妊娠にかかるお金・保険は必要?

就職や結婚、住宅の購入など、長い人生のなかではいろいろな転機を迎えることがあります。女性なら妊娠・出産を経験する人もいるでしょう。

これらのライフイベントでは、それまでとは生活スタイルが大きく変わったり、まとまった支出がかかったりすることがあります。お金の変化には計画的に備えておくと安心ですよね。

赤ちゃんができたら、新しい家族を迎える喜びでいっぱいになるのではないでしょうか。それと同時に、出産までの準備が始まります。お腹の中ですくすく育つ赤ちゃんとともに、ママの身体や気持ちも出産に向けて変化していきますし、小さな命を迎えるためにかかるお金も用意しておきたいところです。

では、必要なお金はどれくらい、どんな形で用意しておくとよいのでしょうか。また、保険は必要なのでしょうか? ここでは、妊娠中にかかるお金と保険について知っておきましょう。

妊娠で必要なお金 自己負担はどれくらい?

まず、妊娠中にはどれくらいのお金がかかるのかをみてみましょう。おもに、妊婦健診や入院準備のためにお金がかかります。

妊娠確認の検査費用

妊娠をしたかどうかは、妊娠検査薬を使って判断することができます。薬局やドラッグストアで市販されている妊娠検査薬(キット)でも確認できますが、妊娠が確定したら自治体の役所に届けが必要です。その際には、あらかじめ産婦人科を受診して医師に妊娠の診断を受けてから届け出ることになっています。

産婦人科では、妊娠検査薬による判定のほか、超音波検査などを使って赤ちゃんの心拍などを確認して、妊娠確定の診断を受けます。

市販の妊娠検査薬は1回分で数百円程度、産婦人科での妊娠検査は数千円かかります。どちらも公的な保険証は使えず、全額が自己負担になります。

妊婦健診の費用

産婦人科で妊娠確定の診断を受けたら、その後は出産まで定期的に妊婦健診を受けます。

妊婦健診は、赤ちゃんの発育とママの健康状態に問題がないか、妊娠の経過をみるものです。
日本では妊娠23週までは1カ月に1回ずつ計4回、妊娠24週から35週までは2週間に1回ずつ計6回、妊娠35週から出産までは1週間に1回ずつ計4回、合計で14回受診することが奨められています。

標準的な妊婦健診の例

標準的な妊婦健診の例:表

標準的な妊婦健診の例:表

出典:厚生労働省「標準的な妊婦健診の例」

なお、妊婦健診とは別に任意で女性特有の病気を付加的に検査したり、出生前診断をしたりする場合には原則として公的な保険がきかず、補助もありません。これらは内容により、1万円程度から数十万円かかるものもあります。

体調不良時の医療費

妊娠中でも、風邪をひくなど体調不良で病院にかかった場合には、医療費の負担は原則として3割です。また、妊娠にかかわる異常で治療が必要なとき、入院するときなども3割の自己負担になります。

ただ、妊娠中には通常時とは体質が変わることがあったり、赤ちゃんへの影響を考慮する必要があったりすることから、2018年に診察料が一時的に上乗せされたことがありました。
「妊婦加算」というもので、1回の診察につき数百円の自己負担が加算されるものでしたが、2019年現在は制度が凍結されています。

母親学級・両親学級の費用

お腹の赤ちゃんとともに過ごす生活は、体を大切にしながら体調や体型の変化とも付き合っていくことになります。また赤ちゃんを迎えたら、快適に、健やかに暮らせる環境を整えてあげたいものです。

そこで各自治体や産科の病院、助産院などでは、妊婦さんや赤ちゃんを迎える両親を対象に母親学級や両親学級を行っています。

内容は実施する機関が構成しています。妊娠中の食生活や身体のケア、お産の進み方、赤ちゃんのおむつの換え方やお風呂の入れ方などをレクチャーしているところが多いです。
料金は機関によって異なり、無料のところもありますし、1回2000~3000円程度のところもあるようです。有料の場合には全額自己負担になるのが一般的です。

マタニティ用品の費用

赤ちゃんの成長とともにおなかが大きくなってくると、それまで着ていた服や下着が着られなくなってきます。身体を圧迫すると負担にもなりかねないため、マタニティ用の下着や服を買うことがあるでしょう。

ものによって料金はまちまちですが、必要なものをすべてそろえると数千円程度はかかりそうです。

妊娠で受けられる公的なお金と制度

このように、妊娠中にはさまざまなお金がかかりますが、その負担を軽減する公的な制度があります。

妊婦健診の費用補助

妊娠は病気ではないので、健診にかかる費用は公的な保険証が使えません。ただ、2019年現在は全国すべての市区町村で妊婦健診14回分以上の補助をしていますので、自己負担は抑えられます。
多くの地域では、役所に妊娠の届けを出すと、母子手帳とともに妊婦健診の受診券を受け取れます。

