がん保険は、がんの保障に特化した保険です。入院・通院・手術など、がんの治療にかかる費用をカバーします。

しかし、各社さまざまな商品を提供しているなかで、どう選べば良いか分からないと迷うことがあるのではないでしょうか。そこで、がん保険の選び方を解説します。

がん治療の状況

いざがんにかかった時、本当に役に立つがん保険を選ぶためには、がん治療の状況を知ることが大切です。近年、がん治療は技術の進化とともに変化しています。

がん治療での入院は短くなりつつある

がんの治療は近年、入院よりも通院が主流になっています※1

入院患者数と外来患者数の推移
入院患者数と外来患者数の推移

入院患者数と外来患者数の推移

出典:厚生労働省「平成29年 患者調査の状況」より筆者作成

がん治療は主に手術、薬物療法(抗がん剤治療)、放射線療法の3つを組み合わせて行いますが、このうち薬物療法と放射線療法を通院で行うケースが増えているのです。

入院治療がメインだった時代には、入院給付金を受け取れる医療保険があれば治療費の負担に対応できましたが、通院治療が多くなると、入院だけでなく通院時にかかる費用には十分に対応できないおそれがあります。

がん保険を選ぶ際には、こうしたがん治療の状況に則したものを選びましょう。

がん保険選びで注目したいおもなポイント

では具体的に、がん保険を選ぶ際にはどんなポイントに注目すればよいのでしょうか。おもに次の4つを確認してみましょう。

1.終身か定期か?

がん保険には「終身型」と「定期型」があります。終身型は文字通り一生涯保障されるのに対し、定期型は5年あるいは10年といった一定期間のみ保障されます。保険期間が終了した後にがんにかかると保障を受けられません。ただし、自動更新で80歳や90歳など一定年齢まで継続できるものがほとんどです。

また、終身型は一生涯保険料が変わりませんが、定期型は更新のたびに保険料がその時点の年齢で再計算されます。がんは種類にもよりますが年齢を重ねるほどかかる確率が高いことが多いため、がん保険も高齢での加入ほど保険料が高い傾向があります。

したがって、年齢が高くなって更新するときには、従前よりも保険料が高くなります。高齢になると公的年金など限られた収入から払うことを負担に思う人もいるようです。

ですが一方で、終身型は契約する年齢によっては、一定期間、同条件の定期型よりも保険料が割高になることがあります。というのも、定期型は契約している期間中の年齢に応じたがんのリスク(かかりやすさ)に合わせて保険料が設定されますが、終身型は契約してから亡くなるまで、つまり高齢になったときのがんのリスクを踏まえて保険料が設定されるためです。

年齢が若いうちは、定期型のがん保険に短期間で加入する場合の保険料と、終身型のがん保険に加入する場合の保険料の差が大きいかもしれません。

また、定期型は更新をしなければ保障を継続できませんから、そのタイミングで見直しやすいのはメリットでしょう。医療技術の進化に合わせてがんの治療法の選択肢が広くなれば、がん保険で備えたいニーズが変わる可能性があります。医療事情に合わせてがん保険を選び直すなら、定期保険が向いているかもしれません。

以上から、一生涯にわたってがんの保障を確保することを優先するなら終身型、年齢が若い時期の保険料を少しでも抑えたい、がん治療の医療事情や自分のニーズに合わせて定期的に保険を見直すことを優先するなら定期型から検討してはいかがでしょうか。

2.入院・通院・診断…給付金を受け取る基準はどんなとき?

もともとがん保険は、「入院1日につき5,000円」や「入院をして手術したら20万円」など、入院をすることで給付金を受け取れるものが主流でした。しかし、近年はそれほど長期な入院をせずに治療できるがんもあり、がんによる入院日数は平均で約16日です※1

その代わりに、がんの治療は通院が中心になってきています。そこでがん保険には、入院だけではなく通院で治療したときに給付を受け取れるものがあります。商品によって通院給付金を受け取れる条件が異なり、「入院後の通院治療に限る」、「がんの治療を目的とした手術・抗がん剤治療・放射線治療のための通院に限る」など、入院を前提としたものが多いようです。この場合、入院をせず通院治療だけの場合には給付金を受け取れません。

また、通院給付金を受け取れる日数にも制限が設けられている場合があります。「退院後180日以内なら、1回の入院の通院につき30日」や「退院後365日以内なら無制限」などとされているものが多いようです。

がん治療は手術して終わりではありません。多くの場合が手術後も通院治療を必要とし、再発や転移となれば数年間続くこともまれではありません。通院給付金がどんな条件で支払われるのかはぜひ確認しましょう。

ほかに、入院や通院日数に関わらずがんと診断されたら所定の金額を受け取れる「診断給付金」をメインの保障やオプションで付けられるがん保険があります。

3.診断給付金など、一時金を受け取れるのはどんなとき?

