生命保険料控除で税金が安くなる?年末調整・確定申告に必要な控除のしくみと手続きをFPがまとめて解説

生命保険に入っている人は、年末調整や確定申告のときに書類を提出すると税金が安くなるときいたことがあるのではないでしょうか。生命保険の書類を提出したことがある人もいるでしょう。

でも、保険をいくらかけていると具体的にどれくらい税金が安くなるのかはわかりづらいと感じるかもしれません。

そこで、生命保険料控除のしくみを知っておきましょう。

生命保険料控除とは?

生命保険料控除とは、所得税と住民税の制度です。生命保険の保険料を支払うと、その年の分の税の計算上で、軽減を受けられるものです。

生命保険料を払った年の所得が軽減される

軽減されるのは、生命保険の保険料を支払った年の「所得」です。たとえば2020年に支払った保険料は、2020年分の所得税を計算するときの生命保険料控除に含めることができます。

軽減は、支払った保険料の金額がそのまま税額で軽減されるのではありません。「所得控除」といって、税を計算するもとになる「所得」から差し引きます。

本来、所得税や住民税(うち所得割部分)は1年間の所得に税率をかけて計算しますが、生命保険を支払ったら、そのうち所定の上限額までを所得から差し引くことができます。

税額を計算するときには、所得控除を差し引いた後の所得額に税率をかけます。所得控除によって、税の対象になる所得が少なくなる分、税額も軽減されるしくみです。

控除に使える保険料には上限がある

所得税の生命保険料控除を適用できるのは、生命保険の種類3つについてそれぞれ4万円、合計で12万円までです。また住民税の生命保険料控除ではそれぞれ2.8万円ずつ、合計で7万円までです(いずれも2012年以降に契約した保険の場合)。

一般生命保険料

おもに定期保険、収入保障保険、終身保険など死亡保険の保険料があたります。これらを合わせて、年間保険料4万円(住民税は2.8万円)までを所得控除できます。ただし、災害割増特約や傷害保険など、けがを原因とした死亡を補償する保険料の部分については、生命保険料控除の対象になりません※1

介護医療保険料

介護保険と医療保険、がん保険の保険料があたります。これらを合わせて、一般の生命保険料とは別に、年間保険料4万円(住民税は2.8万円)までを所得控除できます。

個人年金保険料

個人年金保険のうち「税制適格特約」という特約が付加されている契約の保険料があたります。このうち年間4万円(住民税は2.8万円)までを所得控除できます。

外貨建てや変額(保険料の一部を運用して将来に受け取る年金とする)タイプの個人年金は、税制適格特約がついておらず、個人年金保険料の対象にはならないことがほとんどですが、「一般生命保険料控除」の対象になります。

控除の分類と上限額
控除の
分類
保険の
種類
控除できる
上限額
所得税 住民税
一般生命
保険料
定期保険
収入保障保険
終身保険 など
4万円 2.8万円
介護医療
保険料
介護保険
医療保険
がん保険 など
4万円 2.8万円
個人年金
保険料
「税制適格特約」
がついた
個人年金保険
4万円 2.8万円
合計での
控除の上限額
12万円 7万円

※住民税の所得控除の上限額は、保険種別ごとの上限は2.8万円ですが、全体での合計額は7万円です。

なお、死亡保険と医療特約がセットになっているなど、ひとつの契約で複数の種類の保険を兼ねているときには、支払った保険料を生命保険料控除の分類ごとに按分します。

死亡保険と医療特約がセットの場合には、一般生命保険料控除と介護医療保険料控除それぞれで4万円(住民税は2.8万円)ずつの枠内で控除できます。細かな按分は、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」という書類で確認できます。

また、かんぽ生命や、こくみん共済などの共済についても、基本的には民間の保険会社と同じように生命保険料控除の対象になります。
ただし、少額短期保険会社で契約したミニ保険(保険期間が1年~2年、保険金額が1000万円以下などのもの)は、生命保険料控除の対象外です※2

生命保険料控除で軽減される税額

所得税や住民税の計算上で実際に所得控除できる金額は、1年間に支払った保険料の金額によって異なります。たとえば、1年間で支払った保険料が、3万円だったら、所得税では2万5000円、住民税では2万1千円を所得控除できることになります。

所得税の控除される額
年間支払
保険料
控除される
金額
20,000円以下 支払保険料全額
20,000円超
40,000円以下
(支払保険料×1/2)+
10,000円
40,000円超
80,000円以下
(支払保険料×1/4)+
20,000円
80,000円超 40,000円

出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

住民税の控除される額
年間支払
保険料
控除される
金額
12,000円以下 支払保険料全額
12,000円超
32,000円以下
(支払保険料×1/2)+
6,000円
32,000円超
56,000円以下
(支払保険料×1/4)+
14,000円
56,000円超 一律28,000円

