新型コロナウイルスで会社員の休業補償はどうなる?子どもの休校や業務休止などケース別にFPが解説

感染拡大の終息に向け、私たちの生活のさまざまな面で対策が講じられている新型コロナウイルス感染症。2020年3月の緊急事態宣言以降、企業や学校の休業が相次ぎ、思いがけず仕事を休んだ、仕事のしかたを変えることを余儀なくされたなど、影響は広範囲に及んでいます。新型コロナウイルスに感染した、または予防措置のためにやむを得ず仕事を休んだら、収入が下がってしまうことを不安に感じている人が少なくないのではないでしょうか。

そこで、新型コロナウイルスの影響で会社員が仕事を休んだ場合に受けられる給付制度をお伝えします。

※この記事は2020年4月2日現在の情報を元に執筆しています

※【5/18】情報更新に伴い記事の一部を追記・改編しました

子どもの休校で仕事を休んだ場合

新型コロナウイルス感染の拡大防止のため、3月から日本全国の小中高校が臨時休校になりました。その影響で、特に小学生の親などでは育児のために会社に行けず、収入が下がってしまう懸念があります。

そこで急遽、こうした保護者の収入を補てんするための助成金が整備されました。

正式には「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金※1というもので、臨時休校によって小学生などの子どもの育児をするために仕事を休んだ人の収入が大幅に下がらないように補てんするものです。

助成金は企業が申請して受取る(5/18更新)

ただし、働いている会社員が自身で申請、お金を受け取るものではありません。この助成金は企業が申請して、国から企業に給付されるものです。会社が、臨時休校のため出勤できない人のために、通常の年次有給休暇とは別に取れる特別有給休暇制度を整備すると、休暇を取った従業員1人につき1日あたり、通常のお給料の日割り相当額8,330円を上限に助成されます。

対象になるのは、(1)または(2)のいずれかが理由で保護者(親、祖父母、親族など)が仕事を休んだときに、会社が特別有給休暇を与えた場合です。
(1)新型コロナウイルス感染症のために臨時休校・休業をした小学校、幼稚園、保育所、認定こども園、認可外保育施設、家庭的保育事業、放課後児童クラブ(いわゆる学童保育)、放課後等デイサービスなどに通う子どもがいる
(2)これらに通っている子どもが新型コロナウイルスに感染した・風邪症状などがあって新型コロナウイルスに感染したおそれがあった

本人の年次有給休暇があるかどうかにかかわらず、2020年2月27日から6月30日までの間に新型コロナウイルスによって有給を取得した場合に助成されます(2020年5月18日現在)。

制度の整備は会社が行いますが、この制度を利用すれば、お給料を受取りながら休むことができます。この制度で特別有給を取得できる会社員は正社員だけでなく、アルバイトやパートなど、申請日時点で1日以上勤務している労働者すべてです。

企業が、厚生労働省・労働局の助成の窓口に申請をする期間は2020年9月30日までです。休んだ時点では年次有給休暇や欠勤の扱いになっていても、事後手続きでこの制度の特別有給休暇に振り替えることもできます。

新型コロナウイルス感染症による臨時休校や、子どもが感染した、感染の疑いがあったなどで休んだ場合には、この制度の対象になるか、勤務先に確認してみると安心かもしれません。

会社の事業縮小で仕事を休んだ場合

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた会社の都合で、仕事を休むケースもあるでしょう。残念ながら、臨時休校によって学校給食がキャンセルされたほか、各地でイベントや外出の自粛が行われたなどの結果、会社がやむを得ず事業を一時的に縮小・休業し、従業員に仕事を休ませるケースが相次いでいるようです。

会社から従業員へ「休業手当」を支給

会社の都合で仕事を休んだ場合には、会社は従業員に、平均賃金の60%以上の「休業手当」を支払わなければならないことになっています。ここには、正社員のほかにパート、アルバイト、派遣社員、契約社員も含まれます。

休業手当は基本的に、会社都合で休まざるを得なくなった場合に支給されるものです。法律上、災害など不可抗力で会社が休業したときには、会社には支給する義務はありません。

手当支給をした企業には国から助成金が

しかし、法的な義務がなくても従業員に休業手当を支払った場合には、会社は国の「雇用調整助成金」という助成金を受け取ることができます。

また休業手当を支給する場合でも、平均賃金の60%を超えて支給すると国の「雇用調整助成金」※2の対象になります。助成されるのは労働者1人1日あたり上限8,330円、1年間に100日までで、大企業なら支給した金額の1/2、中小企業は2/3が助成されます。

新型コロナに関して助成金が拡大(5/18更新)

さらに今回の新型コロナウイルス感染症に関しては3月から特例が設けられ、助成を受けられる要件が緩和されています。休業の初日が2020年1月24日から7月23日までの間の場合で、所定の要件を満たす場合には、支給した休業手当への国からの補助が最大10/10になりました。

