日本は世界有数の長寿国です。戦後に平均寿命が50歳を越えてから、高出産・高死亡から低出産・低死亡型へと変化した結果、平均寿命は平成28年時点で男性80.98歳、女性87.14歳※1と、男女ともに高い水準を維持しています。

平均寿命の推移と将来推計
平均寿命の推移と将来推計のグラフ

平均寿命の推移と将来推計のグラフ

出典:内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版) 高齢化の状況(第1節1))」

しかも、今後も平均寿命は延び続けると予測されています。約30年後である2050年には、女性の平均寿命は90歳を突破すると予測されているのです。

「人生100年時代」とよく言われますが、私たちが老後を迎えるころには100歳まで生きるのも珍しくない時代がくるわけです。

長寿によって深刻になる「長生きリスク」とは?

長生きになること自体は、悪いことではありません。しかし、いまの社会制度下では弊害もあります。そのひとつがお金の問題です。

すでに公的年金だけでは老後の生活はまかなえない時代になっているのです。足りないお金は退職金や貯蓄で補う必要がありますから、長生きすればするほど、自分でより多くのお金を用意しなければなりません。これを「長生きリスク」といいます。

老後、公的年金で生活できる?

では、公的年金はいくら受け取れるのでしょうか? 平成31年度現在、国民年金に加入している人が受け取る老齢基礎年金は満額で78万100円です※2。例えば、夫婦で自営業で、国民年金保険料を40年間納めた方は、年間で約156万円受け取ることになります。月額にすると夫婦で約13万円です。

お勤めの方で厚生年金保険にも加入していると、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れます。厚生年金から受け取る年金額は、現役時に給料に応じて支払った保険料をもとに決まります。

40年間勤務した会社員と専業主婦の夫婦で、標準的な年収だった場合、受け取る年金額は夫婦で年間約265万円、月額約22万円になります※3

年金だけでは老後の生活には足りない

では、公的年金があれば老後の生活に十分でしょうか?総務省の家計調査※4によると、夫65歳以上、妻60歳以上の高齢無職世帯の生活費は約23.5万円です。

上記の公的年金の受取額と比べると、国民年金だけに加入していた自営業の年金の月額約13万円を大幅に上回っています。また、厚生年金に加入していた会社員と専業主婦の夫婦が受け取る年金の月額約22万円をも上回っています。

しかも公的年金は、支給された額をそのまま受け取れるわけではありません。介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税などが天引きされるのです。つまり、これらが天引きされた後の手取りの年金額を考慮すると、公的年金だけで家計をやりくりしようとすると毎月大きな赤字になるはずです。

老後の家計の平均は?

総務省「家計調査」※4によると、年金を含めた手取り月収は平均で約18万円(ここでは国民年金に加入している人と厚生年金に加入している人を区別せずに計算されています)。

これに対して支出は約23万5千円と、毎月5万5千円の赤字になっています。年間にすると約66万円、10年間で約670万円ですが、これが仮に夫が90歳まで続くとすると25年間で約1650万円になります。

ですから、平均寿命まで生きるとしても少なくとも1000万円以上は自助努力でお金を用意しておく必要があるわけです。

高齢夫婦無職世帯の家計収支(2017年)
高齢夫婦無職世帯の家計収支のグラフ

出典:総務省「家計調査(2017)」より作成

さらに、もし60歳で定年退職をして無職になれば、年金を受け取り始める65歳までの5年間は、生活費のすべてを退職金や貯蓄から充てることになります。ですから、定年退職までに用意しておくべきお金はさらに多くなります。

老後の生活に必要なお金については、下記もご参考にしてください。
関連記事:豊かな老後の生活費にはいくら必要?

制度見直しで、年金受け取りが高齢化することも

年金制度は今後見直されていく可能性があります。2019年現在、公的年金は65歳から受け取れますが、かつてはより若い年齢から支給が開始されていました。年金の支給開始年齢が引き上げられているのは、少子高齢化で給付の財源が減っているためです。

公的年金の支給開始年齢の変遷
高齢夫婦無職世帯の家計収支の図

高齢夫婦無職世帯の家計収支の図

出典:厚生労働省「社会保障審議会 支給開始年齢について」

なぜ、公的年金の財源が減っているのでしょうか? 公的年金は「賦課(ふか)方式」といって、今現在の現役世代の支払う年金保険料を原資として、現在の受給(高齢)世代へ給付されています。財源の一部を除き、基本的には、自分が納めた年金保険料は将来の自分の年金のために運用されているわけではありません。

ですから、現役世代の人口よりも年金を受け取る高齢人口が多くなると、年金を納める人口が少ないので、財源が不足するのです。

少子高齢化が進むとこの傾向がさらに進行します。このため、今後は年金の受給が65歳からより高齢に引き上げられることも議論されています。

年金のほかに老後の資金を自分で確保しておくことは、これからますます重要になってきます。

保険で長生きリスクに備える方法

長い老後を見据え、生活に困らず充実した日々を過ごすためには、早いうちから計画的に少しずつ準備を始めることが大切です。

その方法には、貯蓄や運用があります。そして、保険を使って貯蓄や運用をして老後の資金を準備する方法もあります。ここでは、保険のうち老後資金の準備に向いているものをご紹介します。

