私たちにとって身近な乗り物である自転車。通学はもちろん、少し遠出をするときにも便利なことから、最近ではサイクリングブームやエコの観点からも注目を集めています。免許がなくても気軽に乗れるということもあり、特に中学生や高校生は普段から利用する機会が多いのではないでしょうか。

気軽に乗れる反面、事故のリスクにも注意しておきたいもの。近年、全交通事故件数に占める自転車事故の割合は2割程度の水準で推移しています。そして、自転車事故による死傷者の約半数が、未成年者と高齢者で占められているのが現状です※1

自転車事故は出会い頭に注意

全自転車事故のうち約8割は、自動車との接触によって起こっています。なかでも54%、つまり半数以上が交差点などで起こる出会い頭の衝突によるものです※1。警察庁によると、交差点での「油断」が事故の原因と思われるものが目立ちます。

中学生・高校生の自転車事故に絞ってみても、最も多いのは出会い頭の事故です。その原因には信号無視のほか、一時停止をしなかった、相手の動きを見誤ってしまった、注意はしていたものの防ぎきれなかった、死角で気づかなかった、気持ちが焦って左折や右折のルールを守らず、減速せずに強引に曲がったなどが挙げられます※2

これらに共通することは、あとほんのわずかでも落ち着いて運転に集中できていたら、事故は防げた可能性があるということです。

中学生・高校生の自転車事故は登校時が多い

中学生、高校生の自転車事故で最も多いのが学校への登下校中の事故です。登校時間帯である7時台と8時台が最も多く、下校時間帯の16~18時台と合わせると、全時間の約6割を占めています。

5~7月は特に注意が必要

また、事故の発生時期は4月から増加し、5~7月で特に多いこと、未成年の自転車事故による死傷者では16歳(高校1~2年生)が最も多いことから※2、自転車事故が起こりやすいのは高校入学から少し時間が経ったころと考えられます。

新しい生活に慣れて緊張感が薄れ、気が緩む時期、特に朝の登校時は「学校に遅刻しないように」と焦って自転車を運転しがちになり、事故を招くのかもしれません。

ヘルメット装着で命を守ることが大切

また自転車による死亡事故での致命傷となった損傷部位を見てみると、中学生では90%、高校生では69%が頭部でした。そして、頭部が致命傷となった死者のうち、ヘルメットを装着していなかった中学生は72.2%、高校生ではなんと100%という結果が出ています。

自転車に乗っているとき、場合によっては防ぎきれない事故もあるかもしれませんが、ヘルメットをしていれば命は守れた可能性があることを伺わせます。

調査では、ヘルメット着用を励行している高校は7.7%に留まる※2という結果もありますが、最悪の事態を防ぐにはヘルメットをつけて自転車に乗ることが大事ではないでしょうか。

子どもが自動車事故の加害者になることも

自転車に乗っているときのアクシデントでは、自分がけがをしてしまうリスクとともに、人にけがをさせてしまうリスクもあります。特にぶつかったときに相手が歩行者だった場合には、多くのケースで自転車側が加害者になってしまうようです。

自転車と歩行者が絡む死亡・重傷事故で、中学生、高校生を含む10~19歳の未成年者が自転車に乗っていたケースは約4割を占めています※1。子どもが加害者になってしまうことも珍しくないのです。

子どもが加害者になったら?刑事・民事の責任は?

万が一、子どもが自転車事故で加害者になってしまったら、どうなるのでしょうか?

一般的に自転車での交通事故を起こした場合、法を犯したことによる「刑事上の責任」と被害者に対して賠償責任を負う「民事上の責任」について問われることになります。

刑事上の責任

まず刑事上の責任については、14才未満の未成年者には事故に関する処罰はありません(刑法41条)。また14~19才の未成年者に対しては家庭裁判所で審理され、大部分は刑事的な処罰は受けません。

しかし、なかには重過失致死罪に問われた大学生(当時19歳)が書類送検され、禁錮2年6ヶ月、執行猶予3年の有罪判決を受けた事例もあり、場合によっては成人と同じ刑や罰金を支払う可能性もあります。さらに、罰金を支払う状況になった場合は前科もついてしまいます。

民事上の責任

また、相手にけがをさせた、ものを壊した場合には民事上の損害賠償責任を負います。具体的な金額は裁判で検討されますが、最近の事故例では1億円近いケースなど、加害者が支払う事故の賠償金は数千万単位に上ることがあります。

そのような高額な賠償金を未成年者が払えるとは考えにくいため、実質は親が負担することとなるのですが、なにより高額なため、1回の事故で自己破産してしまう可能性も否定できません。

事故防止のために自転車ルールを確認

自分がけがをしてしまうのも、加害者になってしまうのも、できる限り避けたいものですよね。そこで、自転車を安全に乗るためのルールを確認しておきましょう。

警察などは自転車利用の全国共通ルールとして「自転車安全利用五則」を定めています。

自転車安全利用五則
  1. 自転車は、車道が原則、歩道は例外
  2. 車道は左側を通行
  3. 歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
  4. 安全ルールを守る
    • 飲酒運転・二人乗り・並進の禁止
    • 夜間はライトを点灯
    • 交差点での信号遵守と一時停止・安全確認
  5. 子どもはヘルメットを着用

実際のところ、交通事故に遭った人の8割がなんらかのルール違反をしているというデータがあります※1。交通ルールを守っていたかどうかは、加害者が負う損害賠償にも関わるため、どんな立場であっても知っておくと安心でしょう。

ルール違反で罰則も

「自転車安全利用五則」のルールは、違反すると5万円以下の罰金など罰則も設けられています。また3年以内に2回以上摘発された自転車運転者は、公安委員会の命令を受けてから3ヶ月以内の指定された期間内に、自転車運転者講習を受けることを義務づけられています。

自転車での事故に備えて「自転車保険」も検討を

このように、自転車で事故に遭ったときには、自分がけがをしてしまうリスクも、加害者として相手にけがをさせてしまうリスクもあります。これらに備える方法のひとつが、「自転車保険」です。

自転車保険でどこまでカバーできる?

自転車保険は、自転車に乗っているときのアクシデントに特化した保険です。おもに相手にけがをさせた、ものを壊した時に負う損害賠償の費用が保険からおりる「賠償責任保険」と、これに加えて自分がけがをしたときの入院や通院でかかる費用がおりる「傷害保険」がセットになったものが一般的です。

中には「示談交渉サービス」や「弁護士費用特約」がついているものもあります。示談交渉サービスがあれば、直接相手と交渉せずにすむので心理的負担が少なくなります。しかし自分には落ち度のない「もらい事故」の被害者となった場合は、原則として自分が加入している保険会社が示談交渉を行うことはできません。その場合、弁護士費用特約があれば弁護士に交渉の依頼をし、その費用を保険から受け取れます。

自転車のリスクと対策を知って、安全に乗りこなそう

身近な乗り物であるからこそ、自転車に乗る際のリスクをきちんと家族で把握しておきたいもの。そして、日頃からヘルメットを着用したり、保険に加入するなど、あらかじめ対処しておくと安心です。

※1 出典:警察庁交通局「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」(平成30年)
※2 出典:警察庁交通局「児童・生徒の交通事故」(平成30年)

  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。