日本に住んでいると、体調が悪くなった時に医療機関で診察や治療を受けたとき、加入している健康保険の保険証を窓口で提示すれば一定の自己負担で必要な医療を受けることができます。

しかし海外では日本とは公的な医療保険制度のしくみが大きく異なります。外国の医療保険制度はどのようになっているのでしょうか。

医療保険制度、国ごとの違い

世界を見てみると、各国により公的な医療保険制度のしくみは異なります。おもに次の3つのタイプにわけられます。

1.社会保険に加入する国(社会保険方式)

加入する国民が社会保険料を納めて国が運営する公的な保障制度を「社会保険」といいます。日本の公的医療制度も社会保険の形をとっています。

社会保険に加入すると、病院の外来で診察を受けたとき、入院したとき、歯科治療を受けたとき、薬を処方してもらったときなどにかかる医療費の負担が一部またはすべて軽減されます。

日本では会社員や公務員は勤務先を通して加入し(これを「職域保険」と呼びます)、自営業や高齢者の人は住んでいる自治体で加入(これを「地域保険」と呼びます)します。

公的な社会保険の対象になる(保険がきく)治療を受けたときには自己負担は原則として3割で、75歳以上の人は1割、小学校に就学する前までは2割など、年齢による違いがあります。また、「高額療養費制度」によって年齢や所得に応じた自己負担額の上限があったり、住んでいる地域によっては子どもの医療費を補助する制度があったりします。

日本と同じような社会保険制度を整備している国には、ドイツフランスなどがあります。加入していると外来や入院などでかかる医療費の負担が軽減される点は共通していますが、自己負担の割合など細かな点が異なります。

たとえばドイツでは、外来でかかる医療費では自己負担はなく、入院したときには1日あたりの自己負担は10ユーロと定められています。フランスでは外来は3割、入院は2割などとされています。また、病院の窓口ではまず医療費の全額を支払い、後で自己負担分を超えた金額を払い戻してもらう仕組みにもなっているようです。

2.税金による国営の保健サービに加入する国(税方式)

税金を財源に、国民に広く医療サービスを提供する国もあります。たとえばイギリスは国民保健サービス(National Health Service,NHS)をすべての居住者に提供しており、医療費の自己負担は原則としてありません。

また、イギリスでは病気やケガの治療だけでなく、病気の予防やリハビリ、健康指導なども保健サービスの対象とされているようです。

3.民間保険に加入する国

広く国民を対象にした公的な保障制度が薄く、国民が自分で任意に民間保険に加入することで病気やケガに備える国もあります。

たとえばアメリカには、65歳以上の高齢者と障がいのある人を対象としたメディケア(Medicare: Medical+Care)や、低所得者向けのメディケイド(Medicaid: Medical+Aid)という国の制度はありますが、いわゆる現役世代の人は対象外です。したがって病院でかかる医療費は原則として全額が自己負担です。

このため現役世代の多くは自分で民間の医療保険に契約しています。2014年以降は、医療制度改革法が成立したことで国民には何らかの医療保険に加入することが義務付けられています。会社員の人は企業の福利厚生によって、勤務先を通して民間の医療保険に団体加入し、保険料の一部を事業主が負担しているところも多いようです。

民間の医療保険での備えは必要?

このように、病気やケガをしたときの備えのしくみは国によって異なります。なかでも日本は、国民にかかる医療費の負担のうち、公的な保障によってカバーされる割合が大きく、他国と比べて国による保障が充実しているようです。

医療費の負担割合の国際比較
医療費の負担割合の国際比較

出典:内閣府「年次経済財政報告 平成26年度」

医療費の負担割合を示すグラフをみると、民間保険が占める割合はごく一部です。ですから、私たちが病気やケガをしたときにも、かかる医療費の大部分を公的な保障でカバーできるといえるでしょう。

日本人の医療費の負担は増加傾向にある

一方で、高齢化にともなって日本の国民医療費は増加傾向にあります。長生きすることで高齢期に病気と付き合いながら暮らす期間が長くなると、生涯でかかる医療費が増すためです。その保障として、民間の医療保険の存在感も大きくなってきているようです。

日本における医療支出の推移
日本における医療支出の推移

出典:内閣府「年次経済財政報告 平成26年度」

内閣府のまとめ※1によると、約4割の人は国の公的医療保険制度が充実していると感じているものの、治療や入院に備えて新たに経済的準備を考えている人は7割近くにのぼります。また、その割合は近年上昇傾向にもあります。

特に高齢になってからの病気やケガのことを考えると、公的な保障の上乗せとして民間の医療保険があると支えになりそうです。

医療保険に対する国民の意識
医療保険に対する国民の意識

出典:内閣府「年次経済財政報告 平成26年度」

病気やケガの備えには、医療費以外の支出も考慮して

また、実際に病気やケガをしたとき、かかる費用は医療費だけとは限りません。たとえば入院するときに個室に入ると差額ベッド代がかかりますし、入院中には食事代もかかります。公的な保険がきく治療なら自己負担は抑えられますが、保険がきかない先進医療や自由診療を受けると医療費の全額が自己負担になります。家族がお見舞いに来るときや、退院した後に通院するには交通費がかかることもあるでしょう。

治療のために自宅を不在にして家事や育児をできないとき、他の人に代行してもらうとその費用がかかることもありますし、仕事を休んで収入が下がれば、生活費のやりくりがきつくなるおそれもあります。

もしも病気やケガをしたときには、公的な保障制度からの給付を基本に考えながら、その対象外になる出費にどのように備えるかを考えておくことも大切ですね。

※1 出典:内閣府「年次経済財政報告 平成26年度」
参考:厚生労働省「2018年 海外情勢報告」

  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。