先進医療特約とは?医療費用や特約の必要性を専門家が解説

生命保険や医療保険のなかには、「先進医療特約」というオプションをつけられるものがあります。おおまかには文字通り、先進的な医療を受けたときに給付金を受け取れる保障ですが、実際にはどんなときに活用できるのでしょうか? 

先進医療とはどんな治療でいくらかかるか、また保険の先進医療特約について知っておきましょう。

先進医療とは?

「先進医療」とは、高度の医療技術を用いた治療法や医療技術のうち、公的医療保険の対象にはなっていないものの、有効性や安全性について一定の基準を満たしたものをいいます。

厚生労働大臣によって定められ、2020年4月現在、がんや糖尿病、うつ病やアルツハイマー病などにかかわる治療や検査など81種類が「先進医療」とされています※1。

先進医療を受けたときにかかる費用は?

先進医療を受けたときの医療費は全額が自己負担です。病院の窓口で保険証を提示しても、保険はききません。

また、費用は先進医療の種類や病院によって異なります。
厚生労働省が2018年7月から2019年6月の1年間に行われた先進医療の件数と費用をまとめた資料をみると、先進医療の内容によって、費用に大きな差があることがわかります。

先進医療というと数百万円規模の高額な治療というイメージが強いかもしれませんが、少額で受けられるものもあるようです。

令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について

※はみ出ている場合、横にスクロールできます。

先進医療
技術名
平均
入院期間
(日)
総額
先進医療費用
(円)
実施件数
(件)
1件あたりの
先進医療費用
(円)
陽子線治療
(肝細胞がん)
15.3 11,587,000 4 2,896,750
重粒子線治療
(肝細胞がん)
2.1 26,920,000 8 3,365,000
重粒子線治療
(直腸がん)
13.2 37,783,000 12 3,148,583
マルチプレックス
遺伝子パネル検査
(固形がん)
4 116,903,376 130 899,257
術後のアスピリン
経口投与療法
(下部直腸を除く
大腸がん)
0.2 79,714 85 938

出典:厚生労働省「令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」

先進医療と自由診療の違いとは?

加えて、先進医療は保険診療と併用できます。これが、一般的な自由診療との大きな違いです。

一般的な自由診療は、原則として保険診療と併用できません。併用すると治療の全体が自由診療とみなされ、保険診療分も含めて医療費の全額が自己負担になります。

つまり、診察など通常は自己負担が3割(年齢などによっては1~2割)の診療を受けた後に、同じ病気やケガの治療のために自由診療の手術や検査などを受けたときには、診察も含めてすべての医療費が10割負担になるということです。

これに対して先進医療を受けた場合は、保険診療に含まれる診察・検査・投薬・入院などにかかる医療費については公的な健康保険が適用されます。この部分は3割負担になり、先進医療にかかる医療費のみが全額自己負担になります。

たとえば、医療費が全部で100万円、このうち先進医療にかかる医療費が20万円だった場合、先進医療に対する自己負担は20万円ですが、残りの医療費(80万円)には保険がききます。

先進医療と保険診療合わせて100万円の治療費がかかった場合

先進医療と保険診療合わせて100万円の治療費がかかった場合

先進医療と保険診療合わせて100万円の治療費がかかった場合

出典:厚生労働省「先進医療の概要について」をもとに筆者作成

この例なら、先進医療分の20万円と、保険がきく診療分の自己負担3割の24万円、あわせて44万円を自己負担することになります(なお、保険がきく医療費には「高額療養費」という制度があり、さらに負担が抑えられることがあります)。

なお、同じ治療を受けても、ある医療機関では「先進医療」の扱いになるものの、別の医療機関では対象外になることもあります。先進医療は、その治療内容や医療技術が有効で安全であるかどうかだけでなく、それを実施する医療機関が基準を満たしているかどうかも認定の要件とされているためです。

先進医療を受けたいときには、治療を受けている医療機関が先進医療に対応しているかを確認してみましょう。

先進医療の対象が変わるとどうなる?

