近年、賃貸向けの火災保険(賃貸用マンション、アパート、賃貸一戸建用など)の保険料は、全国的に値上げが続いています。背景には、台風や集中豪雨などの自然災害による保険金支払いの増加、住宅修理費の上昇などがあります。
賃貸契約時や更新時に加入する機会が多いため、「次回更新するときに保険料はいくらになるのか」「少しでも負担を抑える方法はないのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、火災保険の保険料が値上がりしている理由や賃貸入居者への影響、保険料を抑えるための対策についてFPが解説します。
火災保険の保険料値上がり推移
火災保険の保険料は、近年複数回にわたって改定されています。特に、自然災害の増加や建築コストの上昇を背景に、保険料の引き上げが行われています。
以下は、損害保険料率算出機構による火災保険参考純率の改定推移です。
なお、火災保険参考純率とは、損害保険料率算出機構が算出する、保険会社が保険料を設定する際の参考となる数値です。
火災保険参考純率の改定推移一覧
参考:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」
2023年6月の参考純率改定を踏まえ、多くの損害保険では2024年以降、火災保険料の改定が実施されました。このように、参考純率は、各保険会社が保険料を見直す際の判断材料の一つとなっています。
また、自然災害の増加や建築資材・人件費の高騰などを背景に、今後も保険料の値上げが行われる可能性があります。
なぜ火災保険の保険料が値上がりしている?
火災保険の保険料が上昇している背景には、自然災害による保険金支払いの増加や住宅修理費の上昇などがあります。
また、近年は地域ごとの災害リスクの違いを保険料に反映する動きも進んでいます。
本章では、火災保険料の値上げにつながっている主な理由を解説します。
自然災害による保険金支払いの増加
火災保険の保険料が上昇している大きな理由の一つが、自然災害による保険金支払いの増加です。
火災保険は火災だけでなく、商品によっては台風や豪雨による水災や風災、雪災なども補償対象になります。
近年は台風の大型化や集中豪雨の頻発などにより、住宅被害が増加しています。
保険会社は将来発生する可能性のある保険金支払いに備えて保険料を設定しているため、災害による支払いが増えると、保険料の値上げにつながることがあります。
水災料率の細分化
2023年6月の参考純率改定では、水災に関する保険料率のしくみが見直されました。
従来、水災補償の保険料は都道府県単位を基本として設定されていました。しかし、同じ都道府県内でも河川の近くや低地など、地域によって水害リスクには違いがあります。
そこで、市区町村単位を基本とした水災リスクに応じて、保険料を5区分に細分化するしくみが導入されました。
区分と水災リスク一覧
| 区分 |
水災リスク |
| 1等地 |
低い |
| 2等地 |
やや低い |
| 3等地 |
中程度 |
| 4等地 |
やや高い |
| 5等地 |
高い |
参考:損害保険料率算出機構「(別紙)水災料率の細分化について」
水災リスクが高い地域では、水災補償を付けた場合の保険料負担が大きくなる可能性があります。一方で、リスクが低い地域では負担が軽減される可能性があります。
建築資材費・人件費の高騰
火災保険の保険料の値上げには、住宅修理費の上昇も影響しています。
火災や自然災害で住宅が損害を受けた場合、保険金は修理費用などに充てられます。
しかし近年は、木材や鋼材などの建築資材価格や人件費が上昇しており、同じ規模の被害でも修理費用が高まっているのが現状です。
結果として、将来の保険金支払いに備えるため、保険料値上げの要因となっています。
賃貸入居者の保険料はどうなる?
火災保険の値上げは、賃貸住宅に住む人にも影響する可能性があります。
賃貸向け火災保険は、建物ではなく入居者の家財や大家さんへの損害賠償などを補償する内容が中心で、持ち家向けより保険料負担は比較的小さい傾向があります。
ただし、更新時には保険料や補償内容が変更される場合があるため、契約内容を確認することが大切です。
本章では、賃貸入居者の火災保険料の相場や、更新時に確認したいポイントについて解説します。
そもそも賃貸入居者の火災保険料の相場は?
賃貸向けの火災保険は、2年契約で加入するケースが多くあります。保険料は、2年契約の場合で1万円〜2万円程度が一般的な目安です。
ただし、実際の保険料は以下のような条件によって変わります。
そのため、保険料の相場を一律に示すことは難しいのが実情です。
ご自分の保険料の目安を知りたい場合は、保険会社の無料見積もりシミュレーションなどを活用し、補償内容と保険料を比較してみるとよいでしょう。
なお、賃貸向けの火災保険では、建物そのものではなく、入居者自身の家財や大家さんへの損害賠償などを補償する内容が中心です。
代表的な補償には、以下のようなものがあります。
保険料だけを見るのではなく、自分の生活に必要な補償が含まれているか確認することが重要です。
不動産会社から指定された保険が更新時に値上がりする可能性
賃貸契約時には、不動産会社から案内された火災保険に加入するケースも少なくありません。
近年は火災保険全体で保険料改定が続いているため、加入中の保険も更新時に保険料や補償内容が見直される可能性があります。
ただし、賃貸契約で求められる補償条件を満たしていれば、自分で保険を選べる場合もあります。
更新時には、以下を確認しましょう。
必要な補償を維持しながら見直すことで、保険料負担を抑えられる可能性があります。
水災等地が高い地域は特に注意
水災リスクが高い地域では、水災補償を付けた場合の保険料負担が大きくなる可能性があります。
賃貸住宅で火災保険を選ぶ際は、保険料だけでなく、住んでいる地域の水害リスクも確認しましょう。
自治体が公開しているハザードマップを確認することで、洪水や浸水リスクを把握できます。
現在加入中の保険の保険料はいつ変わる?
