会社が社員に支払う給料の総額が「額面」です。サラリーマンなどの給与所得者は、額面から控除という名目でさまざまなものが差し引かれて、「手取額」として支給されることになります。控除項目には、税金などのほか各種の保険料なども含まれています。老後やいざというときのためになるものですから、日頃からそれらのしくみを理解しておくことが大切です。

ここでは、控除に関わる各項目について詳しく説明していきます。

給与明細で控除されるのは大きくわけて社会保険料と税金

給料から控除されるのは、おもに「社会保険料」と「税金」があります。社会保険料は、健康保険組合におさめる健康保険料や厚生年金保険料など、税金は、国に納める所得税やお住まいの自治体におさめる住民税があります。

社会保険料

社会保険料には、「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」が含まれます。給与明細上の「社会保険料合計額」は、これらを合計した金額が記載されています。
以下、社会保険料に含まれる項目をひとつずつ解説します。

病気やケガ、休職の保障を受けるための「健康保険料」

健康保険とは、従業員が病気やけがで医療機関にかかったとき、治療や投薬にかかる医療費の負担を軽くする保険です。また、病気やけがによって休業したり(傷病手当金)、出産をしたり(出産育児一時金)した際には給付金が支給されるしくみもあります。

健康保険には会社や職業によって組合健康保険、協会けんぽ、国民健康保険の3種類があります。

保険料は、「標準報酬月額」に保険料率をかけて算出します。「標準報酬月額」とは給与の平均月額のことで、年に1回、4、5、6月に受け取った報酬の平均額により決定します。

保険料率は、保険の種類や保険者(会社の健康保険組合、市区町村など)によって異なります。一般的に大企業の会社員が加入する組合健康保険では、それぞれの健康保険組合が定めた料率を適用します。

中小企業の従業員が加入する協会けんぽの保険料率は都道府県によって異なり、全国平均は約10%(平成31年度※1)です。

組合健康保険と協会けんぽに加入している場合、保険料は会社と従業員が半分ずつ負担します。給与明細では、このうち従業員が負担する分が控除されています。ただし一部の組合健康保険では負担割合が異なるところもあるようです。詳しくは加入している健康保険の保険者に確認しましょう。

国民健康保険では、お住まいの市区町村が定めた料率を使用し、保険料は全額が自己負担です。

40歳から天引きが始まる「介護保険料」

介護保険とは、寝たきりや認知症などで自力での生活が困難になったときに、介護サービスを受けることができる保険です。40歳から64歳までの従業員が介護保険料をおさめます。

保険料は健康保険と同様、標準報酬月額に保険料率をかけて計算します。料率は、1.73%(協会けんぽの場合。平成31年度※2)で、会社と従業員が半分ずつ負担します。給与明細では、このうち従業員負担分が控除されています。

老後の公的年金などにあてる「厚生年金保険料」

厚生年金保険とは、定年退職後の公的年金(老齢年金)や、現役中に障害を負ったときの障害年金、死亡したときの遺族年金を受給するための保険です。国民年金の上乗せ部分にあたり、会社員・公務員が加入します。基礎部分(国民年金部分)と上乗せ部分の保険料をまとめて、「厚生年金保険料」として納めます。

保険料は健康保険と同様、標準報酬月額に保険料率をかけて計算します。料率は18.300%(平成29年9月1日分~適用)※3で、会社と従業員が半分ずつ負担します。給与明細では、このうち従業員負担分が控除されています。

失業保険などのための「雇用保険料」

雇用保険とは、従業員が失業した時に次の職に就くまでの生活資金を受け取ったり(失業保険)、ハローワークで職探しの支援を受けたりするための保険です。

また、在職中も育児休業をするときの育休手当(育児休業給付金)や、キャリアアップのために資格試験を受けたり、講座を受講したりしたときの教育訓練給付金を受け取ることができます。

雇用保険には、31日以上の雇用見込みがあり、1週間当たりの所定労働時間が20時間以上である従業員は必ず加入します。

保険料は、給与明細の総支給額など、労働の対価とみなされる報酬に雇用保険料率0.9%を掛けて算出します。このうち会社が0.6%、従業員が0.3%負担(一般事業所の場合)し※4、給与明細では、このうち従業員負担分が控除されています。

