海外旅行に持って行くとなにかと便利なクレジットカード。現金を持ち歩くのが心配な地域や、キャッシュレス決済が普及していて現金払いがメジャーではない地域でも不自由なくお買い物ができるうえ、多くのカードには旅行中のさまざまなトラブルに備えられる保険が付帯されています。

でも、クレジットカードに付帯されている保険では具体的にどんなときにどこまで補償されるのでしょうか?また、旅行代理店や空港、インターネットで加入できる民間の海外旅行保険と比べて、どのような違いがあるのでしょうか?

クレジットカード付帯の海外旅行保険とは

日本にはないさまざまな景観やアクティビティを楽しめる海外旅行。しかし旅先は住み慣れた土地ではありませんから、思わぬアクシデントに見舞われるリスクもあります。
外務省※1は「テロや犯罪による事件・事故、ハリケーンや山火事等の自然災害、そして感染症や病気・怪我などの危険もあなたを待ちかまえています」と警告しています。

海外旅行保険では、これら旅先でのリスクに備えることができます。
おもに1.クレジットカードに付帯されているものと、2.旅行代理店や空港、インターネットなどで加入するものの2種類があります。

このうちクレジットカードに付帯する海外旅行保険は、基本的には保険に契約するための手続きがほとんどなく、気軽に補償を確保できるのが魅力です。

クレジットカードによって利用条件が異なる

クレジットカードに付帯されている海外旅行保険は、カードの会員向けサービスのひとつです。旅行に出発するタイミングで改めて保険に契約をしなくても、カードを持っている人なら補償の対象になるしくみになっています。

ただしお手持ちのクレジットカードによって、補償の対象になる利用条件が異なります。「自動付帯」といって、カードの会員であるだけで自動的に保険がついてくるものと、「利用付帯」といって、航空券の購入時や、旅行に出発してから出国前までの公共交通機関の利用時にそのカードを利用することで保険の対象になるものがあります。

自動付帯のカード

自動付帯のカードなら、出発前に保険に契約する手続きはもちろん、旅程の中でカードを利用する必要もありません。また、旅行先にカードを持って行く必要もありません。ただし、現地でアクシデントに見舞われてカード付帯の保険を利用するときには、カード会社の保険担当窓口に連絡をしたり、カード番号を伝えたりする必要があります。

利用付帯のカード

これに対して利用付帯のカードは、旅行のパッケージツアーや航空券の代金をカード払いする、旅行中に電車、タクシー、バスなどの公共交通機関の代金をカード払いするなど、クレジットカードを利用すると保険が適用されます。

ただし、細かな条件はクレジットカードごとに違います。たとえば公共交通機関の支払いについて、現地に到着してからカード払いを利用してもその時点からは補償の対象とするカードも一部にはありますが、多くは日本を出国する前にカード払いをしないと全旅程について補償の対象外になってしまいます。自分のカードに付帯されている海外旅行保険の条件を確認してみると安心ですね。

クレジットカード付帯の海外旅行保険の補償内容

クレジットカードに付帯されている海外旅行保険は、基本的には店頭や空港などで加入する海外旅行保険とほぼ同じ補償をそなえています。

カードによって細かな違いはありますが、旅行中の死亡や後遺障害、病気やケガ、賠償、携行品損害は多くのカードの付帯保険に含まれているようです。

それぞれの補償内容は以下の通りです。

傷害死亡・後遺障害

旅行中に偶然な事故によってケガをしたことが原因で、事故から180日以内に死亡した場合、または後遺障害を負った場合に、保険がおります。

傷害治療費用

旅行中に偶然な事故によってケガをして、病院で治療を受けたときに、窓口で支払った診察費や検査代、手術費や入院費、治療のために必要な通訳の費用などが保険からおります。上限はありますが、入院したときには、入院のための身の回り品の購入費や国際電話の通話料なども補償されます。

疾病治療費用

旅行中、または旅行後一定期間内に発病した病気が原因で、病院で治療を受けたときに、窓口で支払った診察費や検査代、手術費や入院費、治療のために必要な通訳の費用などが保険からおります。傷害治療と同じように、入院のための身の回り品なども補償されます。
海外でかかりやすい所定の感染症の場合には、旅行後14日以内など少し時間がたっても補償されます。

賠償責任

旅行中に滞在先のホテルの備品を壊してしまった、人にぶつかってしまったなど、偶然な事故によって他の人にケガをさせたり、他の人のものを壊したりして賠償責任を負ったときに保険がおります。おりる保険金は、法律上支払うべき損害賠償金や被害者の応急手当にかかる費用などです。

携行品損害

旅先に持って行った自分の身の回り品が、偶然な事故によって旅行先で壊れたり、盗まれたり、火災で燃えてしまったときなどに、損害額が保険からおります。多くのカードでは免責金額として3,000円など一部を自己負担し、超えた金額が保険金として支払われます。

ここでいう身の回り品には、スーツケースや携帯電話、スマートフォン、カメラなどが含まれますが、現金やクレジットカード、トラベラーズチェックなどは含まれません。

クレジットカード付帯と一般的な海外旅行保険の違い

これらの基本的な補償に加え、ゴールドカードなど年会費が比較的高いカードではさらに充実した補償をそなえていることがあります。また近年は年会費が無料でも、海外旅行保険の付帯サービスを売りにしたクレジットカードが多く、一概には比較できませんが、一般的には店頭などで自分で契約する海外旅行保険で、より補償やサービスが充実している傾向があります。

おもに、次の5点で違いがあるようです。

1.補償額の上限の違い

クレジットカード付帯でも、自分で契約するものでも、ほとんどの海外旅行保険の補償では、万が一トラブルに見舞われたときに受け取る保険金に上限があります。ただ、上限金額は自分で契約する海外旅行保険で高めの傾向があります。

