女性には、人生の中で妊娠・出産を経験する可能性があります。しかし、妊娠・出産をすると保険に入りづらくなるのをご存知ですか?

妊娠も出産も病気ではないものの、健康状態や体質が通常時とは大きく変わり、日頃は健康な人でも入院のリスクが高まることがあるため、保険の加入も難しくなるのです。

では、妊娠・出産にはどんなリスクがあり、保険の契約でどんな影響があるのでしょうか。

妊娠中は流産、早産、高血圧症候群で入院するケースがある

妊娠は赤ちゃんを授かり、約10カ月にわたっておなかの中で育んでいく大切な時間です。しかし、新しい命を宿したママの身体は、急激な変化にさらされます。このため、通常では起こらないトラブルに見舞われることもあります。

妊娠中に見舞われることがあるリスク

たとえば、妊娠高血圧症候群。もともと高血圧である、家族に高血圧の人がいるなどで発症しやすいことが知られていますが、ほかにも高齢出産である、双子など多胎の妊娠である、初めての妊娠などでもかかるリスクがあります。重症化するとママだけでなく赤ちゃんの健康状態が悪くなり、入院治療が必要になることもあります。

また、妊娠22週目までは流産、妊娠22週から36週6日までは早産のリスクもあります。赤ちゃんがこれらの早い時期にママのおなかから外に出てしまうことを流産・早産といい、外に出ていないもののその危険がある状態を切迫流産・切迫早産といいます。

これらのトラブルは、体質や病気などが原因のこともありますが、日頃健康な人でもストレスや過労で起きることもあります。いずれも、状態によっては入院治療が必要になります。

妊娠中に保険に加入できる?

こうしたリスクがあるため、妊娠が判明した後に保険に入るのは、通常時に比べて不利になりやすいのです。ほとんどの保険で、申込時に行う告知で、女性に対しては「妊娠していますか?」と問われるのはこのためです。

妊娠中でも、契約できる保険もあります。保険会社によっては「妊娠27週まで」など週数を限定しているところもありますが、特に制限を設けずに申し込めるところもあります。ただし、契約時点で妊娠に何らかのトラブルを抱えていると契約できないこともあります。

契約できる場合でも、『特定部位の不担保』という条件がつくケースがほとんどです。これは、妊娠中に保険に契約した後に帝王切開や切迫早産などで手術や入院をした場合には、入院給付金や手術給付金が下りないという条件です。「特定部位」はこの場合は子宮やその周辺部位に指定されることが多いです。

ただし「特定部位の不担保」という条件が付いても、保険会社が指定した特定部位以外が原因の入院・手術については、通常通りカバーされます。

帝王切開での出産は約5人にひとり! 出産に関わるリスク

妊娠だけでなく、出産もママと赤ちゃんにとっては命がけのことです。しかし日本など医療水準の高い国では出産によって死に至るリスクは極めて低いものです。

とはいえ、ママと赤ちゃんの命を守るために手術が行われることは珍しくありません。厚生労働省の調査※1によると、日本での帝王切開出術による出産は、1カ月で分娩件数約7万7千件のうち約1万6千件(平成29年9月)で2割ほど(一般病院と一般診療所を合わせて)を占めています。妊婦さんの約5人に1人が、帝王切開出術で出産していることになります。

実は、日本での帝王切開は増えています。出産件数は減少傾向であるにもかかわらず、一般病院での分娩件数に対する帝王切開出術の割合は1990年から2017年にかけて約2.5倍に増加しています。

帝王切開娩出術の割合の年次推移
帝王切開娩出術の割合の年次推移のグラフ

帝王切開娩出術の割合の年次推移のグラフ

注1:平成23年の数値は、宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏及び福島県の全域を除いた数値である。
注2:割合は、分娩件数に対する帝王切開娩手術件数の割合(%)である。

出典:厚生労働省「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(平成29年)より作成

帝王切開は、双子など多胎の妊娠や逆子など、母子ともに健康状態そのものには問題がなくても行われることがあります。ただ医療措置としては手術のひとつにあたりますし、術後は母子ともに慎重な体調のコントロールとリハビリが必要です。自然分娩に比べて入院期間やママの身体の回復に長期間を要する傾向があります。

このため、帝王切開手術は自然分娩とは違って公的な健康保険の対象になり、現役世代の人の自己負担は3割になります。また、妊娠前から加入していた生命保険・医療保険の給付の対象にもなります。

出産後には保険に加入できる?

このように、出産時にも帝王切開を中心に入院・手術のリスクを伴います。自然分娩や、妊娠出産によるトラブルに見舞われなければ、一般的には出産後まもなく保険に契約できます。

ただ、帝王切開を含め何らかのトラブルがあった場合には、産後しばらくは保険に入りづらくなります。一般的には以下のような告知事項があり、5年とされているケースが多いです。

『過去5年以内に妊娠・分娩に伴なう異常で、入院したり手術を受けたことがありますか?(帝王切開を含みます)』

しかし、産後5年以内だと必ず契約できないというわけではありません。合併症がある場合や手術の内容・程度によっては申込みできないこともありますが、産後の経過が良好なら、『特定部位の不担保』という条件つきで契約できることもあります。ここは個人のケースや契約先の保険会社の判断によります。

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産後に保険に入れないときはどうすればよい?

妊娠中や出産時のトラブルが原因で一般的な保険に入れない場合でも、そんなときこそ病気やけがへの備えをしっかりしておきたい、と考える方もいるでしょう。そんな方には、引受緩和型医療保険があります。これは持病や手術の経験がある人でも申込みしやすい保険です。

引受緩和型医療保険は告知項目が4つ程(保険商品によって項目数や内容が異なります)に簡易化されており、その項目に該当しなければ申込めます。

引受基準緩和型保険は、告知事項が緩やかな反面、保険料が一般的な医療保険に比べて割高です。

ただ、帝王切開での出産を経験した後に、病気やケガが不安なとき、あるいは次の妊娠を検討していて、その際にまた帝王切開になるのではと不安なときなどに活用することで、いざというときの保障を備えられます。

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女性の保険加入は妊娠前が有利

このように、妊娠と出産にはさまざまなリスクが伴います。そのため、保険の契約も不利になりがちです。保障を確保する観点では、妊娠前に申込むのが最も有利です。

女性には、妊娠・出産以外にも女性特有の疾病もあります。それらの多くは子宮や乳房に関わります。妊娠中・産後に、特定部位の不担保の条件つきで契約したことが原因で、子宮や乳房の病気になったときに十分な保障を受けられないケースもあるかもしれません。

入院や手術への備えは公的な健康保険、高額療養費、貯蓄でも十分可能です。加えて民間保険で備えるなら、妊娠前に契約しておくと安心でしょう。

※1 出典:厚生労働省「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(平成29年)

参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会

  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。