個人年金保険

個人年金保険は、55歳、60歳、65歳など契約時に定めた年齢まで保険料を支払ってその一部を積み立てる商品です。積み立てたお金は保険会社が運用し、その結果を年金受け取り開始年齢から受け取ります。

万が一、年金受け取り開始年齢よりも前に亡くなった場合には、それまでに積み立てた保険料をもとに、死亡給付金が支払われます。

個人年金保険には以下のように複数の種類があります。

積立利率が固定されているタイプと変動するタイプ

支払った保険料を積み立てている期間中、保険会社は将来の年金受け取りに備えて資金を運用しています。その運用の利率があらかじめ固定されているタイプと、変動するタイプ「利率変動型」があります。

年金額が定額のタイプと変額のタイプ

将来に受け取る年金額があらかじめ決まっている定額のタイプと、受け取るまでの間の運用成果に応じて変わる変額のタイプがあります。

受け取り方

現在販売されている個人年金保険の受け取り方には、おもに3種類あります。

1.確定年金 契約時に定めた年数は、必ず年金を受け取れるタイプです。受取期間中は、仮に途中で死亡してしまっても年金を受け取れることが「確定」しています。
2.終身年金
2.終身年金 年金を受け取り始めてから、生きている限り、つまり「終身」にわたって受け取れるタイプです。多くの商品では、「保障期間付き終身年金」といって、受取開始から短期間で死亡してしまっても、保障期間分は受取人の相続人が年金を受け取れる機能がついています。
3.有期年金 契約時に定めた年金の受取期間中で、かつ保険の対象になる被保険者が生きている間のみ年金を受け取れるタイプです。途中で死亡すると、その時点で受け取りは終了します。

日本円のタイプと外貨のタイプ

日本円で払込み、将来に受け取る年金も日本円で受け取るタイプと、日本円で払い込むものの、それを米ドルやユーロなど外貨に替えて積立てるタイプがあります。将来に受け取る年金も、外貨で受け取るタイプ、日本円に戻して受け取るタイプ、いずれかを選べるタイプに分かれます。

個人年金保険について詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事:個人年金保険の選び方

終身保険でも老後の備えはできる

保険の中では、終身保険も老後の資金を準備する方法として使えます。終身保険は死亡したら保険金がおりるものですが、「終身」という名がついているように「いつ死亡しても保険金を受け取れる」しくみになっています。そのため、契約している期間中はいつでも必ず保険金を受け取れるように保険会社が原資を積み立てています。

このしくみを活用して、死亡する前に保険を解約することで、解約返戻金を受け取ることもできます。いわゆる掛け捨ての定期保険などは解約しても解約返戻金はゼロか、あってもごくわずかです。これに対して終身保険は、契約からある程度の期間を経ていれば、まとまった解約返戻金を受け取れることがあります。これを、老後の資金に充てることができるのです。

終身保険で貯蓄するなら解約返礼率に注目を

終身保険で老後資金を準備するなら、「解約返戻率」に注目しましょう。支払った保険料に対して戻ってくる解約返戻金の額の割合です。これが100%だと、ちょうど「支払った保険料の総額=解約返戻金額」になります。

一般的には契約から年数が経つほど解約返戻率は高くなり、100%を超えれば、払った以上の解約返戻金を受け取れることになります。100%を超えるタイミングを60歳や65歳になる年に合わせて設計すれば、老後の資金として積み立てることもできます。

終身保険と個人年金保険は何が違う?

個人年金保険との違いは、受け取るタイミングを契約した後に自由に決められることです。個人年金保険は契約した時点で「60歳から受け取る」などと設定しますが、終身保険は「終身」にわたって受け取る権利が続くしくみのため、自分で解約しない限りは受け取りません。受け取らないままにしておけば、いずれ亡くなったときに死亡保険金がおりることになります。

終身保険にも、日本円のものや外貨建てのもの、保険金が定額のものと変額のものなど、複数の種類があります。

現在の貯蓄や準備できる金額に合わせて老後資金計画を

もちろん保険のほかにも、老後資金を準備する方法はあります。投資信託を使った資産運用では、つみたてNISAという税の優遇制度を利用することもできます。

確定拠出年金は、お勤め先を通して退職金の上乗せとして積み立てる「企業型」と、ご自身で銀行や証券会社などで口座開設をして積み立てる「個人型」があります。口座開設をする金融機関によっては積立型の保険を取り扱っているところもあります。

すでに手持ちの貯蓄や、将来に見込める退職金の金額、描くライフスタイルなどに合わせて、老後の資金を準備する方法を検討するとよいですね。

※1 出典:厚生労働省「平成28年簡易生命表の概況」(平成29年)
※2 出典:日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
※3 出典:厚生労働省「平成31年度の年金額改定について」
※4 出典:総務省「家計調査(2017年)」

  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。