出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

実際にいくら税金が安くなるかは所得によって変わる

上記は生命保険料控除で所得控除をできる金額ですが、実際に税額はどれくらい安くなるのでしょうか?これは、その年の所得、および所得に応じた所得税率によります。

所得は、給与などの収入から所定の控除額を差し引いた後の金額です。ここでいう控除額は、年収や他の条件によって異なるため一概にいえませんが、原則的には年収が高いほど所得も高くなります。また、所得が高いほど所得税の税率も高くなっています。

かりに所得税率が20%の人が、生命保険料を年間12万円支払ったら、課税される所得から12万円を差し引いてから所得税率20%をかけて税額を計算しますので、12万円×20%=2.4万円分、税が軽減されることになります。

昔の契約は控除される額が異なる

生命保険に契約したのが2011年12月末までの場合には、生命保険料控除を適用できる金額が異なります。

現在は「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つに分類されますが、2011年以前の契約については「一般の生命保険料」と「個人年金保険料」の2つに分類され、それぞれについて年間5万円(住民税は3.5万円)まで、最大10万円(住民税は7万円)を所得控除できます。

所得税の控除される額
年間支払
保険料
控除される
金額
25,000円以下 支払保険料等の全額
25,000円超
50,000円以下
(支払保険料等×1/2)+
12,500円
50,000円超
100,000円以下
(支払保険料等×1/4)+
25,000円
100,000円超 一律50,000円

出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

住民税の控除される額
年間支払
保険料
控除される
金額
15,000円以下 支払保険料全額
15,000円超
40,000円以下
(支払保険料×1/2)+
7,500円
40,000円超
70,000円以下
(支払保険料×1/4)+
175,000円
70,000円超 一律35,000円

出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

保険に契約したのがいつだったかわからないときには、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を確認してみましょう。「新制度」と書かれていれば現在の控除枠最大12万円、「旧制度」と書かれていれば最大10万円を適用できます。

「新制度」と「旧制度」の両方の保険に契約している場合には、旧契約で払っている保険料の額によって控除される額が異なります。

生命保険料控除の説明の図

生命保険料控除の説明の図

生命保険料控除の説明の図

出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

生命保険料控除の手続き方法

所得税や住民税で生命保険料控除を受けるためには、年末調整または確定申告での手続きが必要です。

会社員・公務員は年末調整で手続き

会社員や公務員で、勤務先で年末調整を受ける人は、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を勤務先に提出します。

生命保険料控除証明書は、毎年10月頃になると、契約先の保険会社から自宅宛に郵送されます(契約した時期や保険会社によって異なることがあります)。圧着式のはがきで届くことが多いです。ほかに、年に1回届く「ご契約内容のお知らせ」のような書式で、封書で届くところもあります。

勤務先では11月頃になると年末調整の書類が配布され、生命保険料控除証明書を一緒に提出するように案内されます。提出する控除証明書は原本が必要ですので、なくさないように気をつけましょう。

自営業・フリーランスは確定申告で手続き

自営業やフリーランスの人は、確定申告が必要です。確定申告書には、年間に支払った生命保険料の金額や、所得控除額などを記載する欄があります。
保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書に、記入すべき金額が記載されていますので、その金額を記入しながら所得税の計算をします。

複数の生命保険に契約している場合には、それらの保険料の合計額を記入します。

国税庁のサイトの確定申告書作成ページで申告書を作成する、または電子申告e-Taxを利用する場合には、支払った保険料を入力すると、生命保険料控除の金額を自動的に算出、表示してくれます※3

確定申告では所得税について申告・納税しますが、住民税は所得税での申告内容をもとに、自治体が課税額を計算、通知してくれます。所得税の確定申告をしておけば、住民税について別途の手続きは不要です。

家族の保険料も保険料控除にまとめられる

生命保険料控除を受けられるのは、その年に自分が負担した生命保険の保険料です。自分のために契約した保険だけでなく、家族の保険についても、保険料を負担していれば生命保険料控除に含めることができます※4

このとき、保険料を負担したことがわかれば、保険の名義は家族のものであってもかまいません。たとえば、妻名義の保険の保険料を夫が支払っていれば、夫の所得税での生命保険料控除に、妻名義の保険料を合算できます。

生命保険に入ったら、年末調整・確定申告を忘れずに

生命保険は、一度契約したら長期間にわたって保険料を払い続けていくことが多いもの。総額にすると大きな金額になりますから、少しでも負担を軽減できると嬉しいですよね。

税の控除を上手に活用できるよう、生命保険料控除証明書が送られてきたら、忘れずに年末調整・確定申告の際に提出しましょう。

※わかりやすい表現とするため、税法上の正式名称等を省略している箇所があります。

※この記事は2020年1月時点の税制、法令をもとに執筆しています。随時内容の更新をしておりますが、最新の情報ではないことがあります。

※1 出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
※2 出典:国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」
※3 出典:国税庁「確定申告」
※4 出典:国税庁「妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。