FPが解説:結婚したら生命保険は必要?保険の考え方と見直し方~共働きの場合~

結婚すれば、夫婦2人での新しい生活が始まります。共働きのご夫婦なら、結婚後も独身時代とさほどかわらずにそれぞれに収入があり、生活のお金を出し合って暮らすケースが多いものですが、生活習慣やお金の使い方や管理のしかたは変わるところが少なくありません。すべてを自分の自由にできた独身の頃と同じようにはいかず、2人で話し合ったり考え直したりする必要が出てくるでしょう。

また、結婚後は何かあったときへのお金や保険の備え方も、独身時代とは考え方が変わるはずです。

ここでは、結婚後も夫婦ともに仕事をしている共働き夫婦(お互いに扶養に入らない)の前提で、結婚生活を送るうえでのお金のリスクや、それに対する対策、保険について考えていきます。

共働き夫婦の結婚後のお金の管理はどうする?

夫婦ともに、結婚を機に働き方を大きく変えることがない場合は、独身時代に夫婦それぞれで得ていた収入が、結婚後もそのまま入ってくるでしょう。

一方、支出の面では、結婚前に夫婦それぞれが一人暮らしをしていたなら、単身世帯2世帯分から2人で住む1世帯分になるわけで、住居費や水道光熱費などを単純に比較すれば独身時代よりも割安になることが多くなります。

しかし、独身時代の気分のまま、夫婦それぞれがお金を自己管理していると、世帯全体としてのお金の流れが見えにくくなりがちです。ダブルインカムなのでゆとりがあると思っていたのに、実は思いのほか支出が膨らみ、思っていたほど貯蓄できていなかったというケースも珍しくありません。

何かあったときのために夫婦二人で収支の把握を

まずは、夫婦2人分の収入と生活にかかる費用を把握して、何にいくら、そして、夫婦どちらがお金を出すかを話し合い、家計管理のしくみを一緒に作り上げましょう。

そして、長期的な将来のイメージも一度話し合っておきたいですね。今後、お子さんが生まれて家族が増えるとき、マイホームを買うとき、お互いの親の面倒をみるとき、お互いが老後を迎えたときなど、お金の収入と支出の流れも大きく変わることがあります。

また、お互いになにかあったとき支え合う準備も必要です。病気やケガをしたとき、どちらかが働けなくなったときにどうするか、突発的にお金がかかったときにどのように工面するかも相談しておきましょう。

病気・ケガでかかる費用に備えるには?

病気やケガのリスクは誰にでもあります。万が一のことがあったとき、お互いに迷惑をかけたり、経済的に過度な負担がかかるような事態を避けるためにも、入院や手術をする際に必要な医療費の自己負担分は備えておきたいものです。

公的な保障を利用する

70歳未満で会社勤めの方の場合、医療費の自己負担割合は3割です。また、多額の医療費がかかった場合は、病院や薬局の窓口で1ヵ月に支払った額が、上限額を超えていると差額を還付してもらえる「高額療養費制度」を利用することができます。

高額療養費制度の自己負担上限額は年齢や収入によって異なります。
たとえば、70歳未満で年収約370万円から770万円の方が、1カ月で100万円の医療費がかかり、このうち窓口での自己負担が3割の30万円だったときには、高額療養費制度によって最終的な自己負担額は87,430円になり、超えた部分が還付されます※1

高額療養費制度の例:
1ヶ月の医療費が100万円の場合
窓口での負担(自己負担3割) 30万円
高額療養費として支給 ▲212,570円
最終的な負担 87,430円

※70歳未満、年収370~770万円の場合

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

ご自身のケースで、高額療養費制度での自己負担上限額がいくらになるか、加入している健康保険組合などで一度確認してみましょう。

毎月の収入・貯蓄で備える

このように、病気やケガをしたときの医療費は、高額療養費制度によって一部を抑えることができます。とはいえ、自己負担額がゼロになるわけではありません。また、交通費や雑費など治療に伴う諸費用は全額が自己負担です。

そんなとき、自己負担するお金をどうするか、夫婦で一度検討してみましょう。夫婦それぞれが自分で管理しているお金から出すのか、夫婦共同の家計から出すのか? また、家計から出す場合には無理な負担にならないかなど、毎月の家計の収支を把握したうえで考えたいですね。病気やケガの期間や症状によって、かかる費用はさまざまですが、働けなくなって収入が下がるリスクへの備えと合わせて、家計の生活費の半年から1年分くらいの貯蓄があると安心です。

家計にゆとりがあり、多少の自己負担なら毎月の収入からやりくりできそう、貯蓄から取り崩してもよいと思えば、新たな備えはしなくてもよいかもしれません。

民間の医療保険で備える

一方で、家計でのやりくりは難しそう、貯蓄を取り崩したくない、想定以上に高額な治療費がかかると心配などと思ったら、万が一の備えとして民間の医療保険を検討してみるのも一つの方法です。
民間の医療保険で備える場合、すぐに新たな保険に契約するよりは、まずは夫婦それぞれが医療保険に加入しているかを確認しましょう。加入している場合は、保険証書で病気やケガをしたときに支給される給付金・保険金の額や、特約の内容を確認します。

いざというとき、高額療養費制度や貯蓄に加えて、現在加入している医療保険から受け取る給付があり、十分にカバーできそうなら安心です。

もし、すでに契約している医療保険では不十分と思ったら、見直しを検討してもよいですね。見直しの方法には、加入している医療保険に特約などを追加して保障を充実させる、新たな保険を追加で契約する、すでに契約している医療保険を解約して別の保険に入り直すなどがあります。

働けなくなった場合の収入減に備えるには?

