人生には予測できない出来事がいくつもあります。なかでも病気やけがによる入院や手術は、家計にとっても重い負担になりがちです。公的医療保険が充実していると言われる日本でも、差額ベッド代や先進医療、働けない期間の収入減など、備えておきたいリスクは意外と多いものです。そこで検討したいのが医療保険です。ただ、医療保険にもさまざまな種類があることに躊躇するケースも見られます。この記事では、病気リスクへの基本的な備えを整理しながら、定期医療保険と終身医療保険の違い、保険料や選び方について解説します。
定期医療保険と終身医療保険は何が違う?
医療保険の検討にあたって、多くの人が最初に直面するのが「いつまでの保障とするのか」の選択です。医療保険には「定期医療保険」と「終身医療保険」があり、どちらも病気やけがに備える保険である点は同じですが、保障が続く期間や保険料のしくみには大きな違いがあります。それぞれの特徴を正しく理解することは、自分に合った保障を選ぶうえでの第一歩となります。まずは、基本的なしくみについて整理してみましょう。
定期医療保険とは?
「定期医療保険」とは、一定の期間にわたって医療保障を受けられる保険です。入院した場合の入院給付金や手術を受けた場合の手術給付金などが主な保障内容となります。商品によっては、通院保障や先進医療特約、がん特約、三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)などの特約が付けられる場合もあります。
基本的なしくみと保障内容
定期医療保険は「一定期間の保障」を前提に設計されており、契約時に定めた期間内に入院や手術をした場合に給付金が支払われます。必要な保障を必要な期間だけ確保するシンプルな構造でライフステージに応じて保障内容を柔軟に見直しやすい点が特徴です。
保障期間は10年・15年など更新型が主流
保障期間は10年や15年など一定期間の保障を確保することができます。多くの場合、期間満了時には、更新により契約を継続することができます。ただし、その時点の年齢で保険料が再計算されるため、一般的には年齢が上がるほど保険料も高くなります。
定期医療保険のメリット・デメリット
定期医療保険のメリットとして、保険料が低く抑えられる点があげられます。若い世代でも加入しやすく、必要な期間だけ保障を確保できるという特徴があります。
一方で、更新のたびに保険料が上がる可能性があるほか、一定年齢で更新できなくなる商品もあることはデメリットといえるでしょう。また、長期間加入し続けると、結果的に支払う保険料の総額が多くなる傾向があります。
終身医療保険とは?
「終身医療保険」は、一生涯にわたって医療保障が続く保険です。契約後、途中で解約しない限り、入院や手術などの保障が継続します。
基本的なしくみと保障内容
保障内容については、基本的に定期医療保険と変わりません。病気やけがに対する備えとして、生涯にわたって保障を確保することができます。入院給付金や手術給付金が中心となりますが、商品によっては、通院保障や先進医療特約、がん特約、三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)などの特約が付けられる場合もあります。
保険料は加入時のまま一生涯変わらない
終身医療保険には、保障が一生涯続くため、更新という概念はありません。保険料も基本的には契約時の金額のまま変わらないタイプが多く、長期的に保険料を見通しやすいといえるでしょう。
終身医療保険のメリット・デメリット
メリットとしては、終身にわたって保障を確保できるという安心感を得られることでしょう。医療費の負担が増えやすい高齢期になっても、変わらない保険料で継続できる点はメリットと言えます。
一方で、生涯にわたる保険料率を加味するため、定期医療保険と比べると保険料はやや高めになる傾向があります。また、途中で保障内容を見直す場合には、新たに契約し直す必要があり、それまでに支払った割高な保険料が無駄と感じるケースもあります。
なお、保険会社によっても、商品によっても違いがあります。終身医療保険でも一定期間ごとに保障内容の見直しができるタイプや特約部分のみ更新されるものなどもあります。医療保険の検討にあたっては、複数の選択肢を比較しながら、商品概要を確認することをおすすめします。