医療技術は日進月歩で進化しています。このため先進医療として認められる診療の種類や数は定期的に見直されています。
新しい技術が先進医療に加えられたり、有効性や安全性について十分に確認されると、先進医療から公的医療保険の対象になる診療(保険診療)に切り替えられたりします。

逆に、先進医療から外れ、公的医療保険の対象にもならない、いわゆる自費診療に切り替わることもあります。

たとえば2020年4月には、それまで先進医療とされていた「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」という技術が先進医療の対象外とされました※2。白内障の手術で多く行われていたものですが、現在は先進医療にはあたりません。

ただ、上記の再建術については先進医療から外れても「選定療養」という分類にされました。これは保険がきかないものの、混合診療が認められる診療です。したがって、再建術にかかる医療費は全額が自己負担になるものの、診察など保険がきく部分は3割負担ですみます。

先進医療から外れた後にどのような分類にあてられるかは、個々の医療技術の状況によって異なります。
分類の違いによって負担する医療費も変わってきますので、治療を受ける際には確認しておくと安心です。

生命保険の先進医療特約でどこまで対応できる?

民間の生命保険、医療保険やがん保険の中には、「先進医療特約」を付加できるものがあります。これは先進医療を受けた時に、その技術料と同額の先進医療給付金を、通常の入院給付金などとは別に受け取れるものです。

先進医療特約のしくみと保障内容

先進医療特約の保障内容は、基本的にはどこの保険会社でも同じです。1回に受け取れる限度額や通算の限度額は保険会社により多少異なりますが、原則としては先進医療を受けたときにかかった費用の実費が保険でおりるしくみです。

受け取れる給付金額は2020年現在、最高で通算1,000万円~2,000万円までとしているところが多いです。

保険に先進医療特約を付けると、オプションの保険料がかかります。月々100円程度でつけられることがほとんどです。
ただしこのオプション部分の保険料は10年ごとに見直されるのが一般的です。医療保険やがん保険には終身タイプといって、契約してからはずっと保険料が変わらないものがありますが、先進医療特約部分の保険料だけは、途中で変わることがあります。

これは、先進医療特約はほかの特約と異なり、契約時の年齢や性別などに応じた料率ではなく、先進医療を利用する人がどれくらいいたか、どれくらいの金額を保険会社が給付したかという過去の実績に基づいて、特約の保険料が決まるためです。

先進医療特約は必要?

生命保険の先進医療特約は、年齢や性別にかかわらず比較的手ごろな保険料でつけられるのが一般的です。ですから、保険に加入するならとりあえず先進医療特約もつけておこうと考える人も少なくありません。

いざ病気やケガをしたときに、治療の選択肢を広くしたいと考えるなら、先進医療もそのひとつに含めておきたいところでしょう。ただ先進医療は費用の全額が自己負担になります。医療費の負担を心配したくないなら、保険の先進医療特約があると安心ではないでしょうか。

一方で、ひとくちに先進医療といってもその内容はさまざまで、かかる費用も大幅な差があります。1回に200万円から300万円など高額な費用がかかるものもあれば、数千円程度で済んでしまうものもあります。

また、先進医療として実施される件数は年間1,000件弱で、その技術によって異なります。高額な先進医療技術でも、実施件数がそれほど多くないものもあります。

さらに、先進医療の対象は随時変更されます。厚生労働省による見直しで先進医療の対象が変われば、民間の保険の先進医療特約の対象も変わります。

先進医療特約を付けていても、実際に自分が病気やケガをしたときに先進医療による治療を受けるかどうかは、予測が難しいといえます。保険に先進医療特約を付ける必要があるかどうかも、判断に迷うところでしょう。

先進医療でかかる医療費と考え方に応じて、先進医療特約の検討を

先進医療は全額が自己負担で、種類によっては高額な費用がかかることもあります。ただその範囲は医療の進歩とともに随時見直されています。

ご自身がどのような病気にリスクを感じるか?そのときに取れる治療の選択肢をどれくらい広くしておきたいか?といった考えに応じて、先進医療特約を付ける必要があるかどうかを検討してはいかがでしょうか?

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※1 出典:厚生労働省「先進医療の概要について」
※2 出典:厚生労働省 「中央社会保険医療協議会 総会(第441回) 議事次第」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。