近年、海外旅行保険の保険料は、海外での医療費の高騰や円安の進行、感染症リスクの増大などを背景に、上昇傾向にあります。海外旅行や海外出張を予定している人にとって、気になるのが海外旅行保険の保険料かもしれません。「保険に入りたいけど、できるだけ保険料の負担を抑えたい」「子どもだけ加入させたい」「70歳以上でも入れる保険はあるか」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、海外旅行保険の保険料が上がっている理由と、保険料の負担を抑えるための方法について解説します。
海外旅行保険の保険料推移
2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により海外旅行者は大幅に減少しました。以降、水際対策の強化、ワクチンの普及などにより海外旅行需要は回復したものの、この数年で海外旅行保険を取り巻く環境は大きく変化しています。
海外旅行保険をめぐる主な出来事と保険料への影響
出典:三菱UFJ銀行「外国為替相場チャート表」
※2026年8月時点の情報です。
海外の医療費や物価の上昇、円安の影響を受け、海外で病気やけがをした場合に保険会社が支払う保険金は増加しています。
受け取った保険料に対して支払った保険金などの占める割合を示す指標を「損害率」と言い、「損害率」は保険商品の保険料を決定する指標となります。
下の表は、日本損害保険協会が公表する「保険種目別損害率」のうち2018年度以降における傷害保険(期末)の損害率推移です。海外旅行保険単独の業界全体の推移を示す統計は公表されていませんが、海外旅行保険の補償内容は、ほとんどが傷害補償となるため参考になります。統計によると、2022年度以降の損害率の上昇傾向が見られます。
損害率*(傷害保険)の推移
| 年度 |
傷害保険(期末) |
| 2018年度 |
51.6 |
| 2019年度 |
52.2 |
| 2020年度 |
51.2 |
| 2021年度 |
50.3 |
| 2022年度 |
58.7 |
| 2023年度 |
53.7 |
| 2024年度 |
56.4 |
(単位:%)
出典:日本損害保険協会「保険種目別損害率」をもとに筆者作成
*損害率(%)=(正味支払保険金+損害調査費)÷正味収入保険料×100
支払保険金およびコストの増加を受けて、各保険会社は、適正な収支を維持するため保険料の値上げ改定に動いています。また、保険料に留まらず、補償内容、契約条件を見直す動きが進んでいるのが現状です。この動きは、今後も継続することが予測されます。
例えば損保ジャパンでは、2024年10月に海外旅行保険の保険料を改定し、その理由として、円安による海外の治療費の高騰や物価上昇などをあげています。また、2025年10月からは契約条件についても見直しが行われています。
なぜ海外旅行保険の保険料が値上がりしているのか
海外旅行保険のみならず、相互扶助の精神で成り立つ「保険」は、その性質上、さまざまな要因を総合的に判断して保険料が決定されます。保険料の改定には、増加する保険金支払いに対応しつつ、万一の際に必要な補償を継続して提供するためという側面もあります。
ここでは、保険料が値上がりしている主な要因をさらに詳しくみてみましょう。
海外医療費の高騰と円安の影響
大きな要因の一つが、海外の医療費の高騰です。日本と比べて医療費が非常に高額になる国もあり、海外旅行中の病気やけがによって、場合によっては数百万円といった医療費が発生することもあります。
さらに、円安が進むと現地通貨で発生した医療費を日本円に換算した場合の金額も大きくなります。
例えば、1万ドルの医療費が発生した場合、1ドル=100円であれば100万円ですが、1ドル=150円なら150万円です。
海外での医療費そのものが上昇し、さらに円安によって日本円での支払額も増えれば、保険会社が負担する保険金も増加します。
感染症リスク・自然災害の増大
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、海外旅行における感染症リスクを改めて意識させる出来事となりました。また、近年は大雨、洪水、山火事、地震などの自然災害によって、航空便の欠航や旅行日程の変更などが発生するケースもあります。
もちろん、これらすべてが直接的に保険料へ反映されるわけではありません。しかし、海外旅行中に発生する事故やトラブルへの対応コストが増えれば、保険商品の収支にも影響します。
政情不安や地政学的リスク
戦争やテロ、政情不安など海外旅行を取り巻くリスクも複雑化しています。
ただし、戦争や内乱などによる損害は、渡航先によっては保険金が支払われない場合もあるため、海外旅行保険ですべて補償されるわけではありません。とはいえ、近年はリスクが高まっているのが現状です。
海外旅行保険の保険料を抑えるための方法
保険料が上昇傾向だからという理由で「保険に加入しない」という選択はおすすめできません。海外では医療費が高額になるケースがあるため、万一に備えた補償は重要です。
そこで、必要な補償を確保しつつ、保険料を抑える方法を考えてみましょう。
クレジットカード付帯の海外旅行保険と組み合わせる
保有しているクレジットカードに海外旅行保険が付帯されているか、まずは確認してみましょう。付帯されているようであれば補償内容を確認します。
クレジットカード付帯保険には「自動付帯」と「利用付帯」があり、補償される条件もクレジットカードによって異なります。
カード付帯の補償だけでは不足すると思われる場合には、不足する補償を任意の海外旅行保険で補完すると、万一の備えになり保険料負担軽減という点でも有効です。
「カードに海外旅行保険が付いているから安心」と考えず、補償内容を確認、十分検討したうえで安心して海外旅行に出発したいですね。
補償内容を見直して必要な補償に絞る
