させてしまったりしたときには、法律上の損害賠償責任を負わなければなりません。賠償額は数百万円、数千万円に上ることがあり、個人が自分で払うにはとても重い負担になります。

ところが、加害者側にもし経済的な支払い能力がなく、賠償金を払うことができなければ、被害者は受けた損害に対して何も経済的な補償をしてもらえません。

そこで、被害者に対して最低限の救済をするために、自賠責保険があります。法律によってすべての車が加入することになっています。自家用車のほか、バイク、原動機付き自転車(原付)、タクシーなど営業用の乗用車や貨物自動車、トラックなども対象です。

自賠責保険の3つの補償

自賠責保険は、自動車による人身事故でケガをさせた、死亡させた時などに保険金が支払われます。補償内容や支払われる金額は、3つの項目ごとにそれぞれ決められています。

1.傷害(ケガ)による損害

運転中の交通事故で人にけがをさせときに、被害者の治療費などが保険で支払われます。「傷害」による損害への補償として、被害者1人につき上限120万円までが支払われます。

傷害への補償に含まれるのは、ケガをした被害者の診察料や手術料、入院料はもちろん、治療に関連してかかった費用や休業補償なども含まれます。それぞれ、所定の金額か、必要な実費が上限額の範囲内で支払われます。

自賠責保険の傷害補償のおもな対象
  • 治療費(診察料、手術料、投薬料、入院料など)
  • 入院中に必要な雑費
  • 通院の交通費
  • (被害者が子どもの場合)付き添いをする近親者が看護のために要する費用
  • 文書の発行費用(診断書、診療報酬明細書、交通事故証明書、印鑑証明書などの発行手数料)
  • けがによって収入が減少した場合の休業補償(原則1日あたり6,100円。有給休暇を消化した場合や、主婦の場合も所定の金額まで支払われます)
  • 慰謝料(原則1日あたり4,300円)

2.後遺障害による損害

事故のケガによって被害者に後遺障害が残ったときには、その障害の程度に応じて逸失利益と慰謝料が支払われます。

後遺障害への補償は、障害の等級に応じて75万円から4,000万円を限度に、ケガによって将来にわたって失われた見込みの収入や、事故による精神的・肉体的な苦痛に対して支払われます。

3.死亡による損害

運転中の事故で、人を死亡させてしまった場合には、被害者1人につき3,000万円が自賠責保険から支払われます。
死亡への補償には、被害者の葬儀代、死亡によって失った逸失利益、本人と遺族への慰謝料が含まれます。

支払い対象 限度額(1人あたり)
傷害による
損害
治療費、看護料、諸雑費、 通院交通費など 120万円
後遺障害の
損害
逸失利益、慰謝料など
  1. 神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で、介護を要する場合:3,000万円~4,000万円
  2. 1以外の場合: 75万円~3,000万円
死亡による
損害
葬儀費、逸失利益、慰謝料 など 3,000万円

これら3つについて、それぞれに損害額の算出基準が決まっており、ケガの状況や事故時の被害者の年齢や仕事、家族構成などを考慮して補償額が算出されます。ただし、被害者側に重大な過失があるなど、事故の責任がある場合には保険金が減額されたり、自賠責保険が支払われないことがあります。

自賠責保険の補償を受けるしくみは?

万が一、運転中に事故を起こして自賠責保険の補償を受けるときには、損害保険会社などに請求書類を提出して、損害の調査を受けて保険金を支払ってもらいます。請求方法には、次の3つがあります。

被害者請求

事故の被害者が、損害賠償額を請求する方法です。加害者側から賠償を受けられないときに、加害者が加入している損害保険会社に直接連絡をして請求手続きをします。

加害者請求

加害者側が保険金の請求手続きをする方法です。事故の被害者に賠償金を支払った後で、加入している損害保険会社に保険金を請求します。

一括払い制度

事故の加害者が自賠責保険の他に任意の自動車保険にも加入している場合には、自動車保険の契約先の損害保険会社が窓口になって、任意の自動車保険の保険金と自賠責保険の賠償金を合わせて支払うことがあります。

加害者側が契約先の損害保険会社に手続きをすると、加害者に代わって損害保険会社から被害者に支払います。

自賠責保険に入っていないとどうなる?

自賠責保険は、法律によってすべての自動車に加入が義務づけられています。加入していないと、運転することはできません。未加入で運転すると交通違反として1年以下の懲役刑または50万円以下の罰金を科されるうえ、運転免許証には違反点数6点が付いて免許停止処分になってしまいます。

また、運転するときには必ず自賠責保険の証明書を持っていることも必要です。持っていないと30万円以下の罰金が科せられます。

加えて、車検のときには有効期間内の自賠責保険に加入していることが必須です。車検の有効期間をすべて満たす自賠責保険に入っていないと、車検が通らず、車検証を交付してもらえません。

無保険で事故を起こした場合、自費で賠償を行うことに

万が一、自賠責保険に未加入で事故を起こしてしまうと、被害者には加害者が自分で賠償するのが基本です。しかし、自賠責保険に未加入で、また請求された賠償金が高額で支払えないときなどに、国が代わりに被害者に立替払いを行う政府の保障事業があります。

しかし、これで支払いを免除される訳ではありません。後で、国などが立て替えた賠償金を請求されることになります。

なお、自賠責保険に入っておらず、任意の自動車保険だけに加入している状態で事故を起こしたときには、自賠責保険が支払われないのはもちろん、任意の自動車保険からおりる保険金は自賠責保険の上限額を超えた部分に限られます。

たとえば事故で被害者が亡くなった場合、本来は自賠責保険から上限3,000万円が、これを超えた金額が任意の自動車保険から支払われるしくみです。もし5,000万円の損害賠償を請求された場合、任意の自動車保険から2,000万円はおりるものの、自賠責保険に入っていないと3,000万円は自分で払わねばなりません。

自賠責保険の加入漏れ、更新漏れがないか確認を

すべての自動車を運転する際に必須の自賠責保険は、事故を起こしたときに負う損害賠償に備える最低限の保険です。事故を起こさなくても加入が義務ですし、入っていないと罰則がありますから、必ず入っておきましょう。

また、実際に事故を起こしたときには高額な賠償責任を負い、自賠責保険だけでは足りないケースが多いです。上乗せとして任意の自動車保険も加入しておくのが安心です。

参考:国土交通省「自賠責保険ポータルサイト」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。

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