この「雇用調整助成金」を申請できるのは、新型コロナウイルスによって経済的な影響を受けるすべての企業です。業種や、どのような影響を受けたかの詳細は問われません。厚生労働省※2-2によるとたとえば、次のようなケースが該当します。

  • 観光客のキャンセルが相次ぎ、これに伴い客数が減り売上げが減少した
  • 市民活動が自粛されたことにより、客数が減り売上げが減少した
  • 行政からの営業自粛要請を受け、自主的に休業を行い、売上げが減少した

新型コロナウイルス感染症によりこれらの状況にある企業のうち、従業員を解雇しない、都道府県による休業要請や営業時間短縮の要請などに協力している、従業員に休業手当を満額払っているなどの要件を満たすと、中小企業では最大10/10の助成を受けられます(大企業では最大3/4。ただし要件が一部異なります)。

雇用調整助成金で10/10が補助される企業
  1. 中小企業
  2. 解雇などを行わず雇用を維持する
  3. 新型インフルエンザ等対策特別措置法等による都道府県の要請により、休業・営業時間短縮を求められ、協力した
  4. 以下のいずれかの手当を支払った
    • 休業した従業員に100%の休業手当を支払った
    • 上限額(8,330円)以上の休業手当を支払った
      (教育訓練を行った場合も同様)

出典:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」

つまり、新型コロナウイルス感染症によって従業員を雇い止めなどしない中小企業は、従業員に休業手当を給付したらその全額が国から助成されるのです※2-2

勤務先がこうした制度を取り入れれば、会社員の人が新型コロナウイルスの影響でやむなく仕事を休んでも、充分な休業手当が受け取れるかもしれません。

自分が新型コロナにかかり仕事を休んだ場合

では、もしも会社員の人が新型コロナウイルス感染症にかかってしまったら、どのような経済的な給付があるのでしょうか? 感染して休むときの状況により、受けられる給付が異なるようです。

健康保険から「傷病手当」が支給

もし、新型コロナウイルス感染症にかかったら、特定の医療機関で治療を受けることになっています。また所定の期間は隔離措置が取られますから、仕事を休むことになります。

通常、会社員の人が病気の治療のために仕事を4日以上連続して休んだ場合には、4日目からは健康保険から「傷病手当金」を受け取れます。受け取れる金額は標準報酬月額といって、おおよその月給を日割りした額の2/3相当です。新型コロナウイルスに感染した場合も、この対象になります※3

また、新型コロナウイルスに感染して症状が出た場合のみならず、自覚症状がないものの検査の結果陽性だった場合、陽性と判明する前に咳や発熱の症状があって自宅で休んでいた場合も、傷病手当金の対象になります。
感染の疑いのある症状が出て休んだものの、検査の結果陰性で、別の病気だった場合も対象です。

なお、ご自身の判断で年次有給休暇を使うこともできます。有給を使っている間はお給料を受け取ることになりますので、傷病手当金は受け取れません。また「病気休暇」の制度がある会社なら、そちらを優先することもあります。詳しくは勤務先に確認してみましょう。

自分が濃厚接触者になり仕事を休んだ場合

ただし、家族が新型コロナウイルス感染症にかかり、濃厚接触者として出勤停止になった場合や、社内で感染者が出たために会社全体が休業した場合には、傷病手当金は受け取れません。傷病手当金は自分が病気で休んだときが対象のためです。

そのかわりに、会社の休業手当の対象になる可能性があります。ほかにもたとえば「発熱が出たら出勤停止」のように、発熱しているかどうかは自己判断で行うものの、会社が基準を設けて出勤停止の指示を出すような場合には、法的には「休業手当」を受け取れることになっています。

なおこのようなケースで、会社側が通常の年次有給休暇を取るように従業員に指示することはできないことになっています※4

新型コロナウイルスで仕事を休んだら、勤務先に確認を

新型コロナウイルスはさまざまな形で社会経済に影響を与えています。ご自身が感染するリスクはもちろん、会社が休業してしまう、仕事に行けないなどで収入が下がってしまうおそれもあります。
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今後、さらなる経済支援策が設けられる可能性もありますが、まずは現状で受けられる給付を知っておくと、先行きへの不安を抑えられるかもしれません。

※この記事は4月2日現在の情報をもとに執筆しています。最新の情報や個別具体的な取り扱いについて詳しくは、勤務先や加入している健康保険などにご確認ください。

※【5/18】情報更新に伴い記事の一部を追記・改編しました。

※1 出典:厚生労働省「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設します」
※2 出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ雇用調整助成金の特例を追加実施します」
※2-2 出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の拡大」
※3 出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について」
※4 出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。