妊娠が判明すると、出産時のトラブルや入院費用への不安から、保険の加入を検討するケースは少なくありません。しかし、保険に加入する際は健康状態の申告(告知)が必要になるため「妊娠中だと加入できないのでは」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
実際は、妊娠中でも加入できる保険はあります。ただし、妊娠週数や健康状態によって加入できる保険の種類や保障の範囲が変わるため、しくみを正しく理解したうえで検討しましょう。
本記事では、妊娠中の保険加入に関する基本的な考え方や実際に加入できる保険の特徴を詳しく解説します。
妊娠してから保険に加入できる?
妊娠中でも加入できる保険はありますが、選択肢が限られるため、加入を考えている方は早めに検討を始めましょう。
妊娠週数によって入れる保険の種類が変わる
妊娠週数によって加入できる保険の種類は異なり、一般的な医療保険の場合、妊娠27週目(妊娠7ヶ月頃)までが加入の目安です。
一方、妊娠週数を問わず入れる保険も存在します。代表的なのが、少額短期保険会社が提供する妊婦向けの医療保険です。
少額短期保険とは、保険業法に基づき「少額短期保険業者」として登録された会社が提供する保険商品のことで、保険期間は1~2年程度、保険金額にも上限(傷害疾病保険の場合は80万円)が設けられています。
妊娠週数が過ぎるほど入れる保険は減っていく
妊娠週数が過ぎるほど、加入できる保険は減っていく点にも注意が必要です。妊娠が進むにつれて帝王切開や切迫早産などのトラブルが起きる確率が高まり、給付金(保険金)の支払いが発生する可能性も上がります。そのため、保険会社は加入条件に制限を設けているのです。
また、妊娠中の健康状態も審査に影響を与えます。妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病と診断されている場合は、妊娠週数に関わらず加入を断られるケースもあります。
妊娠中でも入れる保険の特徴
妊娠中でも入れる保険に共通する特徴を理解しておきましょう。
妊娠27週まで加入可能な妊婦保険の特徴
妊娠27週までに加入できる保険には、「条件付きで加入する一般的な医療保険」と「妊婦向けに設計された専用保険」の2種類があります。
一般的な医療保険に妊娠中に加入する場合は「特定部位不担保」と呼ばれる条件がつくことが多くなります。不担保の期間は保険会社によって異なりますが、おおむね1年~5年程度です。不担保期間中は、子宮・卵巣・卵管に関する入院や手術を受けても給付金は支払われません。つまり、保険加入時の妊娠・出産で帝王切開や切迫早産による入院が発生しても、保障対象外となる可能性が高いといえます。
不担保期間が終了すれば、次回の妊娠に伴うトラブルも保障対象に含まれるため、長期的な視点で保険を検討している方に適しているでしょう。
一方、妊婦向け専用保険の場合、保険加入時点の妊娠・出産に伴うトラブルも保障対象に含まれる商品があります。
求める保障範囲に合わせて、複数の商品を比較検討してみてください。
妊娠異常、異常分娩などにも対応できる
妊娠異常や異常分娩などにも対応できる点は、妊婦向け保険のメリットです。一般的に以下のようなケースで保障対象となります。
- 帝王切開(緊急・予定)
- 切迫早産による入院
- 切迫流産による入院
- 妊娠高血圧症候群
- 吸引分娩・鉗子分娩
- 前置胎盤・常位胎盤早期剥離
産科合併症の頻度は約54.8%とされており、妊娠中に何らかのトラブルが発生する確率は想像以上に高いといえます。
入院や手術が必要になっても、高額療養費制度を活用すれば自己負担を一定額に抑えられます。高額療養費制度は、ひと月にかかった医療費が一定額を超えた時に、超過分の払い戻しを受けられる制度です。
しかし、差額ベッド代や食事代、日用品費などは自己負担が必要になるため、治療が長期化すると経済的な負担が重くなる可能性もあります。民間の妊婦向け保険から給付金を受け取れれば、公的制度だけでは不足する部分もカバーできます。