受診券をもって産婦人科に行くと、補助額が差し引かれた金額のみを請求されるしくみになっているのが一般的です。妊娠中には虫歯や歯周病のリスクが高まることもあるため、自治体によっては歯科健診の受診券も含めているところがあります。

妊婦健診の内容や検査項目は医療機関によって異なり、また補助対象の範囲は自治体によって異なります。ですから妊婦健診でかかる費用も、自己負担する金額も一律には決まっていません。

妊娠中の全14回のなかで、検査内容はさまざまに異なり、標準的な健診のみを行うときには自己負担ゼロで受けられることがあります。妊娠の経過や週数によっては、超音波検査などを行い、自己負担がかかることもあります。

厚生労働省※1によると、妊婦さん1人あたり平均で約10万円の補助を受けているそうです。この補助を差し引くと、妊婦健診のために自己負担する総額は数千円から数万円程度になるケースが多いでしょう。

病院受診時の医療費控除

また、補助を差し引いても妊婦健診のために自己負担した費用が多くなったときには、その年の所得税の計算で医療費控除の対象になります。

対象になるのは妊娠と診断されてから出産するまでの妊婦健診や所定の検査費用、また通院のためにかかった交通費です。

妊娠中に民間の医療保険は使える?必要?

妊娠中には、それまで健康だった人も治療が必要な異常に見舞われることがあります。たとえば妊娠高血圧症候群やたんぱく尿などは、それまでの体質とは関係なくみられることがあります。これらは妊婦健診で経過を観察しながら通院で治療するほか、重症の場合には入院が必要になることもあります。また、決してあってほしいことではありませんが、流産してしまったときにも入院して処置をすることが多いです。

上記のように、妊娠中のトラブルや体調不良で治療を受けたときには、公的な医療保険の対象として自己負担は原則3割です。この負担の軽減には、民間の医療保険を活用できることがあります。

妊娠中の入院で、民間の医療保険が使える

医療保険に加入している場合、妊娠中のトラブルや体調不良で入院をしたときには、ほかの病気・ケガによる入院と同じように給付がおります。

また、「女性疾病特約」などのオプションをつけていると、これら妊娠にかかわる異常で入院したときには給付金が上乗せされるものがあります。

医療保険は妊娠中の身体のリスクだけに特化して保障するものではありませんが、他の病気やケガと合わせて、入院時のお金に備える方法のひとつと捉えるとよいのではないでしょうか。

妊娠中に使用できる医療制度・医療保険の例

※はみ出ている場合、横にスクロールできます。

公的医療制度(健康保険、
国民健康保険など)
公的制度(自治体独自の
補助など)
民間の
医療保険
妊娠確認の
検査
× × ×
妊婦健診 × ×
体調不良時の
医療費
×
母親学級・
両親学級の費用
× ×
マタニティ用品
の費用
× ×
△:地域により一部補助や現物支給があるところもある

妊娠中は保険に入れないことも

なお、一部を除き多くの医療保険は契約するときに健康に関する告知が必要です。女性の場合、ここでは病気やケガに関することだけでなく、妊娠しているかどうかも問われます。

妊娠中には条件付きの契約になるか、保険に加入できないことがあります。条件付きで加入できる場合も妊娠初期・中期までに限られる保険会社が多く、週数が出産間近まで迫っている場合には契約が難しいようです。

また条件付きの場合には、通常の病気やケガは保障するものの、妊娠・出産にかかわるトラブルでは保障の対象外とされることがあります。

こうした取り扱いは出産後も続くことがあります。出産から間もない時期に保険に契約する場合には、その際に異常がなかったかを告知する保険が多く、帝王切開をした場合や妊娠の経過で治療を要した場合には、入院・手術の履歴として保険契約の査定で影響することがあるのです。

医療保険は特に妊娠のためだけに活用できるわけではありませんから、必ずしも妊娠をきっかけに急いで検討すべきとは言い切れません。一方で、もし妊娠・出産時のトラブルへの備えを重視するなら、このような影響を考慮して早めに検討しておくと選択肢が広がるでしょう。

いずれにしても、子どもが生まれた後や子育て中は忙しく、ご自身のお金や保険のことが後回しになることがあります。入院のリスクやかかるお金について考えるきっかけになるとよいですね。

妊娠中にかかるお金をあらかじめ知って、早めの準備を

赤ちゃんは授かりもの。いつ妊娠するかを事前に厳密に知ることは困難です。いざ小さな命が宿ったら、出産までには次々と準備すべきことが待っています。

いつ、どんなお金がかかるか、またどんなリスクがあるかをあらかじめ知って、安心して過ごしたいものですね。

※1 出典:厚生労働省「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について」

参考:厚生労働省「標準的な妊婦健診の例」
参考:厚生労働省「<参考>妊婦加算の概要」
参考:国税庁「No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。