新型コロナウイルスに海外旅行保険は使える?旅行をキャンセルしたらどうなる?

中国湖北省の武漢市を発端に拡大した新型コロナウイルスは、2020年3月現在、世界中で感染が広がっています。
いま海外旅行中の人や、これから旅行を予定している人は、もし旅行中に新型コロナウイルスにかかったらどうなる?旅行をキャンセルした方がよい?と不安を感じている人がいるのではないでしょうか。

外務省によると、実際にエジプトやフランスなどでは、日本からの海外旅行者が旅行中に感染したケースも報告されています※1
そこで、新型コロナウイルスにかかわるリスクに対して、海外旅行保険で対応できることをみてみましょう。

※【3/19更新】この記事は2020年3月19日時点での情報をもとに制作しています。

旅行中に新型コロナウイルスにかかったとき

海外旅行中にもし新型コロナウイルスにかかったら、民間の海外旅行保険はおりるのでしょうか?
一般的な海外旅行保険には、旅行中に病気で現地の病院に行ったときの治療費や、日本から家族が駆けつけたときにかかる渡航費や宿泊費などがおりる補償がついています。

ただし、感染症が原因の場合には保険金を受け取るには所定の要件があります。新型コロナウイルスに関する取り扱いを公表している保険会社は、新型コロナウイルスに感染した場合の保険金についておもに以下の取り扱いとするようです。

新型コロナウイルスの治療をおこなった場合

海外旅行中に病気で現地の病院にいったときに、かかった治療費が保険でおりるのが、海外旅行保険に含まれる「疾病費用」という補償です。この保険金を受け取れる要件は、複数の保険会社で「責任期間中に感染・発病して、責任期間終了後72時間以内に治療を開始した場合」などとされています。

「責任期間」とは、海外旅行のために自宅を出発してから帰宅するまで、保険に契約して補償が有効になっている期間のことです。
つまり、旅行中に新型コロナウイルスに感染または発病して、帰宅後からおよそ3日以内に病院に行って治療を開始した場合には、保険がおりることになります。もし潜伏期間などで、帰宅後すぐには感染していることに気がつかなかった場合でも、帰宅から72時間以内に発病し、治療を受けたら国内であっても保険の対象になります。

新型コロナウイルスにより死亡した場合

決してあってほしいことではありませんが、万が一海外旅行中に新型コロナウイルスにかかり亡くなった時にも、多くの海外旅行保険では保険がおります。「疾病死亡」という補償がついている場合で、新型コロナウイルスが原因のときには、旅行中(責任期間中。以下同様)に死亡したとき、または旅行中に感染や発病をして、帰国後72時間以内に治療を開始し、かつ帰国後30日以内に死亡したときが該当するようです。

家族が現地に駆けつけた場合

現地で入院した、病気などのために自力で帰国できないなどの際に、日本から家族が迎えに行く、一緒に帰国するなどのためにかかった費用がおりるのが、海外旅行保険の「救援者費用」です。

救援者費用は多くの海外旅行保険に基本的にセットされています。一部の保険会社では新型コロナウイルスにかかった場合に補償する旨を公表しています。申し込みの際に各保険会社へ確認してみるとよいでしょう。

新型コロナウイルスで旅行をキャンセルしたとき

一部の海外旅行保険には、やむを得ない理由で旅行をキャンセルしたり、途中で旅を中断して帰国したりしたときに、キャンセル料や変更手数料が保険でおりるオプションをつけられるものがあります。

「旅行変更費用」「旅行キャンセル費用」などと呼ばれ、おもに保険の対象になる人や同行者、親族が亡くなった、危篤になったときや、国の出入国規制や感染症による隔離命令によって、旅行に出発できない、旅行中にすぐに帰国しなければならなくなったときに、保険がおります。