海外旅行保険には、治療・救援費用、傷害死亡、疾病死亡、賠償責任、携行品損害、航空機遅延など、さまざまな補償があります。すべての補償を付帯して手厚く備えれば安心ですが、保険料負担は大きくなります。旅行先や旅行期間を踏まえて、リスク対策としての必要性について検討してみましょう。
なお、海外で高額になりやすい治療・救援費用は、安易に削らないことをおすすめします。
複数の保険会社を比較して最適なプランを選ぶ
海外旅行保険は、保険会社によって保険料だけでなく、補償内容や保険金額、年齢条件などが異なります。また近年は補償内容の改定が続いているため、同じ保険会社、同じ商品であっても「前回と同じ」ではないことも注意点です。
特に「子どもだけ加入させたい」「70歳以上でも加入できる保険を探している」という場合には、一社だけで判断せず、複数の保険会社の商品を比較してみましょう。
子どものみ加入するときに保険料を抑えるポイント
子どものみで海外旅行保険に加入するときに確認したいポイント
家族で海外旅行をする場合、「親はクレジットカード付帯保険があるので、子どもだけ海外旅行保険に加入させたい」というケースもあります。
この場合、まず子どもの分だけ加入できる商品があるか、家族プランと個人プランのどちらが安いのかを比較・検討することが大切です。
子どもだから補償は必要ないということではありません。むしろ、海外で体調を崩した場合には、保護者が付き添っての医療機関受診、場合によっては救援者費用が発生する可能性があります。そのため、保険料を抑える場合でも、治療・救援費用を優先して補償を確保することをおすすめします。
一方で、保有のクレジットカードで「家族プラン」が適用される場合もあります。その場合でも、補償内容を確認したうえで、重複している補償がないか、不足する補償はないか検討しましょう。重複を整理することで保険料が抑えられる場合もあります。
70歳以上の方が海外旅行保険の保険料を抑えるポイント
70歳以上が海外旅行保険に加入するときに確認したいポイント
70歳以上の方が海外旅行保険に加入する場合、注意したいのが年齢による加入条件や補償内容の違いです。保険会社によっては、一定年齢以上の場合に加入できる商品や補償内容に制限が設けられていることがあります。また、年齢が高くなるほど、病気やけがに関するリスクを踏まえて保険料が高く設定される商品もあります。
そこで、70歳以上の方は「安い保険を探す」というより、まず加入できる商品を複数比較し、その中から必要な補償を確保できる商品を選ぶことをおすすめします。特に確認したいのは、治療・救援費用、疾病に関する補償、既往症に関する取り扱いです。
また、クレジットカード付帯保険を利用できる場合には、その補償内容を確認したうえで不足分だけを任意保険で補う方法もあります。
海外旅行保険の保険料を比較・見直して、安心できる旅の備えを
海外旅行保険の保険料は、海外の医療費高騰や円安、世界的な物価上昇などを背景として、近年、保険料の改定や補償内容、契約条件の見直しが行われています。だからこそ、「保険料が高いから加入しない」と考えるのではなく、必要な補償を確保しながら、保険料を抑える方法を検討することが大切です。
クレジットカード付帯保険との組み合わせ、補償内容の見直し、複数の保険会社の比較など、工夫できるポイントはいくつかあります。
また、子どもだけ加入する場合や70歳以上の方が加入する場合には、年齢や契約条件によって選択肢が変わるため、保険料だけでなく補償内容もしっかり確認しましょう。
万一のときにも安心できる旅の備えをしておきたいですね。
出典:損保ジャパン「新・海外旅行保険【off!】の料金が改定されました(2024年10月1日~)」
出典:損保ジャパン「海外旅行保険の31日超の長期契約が(令和7年)2025年10月1日より一部廃止になります」
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監修者プロフィール
大竹 麻佐子(おおたけ まさこ)
ゆめプランニング代表
CFP(R)認定者、相続診断士、J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社・銀行・保険会社など金融機関での勤務を経て、2015年ゆめプランニング開業。
海外旅行保険に関するよくある質問
海外旅行保険の保険料はなぜ値上がりしているのですか?
海外の医療費や物価の上昇、円安の影響を受け、海外で病気やけがをした場合に保険会社が支払う保険金も増加しています。これは、保険会社側の収支を維持するだけでなく、万一の際に必要な補償を安定的に提供し続けるための見直しという側面もあります。
クレジットカード付帯の海外旅行保険だけでは不十分ですか?
必ずしも不十分とは限りません。クレジットカード付帯の海外旅行保険は、適用条件や保険期間、補償内容・保険金額を確認したうえで、旅行先や滞在日数などを踏まえて、必要に応じて一般の海外旅行保険を追加するなど、比較・検討しましょう。
子どものみで海外旅行保険に加入できますか?
加入できる商品はあります。子どもの年齢などによって加入条件が異なるため確認が必要ですが、子どもだけ加入する場合も、必要な補償を絞りこむことで保険料を抑えられる可能性があります。クレジットカード付帯保険などの補償も確認し、旅行先や滞在日数を踏まえて比較・検討しましょう。
70歳以上でも海外旅行保険に入れますか?
加入できる商品はあります。ただし、保険会社や商品によって年齢や旅行期間、補償内容などに制限があるため、まずは加入条件を確認しましょう。そのうえで、必要な補償を確保しながら複数の商品を比較し、保険料を抑えることも検討できます。
海外旅行保険の保険料を抑えるには何をすればよいですか?
まずはクレジットカード付帯保険など利用できる補償を確認しましょう。そのうえで、必要な補償に絞り、複数の保険会社を比較することで、保険料を抑えられる可能性があります。大切なのは、単に安い保険を選ぶのではなく、必要な補償を確保しながら無駄な補償を見直すことです。
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