新型コロナウイルスで入院したら、医療保険はおりる?

2019年12月に中国湖北省武漢市で確認されて以来、世界中で感染が広がっている新型コロナウイルス。日本でも2020年4月に緊急事態宣言が発令されるなど終息に向けた取り組みが続いていますが、感染経路が特定できないケースも散見されています(2020年5月現在)。 予防に努めていてもかかってしまう不安を感じている人が少なくないのではないでしょうか。

では、もしも新型コロナウイルスにかかったら、治療費はいくらかかるのでしょうか?また生命保険や医療保険は使えるのでしょうか?

※【5/20更新】本記事は5月現在の情報を元に加筆・更新しています。

新型コロナウイルスでの公的保険の取扱い

新型コロナウイルスは過去には例がなかった病気で、2020年1月28日に厚生労働省※1が「指定感染症」に指定しました。これをうけて医療機関では、一般的な患者さんとは異なる受け入れ体制がとられています。また、医療費の負担についても一般的な病気とは一部異なるしくみになっています。

新型コロナウイルスで入院の場合は公費負担に【3/31更新】

病気にかかって治療を受けたり、入院をしたりしたときにかかる医療費のうち、公的な医療保険がきく治療については3割(現役世代の場合)を自己負担するのが原則です。

しかし今回、新型コロナウイルスは「指定感染症」に指定され、新型コロナウイルスで入院した人の医療費は公費で負担することとされました※2

2020年5月現在、新型コロナウイルスの治療は指定医療機関で受けるのが原則ですが、緊急の場合は、受け入れ可能な別の医療機関でも受診できることになりました。その場合でも、治療費はすべて公費でまかなわれます※2-2

指定感染症とは?

厚生労働省によると、指定感染症とは次のように定義されています。

既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、感染症法上の規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの(感染症法第6条)

これは、新型コロナウイルスは結核やコレラ、鳥インフルエンザなどに準じた措置をとるべき感染症であることを意味します。

このため、新型コロナウイルスに感染した人は、原則として厚生労働省に指定された病院である「特定感染症指定医療機関」で治療を受けることになっています(2020年5月現在)。その際には、感染の拡大を防ぐために一般の患者さんとは分離する措置が取られています※2

なお「指定感染症」の医療費については、従来から自己負担を軽減する制度がある都道府県もあります。たとえば東京都※3では、世帯が負担する所得税額に応じて最大2万円の一部自己負担はあるものの、これを除く金額が公費負担とするしくみになっています。

新型コロナウイルスでの民間生命保険の取扱い

では、もし新型コロナウイルスにかかって入院をしたら、民間の生命保険はおりるのでしょうか? 現在のところ、病気をしたときに備える医療保険や、治療のために働けなくなったときに備える就業不能保険については、原則として新型コロナウイルスも他の病気と同じ取り扱いとしている保険会社が多いようです。

医療保険は病院への入院に限らず給付

病気やけがで入院や手術をしたときに給付金がおりる医療保険や、生命保険の医療特約では、新型コロナウイルスの場合も原則通りに保険がおりることとしている保険会社が多いようです。

現在、新型コロナウイルスにかかった場合には入院措置を取られ、対症療法を中心に治療が行われるようです。ですから、治療のために入院をしたら、契約している生命保険や医療保険から給付金を受け取れるケースが多いと考えられます。たとえば「入院1日につき1万円」のような契約内容であれば入院日数に応じた金額が受け取れますし、契約内容によっては入院をしたら日数にかかわらず所定の一時金を受け取れるものもあります。

多くの保険会社では、検査結果が陰性か陽性かに関わらず、入院治療を受けたら給付の対象になるとしています。また医療機関の受け入れ体制の都合上、入院による治療が受けられないとき、ホテルや臨時の施設に宿泊して治療を受けているとき、医師の管理のもとで自宅療養をしているときも、医師の診断書などがあれば、通常の入院と同じように、給付金を受け取れることがあるようです。加えて、一部の保険会社では、病院の受け入れ体制の都合で当初の退院予定日よりも早く退院することになった場合に、当初の退院予定日までを入院給付金の対象期間に含めるところもあります。

