団体信用生命保険とは?しくみと種類をFPが解説

人生の中で大きな割合を占める支出といえば、住宅の購入です。マイホームは日常の支出に比べると桁が違いますので、FPに相談に来る人のうちほとんどの方が住宅ローンを利用して購入します。

住宅ローンを契約する際には「団体信用生命保険(団信)」をつけるのが一般的ですが、一体どのようなものでしょうか。FPが、そのしくみと種類を解説します。
※この記事は、2020年7月現在の情報をもとに執筆しています。

団体信用生命保険とは?

団体信用生命保険は、住宅ローンを契約する際に加入する保険の制度で、万が一の死亡や病気でローンを返済できなくなったときに保険金がおり、ローンの残債が弁済されるものです。略して「団信」と呼ばれます。

住宅ローンを契約したら、完済するまで期日通りに返済を続けなければなりません。
しかし、病気になり仕事を辞めざるを得なくなった、不幸にも亡くなってしまったなど、想定外の事態が起きて収入が途絶えると、月々の住宅ローン返済は難しくなってしまいます。

住宅ローンを組むときには、お金を貸す金融機関が自宅を担保にとりますので、もしも完済の目処が立たなくなると、マイホームに設定された抵当権が実行されて競売にかけられるなど、住み続けられなくなるおそれがあります。

「団体信用生命保険(以下、「団信」)」は、こういった「万が一の事態」にもマイホームに住み続けられるように、住宅ローン返済中の死亡や病気に備えて加入する保険の制度です。

一般的に、住宅ローンを申し込む際には団信の加入が条件になっています。フラット35など一部の例外を除くと、団信に加入しないとローンも組めないことがほとんどです。

団信の加入と住宅ローン

団信の加入と住宅ローン

団信の加入と住宅ローン

団信のしくみ

団信は、住宅ローンを借り入れるときに加入します。ただ一般的な生命保険とはしくみが異なり、保険に契約するのはお金を貸す金融機関です。金融機関は、住宅ローン契約者の「万が一の事態」に備え、保険会社に保険料を支払います。

そして、実際にローンの契約者に「万が一の事態」が起こったときには、保険会社はその時点での住宅ローンの残高相当額の保険金を金融機関に支払います。

その結果、住宅ローンが完済されます。すると、ローンの契約者がその後は返済をしなくても、残された家族は安心してマイホームに住み続けることができる仕組みです。

団信の保険料は誰がいつ払う?

しくみ上、団信の保険料は金融機関が保険会社に支払います。しかし住宅ローンを借りている人が全くその負担をしないわけではありません。この保険料は実質的には、住宅ローン契約者から支払われています。

ほとんどの場合、住宅ローンの金利は団信の保険料相当のコストをふまえて適用金利が設定されています。また、保障が充実した団信の場合には、金利が上乗せされます。上乗せされる場合には、金融機関や団体信用生命保険の保障内容により、2020年3月現在は年0.2%~0.3%程度を上乗せするところが多いです。

団体信用生命保険の種類

団信の基本的なしくみは上述の通りですが、細かな保障内容は、住宅ローンを取り扱っている金融機関によって異なる点があります。ここからは、団体信用生命保険の主な種類をご紹介します。

団体信用生命保険(団信)

基本的な団信です。住宅ローンの契約者が亡くなった、または所定の高度障害状態になった、余命6カ月以内と診断された場合に住宅ローン相当額の保険金がおりて、金融機関に支払われます。その結果、住宅ローンの残高は0円になります。

多くの住宅ローンでは、基本的な団信の保険料は金融機関が負担しています。その相応のコストは適用金利に反映されており、別途で保険料を支払ったり、金利が上乗せされることは原則としてありません。

がん保障特約付き団信(がん団信)

基本的な団信の保障に、がんへの保障がプラスされた団信です。死亡時だけでなく、がんと診断された場合にも保障され、住宅ローンが弁済されます。一般的に「がん団信」ともよばれます。

いわゆる「がん特約」として、基本的な団体信用生命保険に付け加えて加入することが多いです。

保障対象となるがんの種類は、金融機関により異なります。上皮内がんは対象外や、悪性黒色腫以外の皮膚がんは対象外とするがん団信もあります。

がんへの保障がついた団信に契約する場合には、特約の保険料相当として、住宅ローンの金利に年0.15%~0.2%程度が上乗せされるのが一般的です。一部の金融機関では、死亡時には住宅ローン残高の全額が弁済されるものの、がんの場合は半額とするがん団信を扱っており、その場合には金利の上乗せがないケースもあります

