一戸建てにお住まいの方は、自宅が火災で燃えてしまったら、自分で建物を再建しなければなりません。そこで知っておきたいのが火災の原因ですが、意外と多いのが「放火」によるものです。

ここでは、放火のリスクと対策方法について知っておきましょう。

たばこの次に多い! 放火による火災

消防庁「平成30年版消防白書」※1によると、出火の総件数は3万9373件。このうち約7割はガスコンロなどの火源が動いた、落下したなどで燃えやすいものに接触した、たばこなどのポイ捨て、火をつけたまま放置した・忘れた、火の粉が散ったなど、いわゆる「失火」が原因です。

次いで、「放火・放火の疑い(約15%)」、「自然発火・再燃(約2%)」と続いています。

一方で、何が火元になったのかを見ると、もっとも多いのが「たばこ」で、次に「放火」、「こんろ」となっています。しかし、「放火の疑い」の出火も2,305件あって、「放火」と「放火の疑い」を合わせると5,833件となり、出火原因のダントツ第1位となっています。

主な出火原因別の出火件数※2

  1. たばこ 3,712件
  2. 放火 3,528件
  3. こんろ 3,032件
  4. たき火 2,857件
  5. 放火の疑い 2,305件

放火を防ぐ対策

放火・放火の疑いによる出火は近年減少傾向にあるものの、平成28年(5,814件)から平成29年(5,833件)にかけては微増する※1など、依然、火災の原因として見逃せません。
また、放火は遅い時間になるほど起きやすく、深夜が最も多くなっています。放火による火災での損害額も深夜が最も高く、0~2時の1件あたりの損害額は約255万円です。

放火及び放火の疑いによる時間帯別火災1件あたりの損害額

放火及び放火の疑いによる時間帯別火災1件あたりの損害額のグラフ

放火及び放火の疑いによる時間帯別火災1件あたりの損害額のグラフ

出典:平成30年消防白書「主な出火原因別の出火件数」より

あたりが暗く、人目につきにくい時間帯は放火をしやすく、また火災が起きてもすぐに気がつかずに燃え広がり、損害も大きくなりがちのようです。

放火の防止法

さらに、放火の発火源として最も多いのはライターです。マッチによる発火が253件に対してライターは1,659件と、約7倍にのぼります※2。ライターは片手ですぐに火をつけることができますから、放火を防ぐためには一瞬でも火をつけさせるような環境にしないことが大切かもしれません。

消防庁では、自宅にどれくらい放火の危険度があるかを確認するチェックリストを配布しています。たとえば以下が挙げられています。

  • 付近の道路は、深夜でも人通りがありますか?
  • 門扉には夜間鍵をかけていますか?
  • 道路に面した車庫や物置には夜間鍵をかけていますか? 
  • 深夜でも玄関灯や門灯をつけていますか?
  • ごみは回収日の決められた時間帯に出すようにしていますか?
  • 郵便受けの新聞等は早目に取り込んでいますか?
  • 住宅用火災警報器を設置していますか?

つまり日頃から、自宅の周囲に燃えやすいものを置かない、家の敷地に外灯やセキュリティライトをつける、夜の間にゴミを出しっぱなしにしないなどを心がけると効果的でしょう。

火災保険は放火による火災でも補償される

とはいえ、どんなに対策をしていても、放火を完全に防ぎきるのは難しいのも事実でしょう。積極的に予防するとともに、起きてしまってからの対策も講じておくことが大切です。

万が一、放火によって自宅が火災に遭ってしまった場合に備える方法として最も一般的なのが、火災保険です。火災保険に入っていれば、放火による火災の被害も補償されます。

火災の原因が放火かどうかわからないときはどうなる?

放火の場合、本当に火災の原因が放火であるかどうかがはっきりしないこともあります。火気のないところが火元とみられれば、放火が疑われるものの、警察の捜査が終わらなければ明確にはなりません。捜査を経ても最終的に原因がわからず、放火以外の要因がないことから「放火の疑い」と結論付けられることもあります。

しかし、火災保険は必ずしも原因が判明していなくても保険金はおります。自宅が放火によって燃えてしまったと思われるがはっきりしない、放火の犯人が見つかっていないようなときでも、保険金は支払われます。

自分の故意で放火をしたら火災保険はおりない

ただし、火災保険の「免責事由」に触れるケースでは、補償されないこともあります。

ひとつは、火災保険に契約している人やその家族が、故意に(わざと)火をつけたことによる火災の場合です。本人や家族が保険金目的に放火した場合は、当然ながら保険はおりません。

保険会社の査定時には故意だったことが明らかでなく、保険金が支払われることもありますが、後に故意だったことがわかれば、放火をした本人に保険会社から保険金額が請求されることになります。

なお、家族には未成年の子供も含まれます。子供がいたずらで火を付けてしまったような場合にも、親の監督責任を問われて保険金がおりないことがあります。

放火されやすい建物だと「重大な過失」とされ保険が下りない恐れがある

もうひとつは、放火されたことは明らかでも、建物の所有者に「重大な過失」があった場合には、補償を受けられないことがあります。

何をもって「重大な過失」とするかは明確ではないのですが、放火されやすい状況を放置していたりして過失とされた以下のような判例が残っています。

重大な過失と認められた判例

  • てんぷら油が入った鍋をコンロにかけたまま長時間その場を離れて火災になった(昭和57年3月29日東京地方裁判所判決)
  • カンナくずが大量に放置されている裏庭で、火災注意報が発令されている日にたき火をして火災になった(昭和58年1月28日京都地方裁判所判決)
  • 寝タバコが原因で火災になった(平成2年10月29日東京地方裁判所判決)
  • 火を消さずに石油ストーブに給油し、こぼれた石油に着火して火災になった(平成15年8月27日東京高等裁判所判決)

万が一の放火に、火災保険で備えを

大切なわが家を放火から守るためには、自宅の周囲の整備や日頃の心がけがまずは大切です。しかし犯罪の手口はさまざまで、完全に防ぎきれないこともあります。

もしも自宅が放火されてしまったときには、火災保険で1日も早く復旧に近づきたいものですね。


※1 出典:消防庁「平成30年版消防白書」
※2 出典:平成30年消防白書「主な出火原因別の出火件数」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 吉原 亜矢子

    吉原 亜矢子(よしはら あやこ)

    FPサテライト株式会社
    ファイナンシャルプランナー
    結婚を機に資産運用について学び、株や債券なども経験。2級FP技能士を取得後、現在子育てをしつつ、ファイナンシャルプランナーとして活動中。
  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。