現在加入している火災保険の保険料は、契約期間中に変更されることは基本的にありません。影響を受けるのは、主に契約更新のタイミングです。
例えば2年契約の場合、更新時にはその時点の保険料や補償内容が適用されます。
更新案内が届いたら、そのまま継続するだけでなく、現在の生活に必要な補償か確認しましょう。
賃貸入居者が保険料を抑えるための4つの対策
火災保険の保険料を抑えるには、単純に補償を削るのではなく、自分に必要な補償を見極めることが大切です。
賃貸契約時に案内された保険へそのまま加入している場合でも、補償内容を確認すると、現在の生活に合わない補償や重複している補償が含まれていることがあります。
本章では、賃貸入居者が火災保険料を見直す際の具体的な方法を紹介します。
不動産会社の指定保険から自分で選ぶ保険に切り替える
不動産会社から案内された火災保険を見直すことで、保険料を抑えられる可能性があります。
賃貸契約時には、不動産会社から提携している火災保険を案内されるケースがあります。しかし、賃貸借契約で求められる補償条件を満たしていれば、必ずしも案内された保険に加入し続ける必要はありません。
自分で保険を選ぶ場合、必要な補償だけを組み合わせたり、家財の補償額を適切に設定したりすることで、保険料負担を軽減できる場合があります。
例えば、一人暮らしで所有する家財が少ない場合、家財補償額を高く設定しすぎていないか確認するとよいでしょう。
ただし、賃貸契約で借家人賠償責任補償の金額などが指定されている場合もあります。保険を変更する前に、契約条件を確認しましょう。
複数の保険会社を比較して最適なプランを選ぶ
複数の火災保険を比較することで、自分の生活に合った保険料と補償内容のバランスを選べます。
火災保険は、保険会社によって補償内容や保険料が異なります。そのため、更新時には現在加入している保険だけで判断せず、複数の商品を比較することが有効です。
比較する際は、保険料だけでなく、以下の点を確認しましょう。
必要な補償を確保しながら、現在の生活に合ったプランを選ぶことで、無駄な保険料を減らせる可能性があります。
水災補償の必要性をハザードマップで確認する
水災補償が必要か確認することで、補償内容を適切に見直せる可能性があります。
水災リスクは地域によって異なるため、すべての人に同じ補償が必要とは限りません。
自治体が公開しているハザードマップを確認することで、洪水や浸水リスクを把握できます。
ただし、河川の近くや浸水リスクが高い地域では、保険料だけを理由に水災補償を外すことはおすすめできません。
リスクを確認したうえで、必要な補償を残しながら見直すことが大切です。
個人賠償責任補償の重複をチェックする
個人賠償責任補償の重複を確認することで、不要な保険料を削減できる可能性があります。
個人賠償責任補償は、日常生活で他人に損害を与えた場合などに備える補償です。
例えば、自転車事故で相手にけがをさせた場合や、日常生活で他人の物を壊してしまった場合などが補償対象になることがあります。
この補償は、火災保険だけでなく、自動車保険や傷害保険などに特約として付帯できる場合があります。
複数加入していても、同じ事故について実際の損害額をこえて補償を受けることはできません。
更新前には、家族が加入している保険も含めて確認しましょう。
自分の生活と照らし合わせて適切な火災保険選びを
火災保険の保険料が値上げ傾向にあるなか、保険料の安さだけでなく、自分に必要な補償を備えることが大切です。
近年は、自然災害の増加や建築費の上昇などを背景に、火災保険の値上げが続いています。
しかし、保険料を抑えるために必要な補償まで外してしまうと、万が一の際に十分な補償を受けられない可能性があります。
賃貸住宅の場合は、以下の点を確認しましょう。
火災保険は、住んでいる地域や家族構成、所有している家財によって必要な補償が変わります。
契約更新時には、現在の生活に合った補償内容か確認し、保険料と補償のバランスを見直しましょう。
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執筆者プロフィール
松原 由佳子(まつばら ゆかこ)
FPサテライト所属
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、Googleアナリティクス認定資格、貿易実務検定C級
相続実務に携わり、相続・家計・保険・資産形成を幅広くサポート。相談者の状況に寄り添い、複雑なお金の問題をわかりやすく解説・監修している。
賃貸の火災保険(家財保険)に関するよくある質問
賃貸向けの火災保険の保険料は今後も値上がりする可能性がありますか?
賃貸向けの火災保険の保険料は、今後も値上げが行われる可能性があります。
自然災害の増加や建築資材・人件費の上昇などにより、保険金支払いに関わるコストが増加しているためです。
賃貸向けの火災保険は自分で選べますか?
賃貸契約で求められる補償条件を満たしていれば、自分で火災保険を選べる場合があります。
ただし、借家人賠償責任補償の金額などが指定されている場合もあるため、変更前に契約条件を確認しましょう。
賃貸向けの火災保険は2年間で、保険料はどれくらいかかりますか?
賃貸向けの火災保険は、2年契約の場合、1万円〜2万円程度の商品が多く見られます。
ただし、保険料は家財補償額や補償内容、所在地、特約の有無などによって変わります。
火災保険の更新時に確認するポイントは何ですか?
更新時には、保険料だけでなく補償内容も確認しましょう。
確認したいポイントは以下のとおりです。
- 家財補償額が現在の生活に合っているか
- 不要な特約が付いていないか
- 個人賠償責任補償が重複していないか
- 水災補償が必要な地域か
生活環境が変化している場合、以前と同じ補償内容が適しているとは限りません。更新は火災保険を見直す良い機会です。
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