税金

お給料収入の一部には税金がかかります。税金がかかる部分は給与明細上で「課税対象額」と記載されており、この金額に対して所得税と住民税がかかります。

「課税対象額」とは、支給項目欄にある「課税支給額(課税合計)」から控除項目にある「社会保険料合計額」を引いたものです。つまり、社会保険料は会社からいったん支給されますが、そこから従業員が負担する金額を天引きするので、天引き部分には税金をかけないようになっています。

以下、天引きされる所得税と住民税について詳しく解説します。

確定申告の代わりに会社が納税してくれる「所得税」

所得税とは、所得の額に応じて国に納める税金です。所得税の正式な確定額は、年末調整や確定申告によって決定しますが、会社員・公務員の場合は毎月の給与をもとに会社が概算の税額を算出します。そして、概算額を毎月の給与から天引きして、会社が納税してくれます。これが「源泉徴収制度」です。

所得税の税率は所得の額に応じて5%~45%で定められます。毎月の給与からの源泉徴収では、給与明細上の「課税対象額」に応じて、概算の税額が天引きされます※5

ただし、住宅ローンを組んでいるときや生命保険、地震保険の保険料を支払ったときなどは、税が軽減されて納めるべき税額が変わることがあります。これを調整するのが年末調整です。年末調整では、毎月天引きされた税額の合計と、1年分の所得から確定する税額との差額を精算するもので、天引きだけで足りない分は年末に追加で天引き、引かれ過ぎた分があれば戻ってきます。

住んでいる自治体に払う「住民税」

住民税は、毎年1月1日時点に住民票がある住所地の市区町村に納める税金です。会社員・公務員の場合は、所得税と同じように毎月の給与からお勤め先が天引き・納税します。

住民税額は、前年1月1日から12月31日までの給与総額をもとに算出されます。前年の収入がなければ、今年の住民税は徴収されません。

税率はお住まいの市区町村により異なります。

財形貯蓄や社内積立、団体保険の天引きがある場合も

財形貯蓄や社内預金の積立をしている、会社の団体扱いで生命保険などに加入している場合は、給与明細の控除欄で、その金額が差し引かれています。

お給料の手取りは少なく見えますが、その分積み立てていたり、保険に充てていたりする部分です。

給与明細は確定申告や住宅ローンの借入れ時に必要

給料日に受取る給与明細の中身について、普段は入金される金額しか意識しない方も多いかもしれません。しかし、給与明細には、日々の仕事の成果から、将来訪れるリタイア後の暮らしに影響する年金についてまで、人生の様々なお金に関する情報が満載されています。

特に社会保険料に関しては、年金の加入記録になることもあります。給与明細をなくさずに保管しておくとよいですね。

また、医療費を一定額以上支払ったときや初めて住宅ローンを借り入れた年に、確定申告で税の軽減を受けようとするときには、年末調整の時に会社から受け取る源泉徴収票が必要ですが、給与明細で一部代用できることもあります。

あるいは、賃貸の部屋を借りるときやマイホームを購入してローンを組むときに、審査のために給与明細を提出することもあります。

毎日働いて稼いだお給料の内容を理解しておけば、毎年の税金や将来の年金受給など、さまざまなライフイベントでうまく生かせるでしょう。

※ここで説明している社会保険や税のしくみ、料率についてはすべて平成31年4月1日現在のものです。また、加入する保険の種類やお住まいの市区町村により上記と異なる場合があります。個別のケースについてはご自身の勤務先や加入されている保険者等にご確認ください。

※1 出典:協会けんぽ「平成31年度都道府県単位保険料率」
※2 出典:協会けんぽ「協会けんぽの介護保険料率について」
※3 出典:日本年金機構「厚生年金保険料額表」
※4 出典:厚生労働省「平成31年度の雇用保険料率」
※5 出典:国税庁「平成31年(2019年)版 源泉徴収のしかた(平成30年12月)」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。