更新:公開:2021年8月25日

新型コロナの影響で失業したら、失業保険はもらえる?手当のしくみと特例を専門家が解説

執筆者:
菅田 芳恵|ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級FP技能士、特定社会保険労務士

監修者:
加藤 梨里|ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、健康経営エキスパートアドバイザー

新型コロナの影響で失業したら、失業保険はもらえる?手当のしくみと特例を専門家が解説

新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)の影響で会社の業績が悪化したり、働き続けることが困難になって失業してしまった場合、失業保険(雇用保険)の基本手当(いわゆる「失業手当」)はいつから、いくらくらいもらえるのでしょうか?

雇用保険の基本的な仕組みとともに、新型コロナによる特例について、専門家が解説します。

失業したらもらえる、失業保険の手当とは?

失業保険とは、働く意思と能力のある人が失業したとき、次の仕事を見つけるまでの生活費や職業に関する教育訓練などの支援を行う公的制度です。その中でも私たちが求職活動をしながら、安心して生活を送るために最も重要なものが、失業後に支給される「求職者給付」と呼ばれる「基本手当」です。

基本手当の仕組み

基本手当とは、失業中に求職活動をしている人に対して給付される手当です。自己都合退職か会社都合退職か、また年齢や雇用保険の加入期間等によって、給付額や給付日数が異なります。

基本手当をもらうためには、大きく2つの要件があります。1つ目は、離職の日以前2年間に通算12ヶ月以上、雇用保険の加入期間があることです(転職歴があって、加入期間に空白があっても、所定の要件を満たせば加入期間を通算できます)。2つ目は、働く意思があって求職活動をすることです。もう働きたくないという方は、対象外となります。

基本手当の額は、離職直前6ヶ月に支払われた賃金をもとに、その1日あたりの「賃金日額」と退職時の年齢によって決まる給付率をかけて計算します。これを「基本手当日額」といって、下表のように年齢によって上限※1が定められています。

基本手当日額の上限額(2021年8月以降認定日分)
年齢基本手当日額の
上限額
30歳未満6,760円
30歳以上
45歳未満
7,510円
45歳以上
60歳未満
8,265円
60歳以上
65歳未満
7,096円

出典:厚生労働省「令和3年2月1日からの基本手当日額等の適用について」

この「基本手当日額」が、退職の理由やそのときの年齢によって決まる「給付日数」の日数分、支給されます。給付日数は、自己都合による退職の場合は勤続年数に応じて90日~150日の範囲で決まります※2

自己都合退職の場合の給付日数
 雇用保険に加入していた期間
1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
日数90日120日150日

出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」

退職した理由が会社都合の場合は、給付日数が自己都合退職と比べて長くなります。会社が倒産したり、解雇されたりした「特定受給資格者」の場合と、有期契約で雇用されていて、更新を希望したにもかかわらず更新されなかったことなどにより離職した「特定理由離職者」にあたる場合です。この場合の給付日数は、年齢や勤続年数によって90日~330日の範囲です※2

会社都合退職の場合の給付日数(特定受給資格者・一部の特定理由離職者)
区分/被保険者であった期間1年未満1年以上

5年未満
5年以上

10年未満
10年以上

20年未満
20年以上
30歳未満90日90日120日180日
30歳以上45歳未満120日
(90日)
180日210日240日
35歳以上45歳未満150日
(90日)
240日270日
45歳以上60歳未満180日240日270日330日
60歳以上65歳未満150日180日210日240日

※受給資格に係る離職日が2017年3月31日以前の場合の日数

出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」

新型コロナによる特例(会社都合での失業)

2021年9月現在、新型コロナの労働環境への影響を鑑みて、新型コロナが離職の理由に関わる場合には、失業保険の給付が通常と比べて優遇されることがあります。

失業手当の給付日数が最大60日延長

新型コロナの影響で会社が倒産した、解雇された、有期契約労働者で契約更新してもらえなかったなどの場合は、給付日数が最大60日延長されます※3。おもに、以下の理由で退職して「特定受給資格者」「特定理由離職者」にあたる場合です。

  1. 新型コロナの影響を受けて、会社が倒産して離職した
  2. 新型コロナの影響を受けて、仕事がなくなったなどの理由で解雇された
  3. 契約社員など有期契約労働者だったが、新型コロナの影響を受けて雇い止めされた

1と2の場合は「特定受給資格者」に該当し、3の場合は、「特定理由離職者」に該当します。どちらのケースも、もともと新型コロナ以外で離職をした場合でも、失業保険の給付日数は自己都合退職よりも長いですが、退職の理由に新型コロナが影響する場合には、さらに60日長くなります。たとえば、雇用保険の加入期間が10年以上20年未満、35歳以上45歳未満の人なら、本来の給付日数が240日のところ、最大300日になるのです。