定期医療保険と終身医療保険、どっちを選ぶ?ライフステージ別の選び方
「定期医療保険」「終身医療保険」の特徴や、それぞれのメリット・デメリットについてお伝えしました。年齢や家族状況、経済状況によって選ぶ基準は異なるでしょう。また指向や心理的な面でも選択肢は異なるかもしれません。ここではライフステージごとの考え方を紹介します。
若い世代であれば定期医療保険で保障を確保する考えも
「20代や30代前半など比較的若い世代では、まだ貯蓄が十分に形成されていないケースも多くあります。万一の入院や手術に備えるために、まずは保障を確保するという考え方も有効です。
このような場合には、保険料を抑えながら医療保障を準備できる定期医療保険が選択肢となり得るでしょう。必要最低限の保障を確保しつつ、家計への負担を小さくするという考え方です。
一方で、若いうちに終身医療保険に加入しておくことで、将来の保険料を一定にしておきたいと考える人もいます。どちらを選ぶかは、家計状況や将来の見通しによって判断が分かれる部分です。
子育て世帯なら教育費も考慮する
子育て世帯では、教育費や住宅ローンなどの支出が重なりやすい時期でもあります。そのため、家計全体のバランスを考えながら保障内容を検討することが重要です。
医療保険という観点では、がんや脳血管疾患、心疾患といった重大な病気に備える特約を重視するケースも見られます。長期の治療や働けない期間が生じる可能性があるためです。
ただし、保険料が高くなりすぎると家計を圧迫する可能性もあります。必要な保障の優先順位を考えつつ、保険料負担を調整、検討することをおすすめします。
老後の保障内容や保険料負担によって、終身医療保険も検討してみる
40代後半から50代、そして退職を意識し始める世代では、保険に対する考え方が少し変わってきます。これまで加入していた保険を見直すタイミングでもあります。
例えば、保険料の負担をできるだけ抑えたい場合には、保障内容を整理するという選択肢もあります。一方で、将来の医療費や入院への不安を考え、終身で保障が続く医療保険を確保しておきたいと考える人もいます。
また、この世代では貯蓄がある程度形成されているケースもあり、「保険で備える部分」と「貯蓄で対応する部分」を分けて考えることも選択肢です。病気やけがへの備えとして、すべてを保険でカバーするのではなく、自分の資産状況や生活スタイルに合わせたバランスを検討することが大切です。
ライフステージや家計状況に合わせて、医療への備えを
「定期医療保険」と「終身医療保険」は、どちらも病気やけがへの備えとして有効な保険ですが、保障の期間や保険料のしくみに違いがあります。定期医療保険は、一定期間の保障を比較的抑えた保険料で確保できる一方、更新によって保険料が変わる可能性があります。終身医療保険は一生涯の保障が続く反面、加入時の保険料はやや高くなる傾向があります。
重要なのは、自分のライフステージや家計状況に合わせて考えることです。若い世代ではまず保障を確保することが優先になる場合もありますし、子育て世帯では教育費とのバランスを取る必要があります。老後を見据える世代では、保険料の負担や将来の医療費への不安など、それぞれの状況によって判断が分かれます。
また、医療費への備えは保険だけが方法ではありません。貯蓄を積み立てておくことや、公的医療保険制度のしくみを理解することも重要です。高額療養費制度など、医療費の負担を抑える制度があることを踏まえたうえで、どの程度の保障が必要かを考えることが望ましいでしょう。
経済的な負担、将来の病気への不安、さらには介護や認知症への心配など、人によって備えたい内容は異なります。保険のしくみを理解し、自分にとって納得できる形で準備することが安心に繋がります。
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執筆者プロフィール
大竹 麻佐子(おおたけ あさこ)
ゆめプランニング代表
CFP(R)認定者、相続診断士、J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社・銀行・保険会社など金融機関での勤務を経て、2015年ゆめプランニング開業。
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