ただし、住宅ローンの契約以前に、がんと診断されたことのある方は加入できないことがほとんどです。また、借り入れ後90日以内にがんと診断された場合は、一般的ながん保険と同様に保険金は支払われません。

3大疾病保障特約付き団信(3大疾病団信)

基本的な団信の保障に、3大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)への保障がプラスされた団信です。死亡時だけでなく、がんと診断されたときや急性心筋梗塞、脳卒中になって働けなくなった、麻痺が残ったなど所定の状態が続いた場合にも保障され、住宅ローンが弁済されます。

3大疾病団信に加入する場合は、特約の保険料相当として、住宅ローンの金利に年0.25%~0.3%程度が上乗せされるところが多いようです。

8大疾病保障特約付き団信(8大疾病団信)

基本的な団信の保障に、8種類の病気への保障がプラスされた団信です。

8大疾病とは、3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)に5大疾病(高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎)を加えたものです。死亡時だけでなく、これらの病気と診断され、働けない状態が所定の期間を超えて続くなどの要件を満たすと、住宅ローンが弁済されます。

また、高血圧など5つの病気については、その病気によって働けない状態が1カ月を超えて続くと12カ月間は返済額が保障され、自分で返済せずにすんだり、一般的な保険のように所定額の保険金がおりたりするものもあります。

8大疾病団信に加入する場合は、特約の保険料相当として、住宅ローンの金利に年0.3%程度が上乗せされるところが多いようです。

11大疾病保障特約付き団信(11大疾病団信)

基本的な団信の保障に、11種類の病気への保障がプラスされた団信です。

11種類の病気とは、がんと10種類の生活習慣病です。上述の8大疾病にも含まれる脳卒中や糖尿病、高血圧性疾患などのほか、大動脈瘤や上皮内新生物、皮膚がん(おもにがん団信で対象にならないもの)が含まれます。

11疾病団信では、住宅ローン返済中の死亡時だけでなく、がんと診断確定されたとき、または10種類の生活習慣病で所定の日数以上の入院をしたなど、要件を満たした場合に住宅ローンが弁済されます。

また、がんと診断確定されたときに、一般的ながん保険と同じように100万円など一時金を受け取れる保障がついているものもあります。

11疾病団信に加入する場合は、特約の保険料相当として、住宅ローンの金利に年0.3%程度が上乗せされるところが多いようです。

ワイド団体信用生命保険(ワイド団信)

団体信用生命保険に加入するには、一般的な生命保険と同じように、健康に関する告知が必要です。持病があるときや、過去の病歴によっては、加入できない場合があります。

そこで、高血圧や糖尿病などの病歴がある方でも加入できるように、告知内容が緩和されているのが「ワイド団信生命保険(ワイド団信)」です。

ワイド団信の保障内容は、基本的な団信とほぼ同じです。住宅ローンの返済中に万が一死亡したときや余命6カ月以内と判断されたときなどに、住宅ローン残高相当の保険金がおり、その後の返済が不要になるものです。

多くの金融機関では団信に加入できることを、住宅ローンの借り入れ要件としています。健康上の理由で一般的な団信に加入できないと、住宅ローンを借りることもできなくなってしまいます。そんな場合に利用できそうです。

ただし、告知内容が緩やかとはいえ、最終的には保険会社の審査で判断されますので、病歴があっても必ず加入できるものではありません。

連生団体信用生命保険(連生団信)

夫婦など、住宅ローンを2人で組むとき、どちらが亡くなった場合でも保障されるのが「連生団体信用生命保険(連生団信)」です。

最近は共働き世帯も増え、住宅ローンを夫婦2人で組んでより多くの額を借り入れるケースが珍しくありません。夫婦で住宅ローンを組む方法はいくつかありますが、例えば夫が主債務者(契約者)、妻が連帯債務者として、夫婦2人で1本の住宅ローンを契約していて、一般的な団体信用生命保険に加入していると、主債務者である夫が亡くなったときには保障されるものの、連帯債務者である妻が亡くなっても保障されません。

すると残された夫は、それまで夫婦2人で返済していた住宅ローンを1人で返済し続けなければならなくなってしまいます。

連生団信に加入することで、こういった負担を避けることができます。

保障内容は基本的な団信と同じで、住宅ローンの契約者(主債務者または連帯債務者)が万が一死亡したとき、高度障害になったときなどに、住宅ローンの残債が保険金によって弁済されます。
加入には、年0.2%程度の金利が住宅ローンの借入金利に上乗せされるのが一般的です。