たとえばケガや病気になったときの補償は、カード付帯の保険では上限数十万円~数百万円ほどのものが一般的です。これに対して自分で契約する海外旅行保険では、上限1,000万円以上のほか、無制限のものもあります。

また、賠償責任を負ったときの補償は、カード付帯の保険では上限2,000万円~3,000万円程度(1事故あたり)のものが多いのに対して、自分で契約する海外旅行保険では上限1億円ほどが中心です。

なお、自動付帯で海外旅行保険がつくクレジットカードのなかには、旅行のためにカードを使った場合と使わなかった場合で保険金額の上限が異なるものもあります。

2.免責金額の違い

旅行中の思わぬアクシデントで、海外旅行保険を使うときの自己負担が違うこともあります。クレジットカードに付帯されている保険では携行品損害の補償で一部自己負担が生じることが多いのに対して、自分で契約する海外旅行保険では免責金額が設定されておらず、損害額の全額が保険からおりるものが多い傾向があります。

3.補償される項目の違い

旅先では病気やケガ、盗難や賠償などさまざまなリスクがありますが、保険でカバーできる項目はクレジットカード付帯の保険と自分で契約する海外旅行保険では異なることがあります。

死亡・後遺傷害になったときや病気・ケガをしたときの補償はほとんどのクレジットカード付帯保険に含まれていますが、賠償責任や携行品損害の補償はついていないクレジットカードがあります。

一方で、自分で契約する海外旅行保険には、上記に加えて空港で預かり荷物が遅延したとき(寄託手荷物遅延等費用)、テロなどによって到着が遅れたとき(テロ対応費用)、旅行中に緊急的に歯科治療を受けたとき(緊急歯科治療費用)、賠償責任を負うなどのトラブルに巻き込まれて弁護士による法的な手続きや法律相談を利用したとき(弁護士費用)などへの補償をつけられるものが多いようです。

4.補償をカスタマイズできるかどうかの違い

これらの補償項目や保険金額の上限を、自分で自由に設定できるかどうかも大きな違いです。一部、オプションで補償を追加できるケースを除き、ほとんどのクレジットカード付帯保険は補償項目と上限の保険金額があらかじめ決まっており、自分で変更はできません。

これに対して自分で契約する海外旅行保険は、基本的なパッケージはあるものの、補償項目を追加したり外したり、補償の上限額を自由に設定できることが多いです。ネットで契約する海外旅行保険などでは、基本的な保障も含めてすべて自由に設計できるものもあります。

5.補償の対象を誰にできるかの違い

補償の対象を自分だけにするか、同伴者を含めるかの設定も、カード付帯の保険と自分で契約する保険で異なります。

クレジットカード付帯の保険では基本的にカード会員本人が補償の対象になります。カードによっては、カード会員の子どもも年齢などの要件を満たすと自動的に補償対象に含まれるものや、家族カードを持っていれば家族も補償対象になるものがあります。

これに対して自分で契約する海外旅行保険は、自分のみを対象にするプランと家族や友人同士など複数の人をセットで補償するプランから選んで契約します。また旅行に行く子どもの代わりに親が契約するケースのように、契約者以外の人を保険の対象にすることもできます。

旅行サービスでも、クレカ付帯と一般の海外旅行保険には違いが

海外旅行保険は、補償以外のサービスも上手に活用すると便利です。ここでも、クレジットカード付帯の保険と自分で契約する海外旅行保険で違いがみられることがあります。

病院案内やキャッシュレス医療のサービス

多くの海外旅行保険には、旅行中に病気やケガをしたときに現地の病院を案内してもらえたり、救急車を手配してもらえたりするサービスや、提携の病院なら窓口で医療費を現金払いせずにすむキャッシュレス医療のサービスがついています。自分で契約する海外旅行保険なら、ほぼすべての商品で対応しています。

クレジットカードに付帯の海外旅行保険にも、一部ではこれらの医療サービスがついていますが、ついていないカードもあります。

トラブル時の相談サービス

自分で契約する海外旅行保険の多くでは、病気やケガ、航空機に関わるトラブルだけでなく、パスポートやクレジットカードを失くしてしまった、盗まれてしまったなどのトラブルへのサポートも対応してもらえます。現地でトラブルに遭ったときに言葉がわからずに困ったときに、電話で通訳をしてもらうサービスや、入院したときに日本に滞在している家族に状況を報告してもらえるサービスのある保険もあります。

細かなサービスの範囲はカードや商品によって異なりますが、一般的にはカード付帯よりも自分で契約する海外旅行保険で充実している傾向があるようです。

旅行のサポートサービス

さらに、自分で契約する海外旅行保険のなかにはトラブルに限らず、海外旅行を楽しむために便利なサービスが充実している保険もあります。たとえば航空機の時刻表情報やホテルの案内をしてもらう、さらに予約や手配を代行してもらえるサービスを設けている保険会社があります。

なかには、電話だけでなくスマートフォンのアプリを使って現地のさまざまな情報やサービスの利用ができるサービスもあります。

カード付帯で基本的な備えを、海外旅行保険でさらに旅の安心を

このように、クレジットカード付帯の海外旅行保険には旅行中のさまざまなリスクに備える補償がついています。カードの種類によって補償の範囲や利用条件が異なりますので、一度お手持ちのカードの保険の内容を確認してみるとよいですね。

一般的には、自分で海外旅行保険に契約すると充実した補償を確保しやすい傾向があります。クレジットカードをお持ちの方は、カード付帯の保険の上乗せとして、必要な補償を選んで海外旅行保険に契約してもよいのではないでしょうか。

※1 出典:外務省「海外安全ホームページ 海外旅行を予定されている皆様へ」

  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。