特例による給付日数の延長は、地域の緊急事態宣言の発令状況や離職理由などによって異なります。必ずお近くのハローワークでご確認ください。

雇止めによる失業は要注意

注意したいのは、3.有期契約労働者の雇い止めです。

有期契約労働者の場合、有期契約期間満了の前には、ほとんどの会社で更新についての話し合いがあります。「更新してほしい」と会社に伝えたにもかかわらず、更新されなかった場合を「雇い止め」といいます。有期契約において更新ができる場合は、必ず更新の条件を明記しなければいけませんので、その条件を満たしているにもかかわらず、更新されないのは会社の責任が問われるからです。

一方で、契約の途中で「新型コロナで仕事がないから会社を辞めよう」と思った場合は、まだ契約期間の途中ですので、退職願を提出して自己都合退職となります。また、有期契約満了を機に自ら会社を辞める場合も自己都合退職となります。

新型コロナの影響を受けて有期契約が更新されなかった場合、給付期間延長の雇い止めに該当するためには、「更新を希望したにもかかわらず、更新されない」ことが必要になると覚えておきましょう。

新型コロナによる特例(自己都合での失業)

自己都合退職の場合は原則として対象外※3となります。例えば、新型コロナの影響で残業がなくなり、残業分の給料が減り、生活に困って転職する場合等です。確かに根本の原因は新型コロナかもしれませんが、解雇されたわけではないため、自己都合退職となり、給付日数の延長はされません。

失業の状況により、失業手当の給付日数が拡大

ただし、自己都合退職でも、新型コロナに伴う特別な事情がある場合には、給付日数が拡大することがあります。家族が新型コロナに感染して看病をしなければならなくなった、妊娠中で感染防止のためにやむを得ず自己判断で退職したなどの場合です。

通常、自己都合で会社を退職した場合、基本手当の受給はハローワークに求職の申込をした後7日間の待機期間と、さらに3ヶ月(2020年10月以降の退職は2ヵ月)の給付制限の期間が過ぎてから始まります。結果、受け取れるのは約4ヶ月後です。

ただし、新型コロナに関連する次の要件に該当し、2020年2月25日以降に退職した方は、自己都合退職でも、「特定理由離職者」として給付制限がなく受給できることがあります※4

自己都合退職で、給付制限がなくなる要件
  1. 同居の家族が新型コロナウイルス感染症に感染したことなどにより、看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合
  2. 本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合
  3. 新型コロナウイルス感染症の影響で子(小学校、義務教育学校、特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合

※出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に伴う雇用保険求職者給付の特例のお知らせ

これらのケースに該当した場合は、離職票とともにハローワークのホームページからダウンロードした申立書とそれぞれの理由に対する確認資料を提出しましょう。給付制限が適用されなくなり、速やかに手当を受け取れるようになります。

ただし、「特定理由離職者」であっても雇い止めではないので、給付日数の延長はありません。また、離職前1年間の雇用保険の被保険者期間が6カ月以上という要件もあります。

なお新型コロナと関係はありませんが、2020年10月1日以降に自己都合で退職した場合には、5年間のうち2回までは給付制限が3ヶ月から2ヶ月に短縮されることになりました。この制度変更は、国が安心して転職の活動を行うことができるよう環境を整えることを主眼としていて、2年後を目途に検証して更なる対応をすることになっています。

新型コロナの特例措置を確認しよう

新型コロナのために失業した場合には、給付日数の最大60日間の延長や、受給制限の非適用による受給開始までの短縮など、仕事を失った人の生活を支えるための措置が講じられています。失業保険で基本手当を受給している間は、生活を支えることができます。

自己都合退職の場合は、理由が感染防止等によるケースを除き受給できる期間が短く、給付制限がかかることには注意が必要です。さまざまな事情により仕事を辞めるケースが考えられますが、退職の理由によって失業保険に影響を及ぼす可能性があることは知っておくといいのではないでしょうか。

※1 出典:厚生労働省「令和3年2月1日からの基本手当日額等の適用について」
※2 出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
※3 出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応した給付日数の延長に関する特例について」
※4 出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に伴う雇用保険求職者給付の特例のお知らせ」

※この記事は一般的な情報を解説しています。失業保険に関する個別具体的な内容については、最寄りのハローワーク等にお問い合わせください。
※この記事は2021年9月時点の情報をもとに執筆しています。情報更新に伴い、記事を更新することはありますが、必ずしも最新情報ではないことがあります。

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 菅田 芳恵

    菅田 芳恵(すがた よしえ)

    グッドライフ設計塾
    CFP(R)認定者、1級FP技能士、特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー
    大学卒業後、証券会社・銀行・生保・コンサルティング会社を経て独立開業。49歳から2年間で社労士等7つの資格を取得し、現在13の資格に裏打ちされた知識を活かしてセミナー講師、人事労務コンサルティング、資産運用&労働トラブル相談対応、個別カウンセリング、コラム執筆等多方面で活動中。
  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。

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カテゴリー:労働者保険を学ぶ
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