なお、夫婦それぞれ1本ずつ住宅ローンを契約する場合(ペアローン)や、一方が主債務者で、一方が連帯保証人として夫婦で1本の住宅ローンを契約する場合(連帯保証型)は、連生団体信用生命保険の利用はできません。

新機構団体信用生命保険(フラット35の団信)

住宅ローンには、民間の金融機関が独自に販売するもののほか、国の出資機関である住宅金融支援機構と提携して提供するものもあります。それが「フラット35」です。全期間固定金利で、保証人をたてずに借り入れできるのが特徴です。

フラット35の住宅ローンを利用した場合にも、団信に加入できます。基本的なしくみは上述の団信とほぼ同じです。3大疾病団信や夫婦連生団信を利用することもできます。

民間の金融機関の住宅ローンと同様に、団信の保険料に相当する特約料はローンの金利に含まれています。また、3大疾病団信は年0.24%(2020年3月現在)、夫婦連生団信(「デュエット」といいます)は年0.18%の金利が上乗せされます。

なお、フラット35は民間の多くの住宅ローンと異なり、団信に加入することなく住宅ローンを借りることもできます。その場合は、借入金利から年0.2%差し引かれます。

団体信用生命保険の種類

※はみ出ている場合、横にスクロールできます。

種類 基本
保障
追加の保障 上乗せ金利
(年)
団体信用
生命保険
(団信)
なし
がん保障
特約付き団信
(がん団信)
がん 0.2%程度
3大疾病保障
特約付き団信
(3大疾病団信)
3大疾病
(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)
0.25%~

0.3%程度
8大疾病保障
特約付き団信
(8大疾病団信)
3大疾病
(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)
5大疾病
(高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎)
0.25%~

0.3%程度
11大疾病保障
特約付き団信
(11大疾病団信)
3大疾病
(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)
5大疾病
(高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎)
大動脈瘤、上皮内新生物、皮膚がん
(おもにがん団信で対象にならないもの)
0.25%~

0.3%程度
ワイド団体
信用生命保険
(ワイド団信)
0.3%程度
連生団体
信用生命保険
(連生団信)
0.2%程度

※2020年7月現在 金融機関によって保険料の設定方法が異なることがあります。

団信にどうやって入る?

団体信用生命保険の申し込みは、金融機関で住宅ローンの契約をする際に、一緒に行うことが多いです。ネット銀行などでは、インターネットで団体信用生命保険の加入手続きをできるところもあります。

団信の契約時には、住宅ローンの審査と同じように、加入時の審査があります。そのひとつが健康状態の告知です。生命保険の申し込みと同じように、告知書を記入します。また、5,000万円以上の借り入れをする際は、健康診断書の添付を求められる場合もあります。

また、住宅ローンと同様に団信にも年齢による条件が設けられていることがあり、高齢だと3大疾病団信など保障が充実した団信には加入できないことがあります。

ただ、もしも団体信用生命保険の審査が通らなかったとしても、加入条件が緩和されているワイド団信や、新機構団体信用生命保険に加入しないフラット35を利用するなどの選択肢もあります。

住宅ローン返済中の備えに、団体信用生命保険を上手く活用しましょう

住宅ローン返済中に万が一のことがあったときに備える団体信用生命保険。

もともとは死亡に備えるのがメインでしたが、いまではがんや生活習慣病など幅広いリスクに備えることもできます。低金利が続く昨今では、金融機関が差別化を図る1つの手段として、ラインナップを充実させている側面もあります。

団体信用生命保険は住宅ローンを契約するときのみ加入でき、途中から付け加えることはできませんので、ローン選びとともにじっくり検討したいですね。

住宅ローンも団体信用生命保険も一生に何度とない契約ですので、納得のいくまで比較検討してみましょう。

参考:住宅金融支援機構「フラット35」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 大川 真理子

    大川 真理子(おおかわ まりこ)

    ファイナンシャルプランナー グッドライフプランニング代表
    病院受付に勤務していた頃「診察代が結構かかる」との相談を受け、AFP/2級FP技能士を取得。医療費、株式投資、健康経営・SDGs関連銘柄についての執筆・講座・相談を得意とする。Yahoo・MSN・スマートニュース等に執筆掲載。関西出身。
  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。