今回の新型コロナウイルス(肺炎)についても、対応を公表している保険会社では、おもに次のような対応とするようです。

自分が新型コロナウイルスにかかった場合

旅行に行く本人や同行者が感染、発病して入院したり、隔離されることになったりして旅行をキャンセルしたときや中断したときには、キャンセル料や変更手数料が保険からおりるようです。

親族が新型コロナウイルスにかかった場合

旅行に行く本人の親族や同行者の親族が、新型コロナウイルスに感染して所定の期間入院した場合や、危篤になったとき、死亡したことが理由で、予定通りに旅行に行けずに変更したときには、一部の保険会社では変更手数料が「旅行変更費用」の対象になるとしています。

渡航中止勧告が出た場合

2020年3月19日現在、外務省からは、全世界に対してレベル1(十分注意してください)という「感染症危険情報」が出ています※1。また、中国全土に対してはレベル2(不要不急の渡航は止めてください)、中国湖北省全域と中国浙江省温州市についてはレベル3(渡航は止めてください。(渡航中止勧告))という、さらに高いリスクを示す「感染症危険情報」が出ています※1

渡航中止勧告が出る前に海外旅行保険に契約していて、レベル3の渡航中止勧告またはレベル4の退避勧告により旅行をキャンセル、変更した場合には、キャンセル料や変更手数料がおりる保険会社が多いようです。

航空機が欠航・運休した場合

海外旅行保険には、航空機が欠航・運休・遅延などによって出発できなかったときに、やむを得ずかかった旅行のキャンセル料などが保険でおりる補償がついているものがあります。「航空機遅延費用」というもので、出発予定時刻から6時間以内に、代替便に乗れなかった場合に保険がおります。

このように、新型コロナウイルスの影響によるやむを得ない理由で海外旅行をキャンセル・変更する際には保険がおりることがあります。ただし、新型コロナウイルスに感染したことが直接の理由ではないときや、自己都合でキャンセルしたようなときには、対象にならないことがあります。

キャンセル専用の保険も

海外旅行保険とは別に、やむを得ない理由で旅行をキャンセルしたときに備えられる保険があります。

「旅行キャンセル保険」というもので、病気やけが、家族の死亡や入院・通院のほか、旅行当日の交通機関の遅延や運休などで旅行に出発できなくなったときに、ツアーや航空券のキャンセル料が保険でおりるものです。

今回の新型コロナウイルスの流行でも、中国、香港、マカオなどを目的地とした多くのパッケージツアーが中止になったり、中国系の航空会社が運航する航空便や中国方面への航空便での運休・欠航が相次いでいます。

旅行会社側によるツアーの中止や航空会社判断による運休・欠航については、キャンセル料がかからずに代金が払い戻される措置も取られていますが、予約日や出発予定日の要件もあります。旅行会社や航空会社の要件にあてはまらないキャンセルが心配なときに、旅行キャンセル保険を活用できるかもしれません。

ただし旅行キャンセル保険には、申し込みできる旅行にタイプや申し込みのタイミングなど要件があるので注意が必要です。

海外旅行は最新の情報に留意して、安全の確保を優先に

今回の新型コロナウイルスに関するリスクに対して、海外旅行保険でできる対応はさまざまありそうです。流行の状況などにより、今後も保険会社などから新たな措置が発表されることがあります。

海外旅行中の人やこれから旅行を予定している人は、最新の情報を確認して、ご自身や一緒に旅をする人の安全を確保したいですね。

※この記事は3月19日現在の情報をもとに制作しています。最新の情報や個別具体的な取り扱いについて詳しくは、各保険会社にご確認ください。

※【3/19更新】情報更新に伴い、本文を一部改編・追記しました。

※1 出典:外務省「海外安全ホームページ」

参考:エイチ・エス損保「新型コロナウイルスに関する海外旅行保険の取扱いについて」
参考:損保ジャパン日本興亜「新型コロナウイルスに関する海外旅行保険等の取扱いについて」
参考:ソニー損保「【海外旅行保険】新型コロナウイルスに関する取扱いについて」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。