病気やケガをしたときは、医療費だけではなく、治療のために仕事を休み、収入が下がることによる経済的な負担もありえます。

そんなときに公的な保障でどこまでカバーできるか、またやりくりが厳しくなったときには貯蓄で対応するのかなど、もしものときに備えた対応策をいくつか頭の中に置いておきましょう。特に共働き夫婦2人分の収入で世帯全体の家計を支えている場合は、それぞれが働けなくなったときのことを考えておく必要があります。

傷病手当金を利用する

会社員や公務員で、病気やケガのために4日以上働けず、お給料が出なかった・減額された場合には、加入している健康保険から「傷病手当金」が支給されます。支給される期間は最長1年6ヵ月までで、休んだ日数に対してお給料の日額の3分の2相当が支給されます。通常のお給料よりも少ないですが、病気療養中の生活を一部保障してもらえます。

パートやアルバイトの場合には、勤務日数やお給料の金額など所定の要件を満たすと勤務先の健康保険に加入し、休業したときには傷病手当金を受けることができます。

しかし、自営業などで国民健康保険に加入している場合は、傷病手当金の制度はありません。

事前に生活資金を貯金しておく

傷病手当金が支給される場合は、日割りにはなりますがお給料の3分の2相当の給付を受け取れますので、生活費の不足を補填することができます。しかし、日頃から収入のほとんどを生活費に充てて暮らしている場合には、傷病手当金だけで家計をやりくりするのは難しくなる恐れがあります。

あるいは自営業などで傷病手当金がない場合は、働けなくなれば無収入になってしまう恐れがあります。働けない期間の生活資金の調達が必要です。

このようなときに貯蓄があれば、不足する分に回すことができ、頼りになります。医療費の負担への備えと合わせて、まずは半年分から1年分の生活資金を夫婦2人で貯蓄することを目指してみましょう。

民間の就業不能保険で備える

もし、まだ十分に貯蓄が足りない、またはいざというときに貯蓄を取り崩したくないという思いが強い場合は、民間の保険で備えることもできます。

働けなくなったときに備えられる民間の保険には、「就業不能保険」や「所得補償保険」があります。保険会社・保険の種類によって保障内容に違いがありますが、病気やけがで働けなくなったときに給付金がおります。

すでに就業不能保険・所得補償保険に加入している場合は、いざ仕事を休んだときに支給される給付金の金額や条件などを確認しましょう。公的な傷病手当金や貯蓄がある場合には、それらと合わせて毎月の生活費を補てんできれば十分です。公的な傷病手当金や貯蓄がない場合には、毎月の生活費に相当する額を保険から受け取れるかをチェックしましょう。

もし、すでに契約している就業不能保険・所得補償保険では不十分と思ったら、見直しを検討してもよいですね。見直しの方法には、加入している保険の保険金額・給付金額の設定を増やす、新たな保険を追加で契約する、すでに契約している保険を解約して別の保険に入り直すなどがあります。

死亡でかかるお金に備えるには?

パートナーが亡くなった場合、残された家族がどのように生活していくかも一度は考えておきたい事柄です。共働きの場合は、残された家族が自分1人の収入で生活していくことになりますが、元の生活水準の再現がなかなか厳しいということは想像に難くありません。

また、葬儀、相続など、残された家族が行なうべき手続きで発生する費用をどうするかなども、夫婦で事前に話し合えると理想的です。

遺族年金を利用する

亡くなったときに所定の要件を満たすと、家族に遺族年金が支給されます。

自営業やフリーランスで国民年金に加入している人が亡くなったときには、基本的には18歳未満の子どもがいる場合に限り、残された配偶者(夫・妻)や子どもが「遺族基礎年金」を受給できます※2

会社員や公務員で厚生年金に加入している人が亡くなったときには、残された妻や18歳未満の子どもなどが「遺族厚生年金」を受給できます。ただし妻が亡くなった場合には、夫は55歳以上に限り受給できます。

また、厚生年金に加入していて子どもがいれば、遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方を受給できます。一方で子どもがいない場合には遺族基礎年金の対象外であるのに加え、夫が亡くなったときに30歳未満の妻については遺族厚生年金を受給できるのは5年間のみに限られるなど、受給にはさまざまな要件があります※2