診断給付金は、がんと診断された時点でまとまった金額を受け取れます。入院給付金の100倍(日額5,000円の場合、診断給付金は50万円)などと設定されるものもあれば、保険を契約する際に100万円、200万円などと金額を設定できるものもあります。

がんの治療には多くのお金がかかります。入院・手術にかかる費用の他にも、通院治療費や交通費、あるいは仕事を休むことで収入が減る人もいるかもしれません。診断給付金は、入院だけでなく、こうした諸費用をカバーすることができます。なにより、まとまったお金を得られることで、がん治療への金銭的な不安を和らげるものです。「費用のことは心配しなくていい」と安心感を持って治療に臨めるのは心強いですね。

診断給付金をつける際には、何回受け取れるか?もチェックしましょう。複数回受け取れれば、がんの再発や転移にも備えることができますね。

ただし複数回受け取れる場合にも、2回目以降は「2年に1回まで」や「1年に1回受け取れるが、通算5回まで」など、商品によって条件が異なります。

4.給付金は定額払いタイプか実損払いタイプか?

がん保険は、入院した日数や通院日数に応じて1日5,000円や10,000円などの給付金を受け取れる「日額払い」タイプが一般的です。

これに対して一部の保険会社のがん保険には、実際に治療にかかった金額を受け取る「実損払い」のタイプがあります。健康保険が適用される治療なら3割の自己負担分を、健康保険が適用されない治療費は全額が、がん保険から給付されます。
なかには、差額ベッド代や親族の付き添い費用、セカンドオピニオン費用なども実費として保障するがん保険もあります。

ただし、実損払いのタイプは基本的に定期型のがん保険です。一定期間のみ保障されるため終身で保障を確保できないこと、更新のたびに保険料が高くなることは要注意です。また、実損払いのがん保険は原則として治療に関わる費用は保障されますが、がん治療に伴う収入減は保障されません。

日額払いのタイプなら、給付金日額を高く設定していたり、入院日数が長期間に及んだりすると受け取る給付金の総額が高額になることがあります。受け取った給付金の使い道は自由ですので、治療費ではなく生活費にあてても構いません。

たとえば、日額10,000円受け取れるがん保険に入っていて、30日間入院した場合、がん保険からは入院給付金が30万円給付されます。入院中に実際に自己負担した費用が22万円なら差額の8万円が残りますが、これを生活費の補填にあててもよいわけです。これに対して、実損払いのがん保険では実際に自己負担した22万円のみが給付されるので、がん治療による収入減に対応するのは難しいかもしれません。

さらにチェックするならこだわりポイントも要確認

より細かな条件から自分に合ったがん保険を選ぶなら、以下の3点も確認しましょう。

1.先進医療特約は必要?

がん保険のなかには、オプションで先進医療特約をつけられるものがあります。先進医療とは厚生労働省が認める先進的な医療技術のことで、2019年6月現在約90種類あります※2

先進医療にはさまざまな病気やケガの治療技術が含まれ、技術料は2万円以下のものから300万円以上のものまであります。先進医療は公的保険診療の対象として適正かどうかを評価中の技術ですので、これらの技術料は全額自己負担することになっています。

がん保険の先進医療特約は、これらの技術料の実費を、先進医療給付金として受け取れるものです。がん治療の選択肢を広げるなら、先進医療特約があると安心でしょう。

ただ、先進医療として治療を実施している医療機関は厚生労働省に認定された病院などに限られており、先進医療を適応できるがんの部位や状態には細かい条件があります。がん治療全体のなかで実際に先進医療技術を受けるケースはそれほど多くはありません。がん保険の先進医療特約を検討するときは、こうした現状も踏まえておきましょう。

2.上皮内がんへの保障はある?

一口にがんと言っても、がんには「悪性新生物」と「上皮内新生物」の2種類があります。上皮内新生物は、がん細胞が臓器の表面の上皮内にとどまっている状態のがんのことです。

がん保険の多くは悪性新生物も上皮内新生物も保障の対象ですが、診断給付金や手術給付金については、上皮内新生物の場合は給付金額が少なく設定されている商品があります。

3.支払い条件は?免責期間と診断給付金

がん保険に加入する際は、いつ、どんな時に受け取れるか、支払い条件もチェックしましょう。特に気をつけたいのが、免責期間と診断給付金です。

がん保険は、加入してから90日間は「免責期間(待ち期間、待機期間)」といって、がんと診断されても給付金が支払われません。また、保険の契約が無効になってしまいます。

一部には免責期間を設けないがん保険もあるようですが、保障内容が限定的な傾向があります。

また診断給付金は、がんと診断された初回のみ受け取れるか、再発時など複数回受け取れるかを確認しましょう。また、受け取れるのが「がんの治療を目的として入院したとき」に限られるなど、条件が付いていることもあります。

商品によって支払い条件が少しずつ異なることがあります。すでに加入しているがん保険や検討中のがん保険の支払い条件をよく確認して、どんなときに受け取れるかを十分に理解しておきましょう。

がんになったらいつ、どんなときに給付金を受け取りたいかによって検討を

このようにがん保険は、保障を受けられる治療の種類や時期、受け取り方などさまざまな種類があります。

いつまで保障を続けるか、将来にどのように見直したいか、いざがんになったらどんな治療に対応したいか、どんな負担を軽減したいかなどに応じて、自分に合ったがん保険を選びたいですね。

※1 出典:厚生労働省「平成29年 患者調査の状況」
※2 出典:厚生労働省「当該技術を実施可能とする医療機関の要件一覧及び先進医療を実施している医療機関の一覧等について」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。