自転車保険の義務化とは?地域や対象者、罰則についてまとめて解説

昨今、自転車保険の加入義務化が各地域で進められています。とりあえず何か自転車保険に入らないと!と焦って自転車保険に入る前に、「自転車保険の義務化」とは何か、また「入らなければいけない保険」についてご紹介していきます。

自転車保険の義務化とは

自転車保険の義務化とは、各地域が定めた「自転車の安全利用に関する条例」の中にある取り組み項目の一部です。

自転車保険義務化の目的

自転車事故では、事故を起こした人も、その被害にあってしまった人も経済的なダメージを負ってしまうことがあります。

相手にケガをさせてしまった(加害者)場合、ケガをした相手に治療費や、ケガによって仕事を休業してしまった際の損害などを払わなければならないことがあります。賠償金の額は数千万円規模と高額になるケースがあり、加害者にとって重い負担になってしまう恐れがあります。

また被害者にとっては思わぬ事故でケガをしたら治療費がかかりますし、入院や手術のための仕事ができなくなったら、収入が下がってしまいます。これらによる経済的な負担は小さくないことがあります。

そこで、自転車事故によって加害者になった場合も、被害者になった場合にも生活を立て直すことができるように、各地では条例によって自転車に乗る人に保険への加入を義務付ける動きが進んでいます。

自転車保険の義務化のきっかけ

全国で自転車保険が義務化されるようになったきっかけは、自転車事故による高額な賠償の支払いを命じる判決があったことです。

特に2008年に神戸で発生した事故での判決命令は全国的に注目されました。小学5年生の子どもが自転車に乗っているときに女性に衝突し、女性は頭蓋骨骨折、意識不明の重体となった事故です。
この事故に関しては2013年の裁判で、子どもの保護者に対して約9,500万円もの賠償金の支払いを命じる判決が下されました。

日常生活で身近な自転車は事故もまた身近にあるもの。そして誰もが「加害者」にも「被害者」そしてその家族になり得るのです。
被害者にとっても加害者にとっても重大な結果となってしまったこの事故を重く受け止め、兵庫県は2015年に国内で初めて自転車保険の加入を義務づける条例が制定されました。

自転車事故による高額な賠償事例はほかの地域でも多発しています。そこで兵庫県での義務化をきっかけに、全国の地域でも義務化が進められています。

では、どの地域で自転車保険が義務化されているのでしょうか。

自転車保険の義務化の地域はどこ?

2020年4月には東京都が義務化するなど、大都市圏を中心に自転車保険への加入義務付けが広がっています。

現在はまだ義務化されていない地域でも、多くは導入についての検討がすすめられているようです。

主な自治体

au損保調べ-自転車保険義務化

au損保調べ-自転車保険義務化

出典:au損害保険株式会社「自転車保険の加入義務化ってなに?」

自転車保険の義務と努力義務の違いってなに?

自転車保険の義務化をしている地域の中でも、その度合いは異なるところがあります。

「義務」としている地域では、その地域内で自転車を運転する人に対して自転車保険に加入しなければならない、つまり加入を義務としています。

これに対して「努力義務」としている地域では、自転車保険に加入するよう「努めなければならない」とするなど、「努力義務」としています。

努力義務から義務へと段階的に引き上げられていく地域もあるようです。たとえば埼玉県と京都府は以前から「努力義務」の条例が制定されていましたが、2018年4月に「義務」へと変更されました。。

自転車保険の義務化の対象は誰?

自転車保険が義務化されている地域で、自転車保険に加入しなければならないのは、その地域で自転車を利用する人です。

たとえば次のような例が含まれます。

義務化の対象者

義務化されている地域内で

  • 自転車通学の人
  • サイクリングをする人
  • 自転車で子供の送り迎えをする人
  • 自転車通勤をする人

これら、自転車に乗る人は、もしも自転車事故で加害者になって相手に賠償をしなければならなくなったときに、賠償金に相当する保険金がおりる保険に加入する必要があります。

自転車保険に入らなくても罰則はない

「義務化」されている地域で自転車保険に入っていないと、どうなるのでしょうか?

2020年現在は罰則規定を設けている地域はなく、加入していなくても、罰せられることはありません。

これは、罰則を設けるためには保険に加入しているか確認をしなければなりませんが、義務化に対応する保険にはさまざまな種類があるため、確認が難しいためと言われています。

とはいえ、罰則があるなしにかかわらず、条例によって加入することを義務付けているものですから、万が一への備えはしておきたいものですね。

義務化に対応できる自転車保険

自転車保険の義務化に対応できる保険は、自転車に乗っている時の事故で「相手への賠償ができる保険」であれば種類を問いません。

民間の保険会社などで「自転車保険」という商品名で販売されているものは、この「相手への賠償」に加え、「自分のケガ」も補償されているものが多いですが、義務化のことだけを考えれば「相手への賠償」に備えられる保険なら、基本的にはほかの保険でも対応できます。

「相手への賠償」する保険はどんなものがある?

「相手への賠償」をできる保険は、個人賠償責任保険、日常生活賠償責任保険ともいわれています。日常生活にかかわる偶然な事故によって、他人にケガをさせたり他人の物を破損させてしまい、法律上の賠償責任が発生した場合に補償される保険です。そのため、日常生活で自転車に乗っている時の事故も対象となるのです。

ですから、現在すでに加入している他の保険に賠償責任保険がセットされている場合には、条例に対応できている場合が多いです。

「条例が施行されるから新しく保険に入らないと!」と慌てて自転車保険に入ったら、実はすでに個人賠償責任保険に入っていた。なんてことがあるかもしれません。

自転車保険を検討する前に、まず自動車保険や火災保険にオプションで賠償責任保険がセットされているか確認してみましょう。

注意が必要なのは、ゴルファー保険や旅行保険などにセットされている個人賠償責任保険です。「ゴルフプレー中の事故」「旅行中の事故」など保険が支払われる範囲が限られている場合があります。日常の自転車利用中の事故が補償の対象になるのかを確認しておきましょう。

また、セットされている場合には賠償金に対応できる十分な保険金額設定されているかどうかも大切です。9,500万円のような高額な賠償を支払う事例を踏まえると、保険金額の上限が1億円などになっているとよいのではないでしょうか。

これらを考慮して、自転車保険に入る前には次のことをチェックしてみましょう。

自転車保険に入る前にチェックすること
  • 自動車保険や火災保険などオプションで「賠償責任保険」がセットされているか
  • 「賠償責任保険」の補償範囲に自転車事故が入っているか
  • 「賠償責任保険」がセットされている場合、1億円など賠償金額が十分についているか

自転車保険の義務化を知って、保険の見直しや検討を

自転車保険の義務化では、自分が加害者になったときの相手への賠償に備えることが義務付けられています。まずはそれを満たす保険にすでに入っていないか、確認しておくと安心ですね。

また、自転車の事故では自転車に乗っている自分自身が大きなケガをする可能性もあります。

義務化をきっかけに自転車事故の危険性、自転車の安全運転の大切さ、自転車事故に備えた保険について考えてみてはいかがでしょうか。

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。