民間の死亡保険で備える

公的な保障である遺族年金は、上記のように働き方や子どもの有無で受け取れる種類や金額が異なります。受け取りには要件もありますから、必ずしも残された家族の生活資金のすべてを賄えるものではありません。ですから、万が一に備えて貯蓄や生命保険があると安心です。

亡くなった時にもよりますが、その後の残された家族がずっと生活していくためのお金は高額になることがありますから、貯蓄だけで備えるのは難しいものです。その上乗せとして、民間の死亡保険で備えます。

ここで検討する死亡保険は、掛捨てタイプの「定期保険」や「収入保障保険」が中心になるでしょう。その他に、積立てタイプの終身保険を利用する方法もあります。

定期保険も収入保障保険も、残された妻または夫が公的年金を受け取り始める65歳や70歳頃までの生活費をカバーできるように保障内容や期間を考えます。

死亡保険の種類
定期保険
  • 一定期間内に死亡、高度障害状態になったとき一括で保険金を受け取れる
  • 掛捨てタイプで、途中で解約したとき解約返戻金がほとんどない場合が多い
収入保障
保険
  • 定期保険の一種
  • 保険金を、毎月などの分割形式で受け取ることができる
終身保険
  • 保障は一生涯で、保険の解約をしない限り保障が続く
  • 掛捨てではなく、途中で解約したときには解約返戻金が戻ってくることがある

準備しておきたいお金は、残された家族がどんなライフプランを希望するかによって異なりますが、共働き夫婦の場合、パートナーのために高額な死亡保険を用意する必要はあまりないケースが多いでしょう。
子どもの有無などにより受け取れる遺族年金の金額が異なりますから一概にはいえませんが、葬儀代などを想定した数百万円位の保険金がおりる死亡保険を中心に検討するのが一般的です。

ただし、パートナー間で収入に差があり、夫婦のどちらかが生活費の大半を1人で担っているような場合は、それに応じた保険金がおりるように考えましょう。

万が一への備えを検討するときには、まずは、お互いに独身時代から加入している定期保険や収入保障保険などがあるかどうか確認します。加入している場合は保険証書や保険会社から送られてくるご契約内容の確認資料等で、保険期間や保険金額などを確認してみましょう。

結婚前に加入した保険は名義や受取人の確認を

結婚を機に、現在契約している保険を見直すときには、給付金の額や特約などの保障内容に加え、「契約者」、「指定代理請求人」、「受取人」が誰になっているかもぜひチェックしましょう。

契約者の確認

契約者は、保険の名義人のことです。毎月の保険料を払うのも契約者です。結婚前から保険に契約していると、親が契約者として保険料を払ってくれているケースがあります。しかし結婚を機に自分で保険料を払うことにするなら、契約者を自分に変更する手続きが必要です。

指定代理請求人の確認

指定代理請求人とは、「被保険者(医療保険の対象として、保険が掛けられている人)」が意思表示をできないときや、医師からの余命宣告が被保険者以外にされているときなどに、被保険者の代わりに保険会社へ保険金・給付金を請求できる人のことです。

指定代理請求人が指定されていなければ、緊急時にすぐに対応できる身近な人にしておきましょう。もしすでに指定代理請求人が指定されていても、変更できます。たとえば独身の時に加入した医療保険では、指定代理請求人が親になっていることがあるかもしれません。結婚して親と離れて暮らすようになったら、夫の保険の指定代理請求人は妻に、妻の保険の指定代理請求人は夫にしておくと便利なケースが多いのではないでしょうか。

受取人の確認

受取人は、保険金や給付金を受け取る人のことです。独身時代に親などが加入した死亡保険なら、契約者の名義や受取人の指定が親になっていることがありますから、必要に応じて名義変更をします。

その他、改姓や住所変更の手続きが漏れていないかも合わせてチェックしておくとよいですね。

結婚時に夫婦でお金や備えについて話し合いを

このように、結婚したら、夫婦2人での生活や将来の家族の暮らしやもしもの事態を想定して、さまざまなお金の備えについて考えておきたいもの。まずは夫婦2人でかかる生活費を具体的に把握したうえで、お互いにもしものことがあったときの対処方法を決めておけると安心です。

また、これから続く長い結婚生活で訪れる、住まいや教育などで必要になるお金についても、計画的に準備していきましょう。

保険はいったん加入すると、固定費として毎月所定の保険料を支払い続けることになります。長期間にわたって続ける保険もあるでしょうから、本当に必要な保障か、ご自身の状況にあったものかどうか、公的な保障や貯蓄とのバランスをよく考慮して選ばれることをおすすめします。

※1 出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
※2 出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 大川 真理子

    大川 真理子(おおかわ まりこ)

    ファイナンシャルプランナー グッドライフプランニング代表
    病院受付に勤務していた頃「診察代が結構かかる」との相談を受け、AFP/2級FP技能士を取得。医療費、株式投資、健康経営・SDGs関連銘柄についての執筆・講座・相談を得意とする。Yahoo・MSN・スマートニュース等に執筆掲載。関西出身。
  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。