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更新:(公開:2025年7月8日)

がん保険の入院給付金は必要?がん治療の動向と合わせて解説

執筆者

加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る

がん保険の入院給付金は必要?保障内容と合わせて解説

がん保険の多くには、がんで入院したときに受け取れる入院給付金を付加できます。

しかし、基本保障としてセットされているものもあれば、特約などでオプション付加するものもあるため、入院給付金が必要かどうか迷うことがあるかもしれません。

がん保険の入院給付金について解説します。

がん保険の入院給付金とは?

がん保険の入院給付金は、がん治療のために入院したときに給付金を受け取れる保障です。

入院日数に応じて給付を受けられる

がん保険の入院給付金は一部を除き、基本的にがん治療のために入院した日数に応じて給付されます。

入院1日につき5,000円や1万円などが、入院した日数分支払われます。

入院日数の制限がない

入院給付金のあるがん保険のほとんどは、給付金を受け取れる日数に制限がありません。

がんで入院した際には、日数無制限で入院給付金を受け取れます。

入院給付金のタイプは大きく2つ

入院給付金の保障があるがん保険には、おもに2つのタイプがあります。

基本保障のタイプ

がん保険の主契約または基本保障として、入院給付金がはじめからセットされているタイプです。

入院日額は5,000円や1万円などの選択肢から選べるのが一般的です。

オプションで追加するタイプ

診断給付金や治療給付金などほかの保障を基本とし、入院給付金は希望に応じてオプション(特約)付加するタイプです。

設定できる入院日額は5,000円や1万円のほか、日額2000円や日額3万円など、幅広い金額から自由に選択できるがん保険もあります。

入院給付金は必要?

では、がん保険を選ぶとき、入院給付金は必要なのでしょうか?

がんの種類や進行度などによっては長期入院が必要となるケースもありますが、多くのがん保険の入院給付金は日数無制限で保障されるため、こうした長期間の入院治療に備えたいと考える場合には入院給付金があると安心ではないでしょうか。

一方でがんの治療には多様な方法があり、必ずしも長期間の入院を要するとは限りません。

がんへの備えを検討する際には、がん治療の動向や選択肢について知っておくことも大切です。

がんの平均在院日数

がんの入院日数について確認してみましょう。

厚生労働省の「患者調査」によると、がんで入院した人の平均在院日数は短期化傾向にあります。

令和5年の調査では、平均約14日です。がんの種類や年齢による違いもあるようですが、平均としてはいずれも20日以内であることがわかります。

年齢階級別退院患者の平均在院日数

※はみ出ている場合、横にスクロールできます。

(単位:日)

傷病名 0~14歳 15~34歳 35~64歳 65歳以上
悪性新生物(全体) 19.0 14.0 10.7 15.5
 胃の悪性新生物 16.8 8.8 10.3 15.6
 結腸及び直腸の悪性新生物 12.0 9.9 11.5 16.6
 肝及び肝内胆管の悪性新生物 8.2 11.8 10.2 14.2
 気管,気管支及び肺の悪性新生物 7.5 11.1 10.6 14.9
 乳房の悪性新生物 2.3 6.5 7.2 12.1

出典:厚生労働省「令和5年患者調査」

がんの入院患者・外来患者数

次に、がん治療における、入院・通院の状況について確認してみましょう。

厚生労働省のデータを見ると、入院患者に比べ通院(外来)患者が多いことがわかります。

また、がんの患者数の年次推移をみると、がん(悪性新生物)による入院患者数は年々減少しており、通院(外来)患者数が増加傾向にあることもわかります。

がん(悪性新生物)の入院患者・外来患者数の推移
がん(悪性新生物)の入院患者・外来患者数の推移
がん(悪性新生物)の入院患者・外来患者数の推移

出典:厚生労働省「事業場における治療と仕事の 両立支援のためのガイドライン」厚生労働省「令和5年患者調査」より作成

がん保険の入院給付金は元来、差額ベッド代や家族のお見舞いなど、入院中特有のお金に備えるのに向いています。

がん保険の入院給付金は多くの場合、日数無制限で受け取れますので、特に長期入院への備えとしては活用しやすいと考えられます。

しかしながら、短期入院および通院治療が主流となりつつある現状では、がん保険の入院給付金だけでは、現在のがん治療でかかるお金には十分に対応できない可能性もあります。

したがって、がん保険を検討する際には一般的には入院給付金の必要性は以前に比べて低くなっているといえます。

むしろ、通院による治療費に備えて、入院以外で受け取れる保障も検討しておく必要があるでしょう。

他の保障と合わせて備えることも

入院以外で、がんに備えられる保障には、おもに次のようなものがあります。

診断給付金(一時金)

がんと診断されたときに、50万円や100万円といった一時金を受け取れるのが、がん保険の診断給付金(一時金)保障です。

商品により、保険期間中に1回のみ受け取れるものと、1年に1回、2年に1回などを限度に複数回受け取れるものがあります。

入院通院にかかわらずまとまった給付金を受け取れるので、治療費のほか生活費など様々な費用に活用できます。

治療給付金

抗がん剤治療、ホルモン剤治療、放射線治療など、所定のがん治療を受けたときに給付金を受け取れるのが、治療給付金の保障です。

必ずしも入院をしていなくても、所定の治療を受ければ給付の対象になります。

また、月に1回などの範囲内であれば期間無制限で受け取れるものも多いため、短期間で退院して通院治療に切り替え、通院が長期間にわたるようなケースでも活用できます。

実額補償のがん保険

一部のがん保険には、がんの治療にかかった費用を実費で補償するタイプもあります。

入院費用も含め、通院や診断書の発行、セカンドオピニオンにかかった費用なども対象になる保険もあります。

入院だけでなく、通院やがん治療に伴ってかかる費用に幅広く備えることができます。

がん治療の動向を見ながら保障を検討

がん保険の保障内容は、医療現場でのがん治療の動向に合わせて、随時改定されています。

近年はがんの治療が入院から通院中心に変わる傾向がみられていることを受けて、がん保険も入院給付金だけでなく、通院に対応した治療給付金などを選択できるものが増えています。

つまり、入院給付金は必ずしもがん保険を選ぶ際に優先的に検討すべき保障ではなく、通院治療への保障と合わせて検討するのが重要といえそうです。

こうした動向を踏まえながら、もしもがんにかかったときに、治療のどの段階でがん保険の保障を受けたいかを考えながら検討してみましょう。

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出典:厚生労働省「令和5年患者調査」

出典:厚生労働省「事業場における治療と仕事の 両立支援のためのガイドライン」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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