オンライン診療で医療保険がおりることも【5/20更新】

さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、一部の病院では特別措置として病院に直接出向かなくても、電話やオンラインを通して診察を受けられるようになってきています。そこで、生命保険や医療保険でも、オンライン診療や電話診療を受けたときに、一般的な通院をしたとみなして、「通院給付金」を受け取れることがあるようです。

詳しくは、契約している保険会社に相談してみましょう。

なお、いまのところ新型コロナウイルスでは手術で治療をするケースは多くないようですから、生命保険や医療保険から手術給付金を受け取ることは考えにくいのではないでしょうか。

就業不能保険は治療で長期間働けない時に給付

病気やけがで働けなくなったときに給付金を受け取れる民間の生命保険のなかには、「就業不能保険」があります。治療のために入院をしたり医師の指示によって在宅で療養をしたときに保険がおります。

ただし、多くの就業不能保険は60日間や180日間などの「支払対象外期間」があります。つまり働けなくなっても、2カ月から3ヶ月間は保険がおりません。新型コロナウイルスは症状にもよりますが治療期間がそれほど長くはなく、就業不能保険では給付金を受け取る対象にはならないケースが多いと考えられます。

ただ、新型コロナウイルス感染症の流行が続くなか、自分が感染していなくても、さまざまな影響によって心身への負担がかかり、体調を崩してしまうこともあるかもしれません。たとえば身近な人が感染したために濃厚接触者として自宅隔離が必要になった、在宅勤務などにより仕事や職場のコミュニケーションに制限が生じたなど、平時には想定できなかった状況が長く続くことで体調不良になり、仕事ができなくなってしまうようなケースです。

個別の状況にはよりますが、このような場合に就業不能保険の対象になるケースは考えられます。

ただし、新型コロナウイルスを理由に職場から自宅待機を命じられた、勤務先が休業したという理由だけでは、就業不能保険の対象にはなりません。あくまでも、病気やケガによって仕事ができない状態になったときに、就業不能保険がおります。

なお、日本の保険会社の医療保険や就業不能保険の場合、入院する病院や在宅療養をする自宅は日本国内に限り給付の対象としているのが一般的です。

国内で新型コロナウイルスの治療を受ける場合は原則通り給付されると考えられますが、海外やクルーズ船上で治療を受けたときには対象外になるおそれもあります。感染拡大の状況により、今後変更される可能性もありますので、詳しくは契約先の保険会社に相談してみると確実ですね。

新型コロナウイルスでの入院時には、生命保険の内容確認を

新型コロナウイルスに関する状況は刻々と変化しており、今後の感染の状況によっては公的な補助の体制や各保険会社の取り扱いが変わることも考えられます。もしも新型コロナウイルスにかかり治療が必要になったとき、公的な補助についてはお住まいの自治体の窓口に、民間の生命保険の給付については契約している保険会社に確認してみましょう。

とはいえ、いざ入院することになればさまざまな対応に慌ただしくなるかもしれません。あらかじめ、ご自身がどこの保険会社でどんな保険に入っているかや、給付を受けるための窓口の連絡先などを確認しておくと安心ではないでしょうか。

新型コロナウイルスの感染が疑われる場合には、病院を受診する前にまずは各都道府県の「帰国者・接触者相談センター」に相談するよう奨められています。

※本記事は2020年5月15日現在の情報を元に執筆しています。内容は随時更新しておりますが、必ずしも最新ではないことがあります。また、個別の状況により費用の負担や給付の受取りについて取り扱いが異なることがあります。個別具体的なケースにつきましては、最寄りの自治体や契約先の窓口などにご確認ください。

※【3/31更新】情報更新に伴い、本文を一部改編・追記しました。

※【5/15更新】情報更新に伴い、再度本文を一部改編・追記しました。

※1 出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令等の施行について(施行通知)」
※2 出典:首相官邸「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」
※2-2 出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る公費負担医療の取扱いについて」
※3 出典:東京都「感染症医療費助成制度」

参考:首相官邸「新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。