なお、正常分娩(自然分娩)は病気やけがに該当しないため、公的医療保険・民間保険ともに保障の対象外です。妊婦向け保険に加入していても、正常分娩にかかる費用はカバーできない点は理解しておきましょう。
その他の病気やけがも保障される
妊娠中に一般的な医療保険へ加入した場合、妊娠・出産に関する保障には制限がつくものの、妊娠とは無関係なけがや病気による入院・手術は通常どおり保障の対象となります。
妊娠中は免疫力の変化やホルモンバランスの乱れにより、病気にかかる確率が高まるとされています。また、交通事故や転倒によるけがのリスクもゼロではありません。医療保険に加入しておけば、入院・手術が必要になった場合も給付金を受け取れるため、経済的な負担を軽減できるでしょう。
少額短期保険の中にも、異常分娩の保障に加えて一般的な病気やけがによる入院・手術をカバーする商品があります。さらに、生まれてくる赤ちゃんの病気やけがによる入院を保障する商品も存在するなど、母子双方のリスクに備えられる点は少額短期保険ならではの強みです。しかし、保険期間は1〜2年程度と短く、給付日額も少ない傾向にあるため、幅広いリスクに備えたい場合はまず一般的な医療保険を検討するのが良いでしょう。
妊娠中に保険へ加入する際の注意点
妊娠中に医療保険に加入する場合は、以下の点に注意してください。
医療保険に加入する際は、現在の健康状態や過去の病歴を保険会社に申告する「告知義務」があります。妊娠中であることはもちろん、そのほかに持病や既往症などがある場合は、ありのままを申告しなければなりません。告知内容に虚偽があった場合は「告知義務違反」として契約が解除され、給付金を受け取れなくなる可能性があります。
また、保険商品によっては、契約から一定の待機期間(免責期間)を経てから保障が始まるものがあります。例えば「初年度のみ契約日から60日間は保障対象外」とする商品の場合、加入直後に入院・手術が発生しても給付金は支払われません。出産予定日が近い方は、待機期間と出産予定日の兼ね合いを必ず確認しておきましょう。
妊娠前に保険加入を検討するのがおすすめ
保障内容や選択肢の広さを考えると、妊娠前に医療保険へ加入しておくのが理想的です。
妊娠前であれば特定部位不担保の条件がつかず、加入時点から子宮や卵巣に関する疾病も保障の対象となります。帝王切開や切迫早産で入院・手術が必要になった場合でも、初回の妊娠から給付金を受け取れるのです。
また、妊娠中に帝王切開や切迫早産などを経験すると、出産後に新たな医療保険へ加入する際にも影響が出ることがあります。多くの保険会社では過去5年以内の手術歴や入院歴を告知する必要があり、帝王切開の経験があると特定部位不担保の条件がついたり、場合によっては加入自体を断られたりするケースもあります。妊娠・出産のトラブルを一度経験してからでは、保険の選択肢が狭まってしまう点も理解しておきましょう。
妊娠週数や健康状態に合わせた保険選びを
妊娠中でも保険に加入する方法はありますが、妊娠週数や健康状態によって入れる保険の種類や保障範囲は変わります。一般的な医療保険は妊娠27週頃まで加入でき、特定部位不担保の条件がつくことが多いものの、将来の妊娠や幅広い病気・けがに備えられる点がメリットです。
一方、妊娠27週以降に加入を検討する場合や、保険加入時点の妊娠・出産トラブルに備えたい場合は妊婦向けの少額短期保険を検討すると良いでしょう。
自分の妊娠週数と求める保障内容を照らし合わせ、最適な保険を見つけてください。
出典:厚生労働省「妊産婦の診療の現状と課題」
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執筆者プロフィール
荒木 和音(あらき かずね)
金融分野専門ライター
ファイナンシャル・プランニング技能士2級
保険代理店にて個人・法人向けの営業およびリスクコンサルティングなどに計10年以上従事したのち、金融ライターとして独立。大手証券会社・保険会社・大手金融メディアでの記事執筆・監修などを手がける。
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