番外編 私のガラポン不妊治療

ガラポン画像

ガラポンとは

八角形の箱を回転させ、当たり玉を引く福引き抽選器の通称。
一等の金色の玉を一発で当てることもあれば、末等の白い玉を引き続ける場合もある。
引手を一喜一憂させるが、手を回し続けなければ決して玉は出ることがない単純な仕組み。

それはまるで砂金のような

不思議な巡り合わせがありました。

都内のカフェでひとりランチをしていた時のこと。隣席にいた二人の女性たちの会話に耳が持っていかれました。
不妊治療、それも体外受精の話題だったからです。

話し手の女性は、その日の診察を終えたばかり。
聞き手の女性は、不妊治療の知識もあり、彼女の通院に初めて同伴をした様子。
しかも通院先は、私も通い続けた、ほぼ365日開院のあの病院です。

二人で医師の言葉を反芻しながら、答え合わせをするシチュエーション。

『4回連続の着床不全』
『着床後の過ごし方』
『40代のリミット』
など。

聞こえてくるテーマは、私も行きづまったことばかり。
渦中にいた時の、あの、なんともいえない感情が蘇ります。

「『ギャンブル』みたいなもの。次に向かって気持ちを切り替えるしかない」
と話し手の彼女。

あぁ、ここにも『人生のガラポン』を回し続けている女性がいる。

共感ポイントしかなく、話し掛けずにはいられませんでした。

「同じ病院にて8回目の移植で妊娠した者です。生まれた息子は今2歳」
どうかと思うような直球すぎる切り出しで、会話に合流させてもらったのです。

聞けば、当事者の女性は、40歳から不妊治療を始め現在42歳。
さらに、福井県から片道約3時間をかけて新幹線通院を続けているといいます。
日帰りして休む間もなく仕事に向かい、翌日も早朝から東京へ向かうことも度々。

経済的な負担もさることながら、心身へのストレスは相当かと。
私ならやさぐれて、夫や友人に愚痴の大放出をしているところです。
ここ東京では、不妊治療の話題が珍しくはなく、良くも悪くも『あけすけなカミングアウト』ができるのですから。

一方、そうもいかないのが彼女の事情。

地元の両親や友人へは、40代からの不妊治療を伝えることはタブー。大ごとに捉えられ、騒然となること必須。
唯一打ち明けられるのは、都内に住む医療従事者の友人で、この日は初めて診察に同伴してもらったのだといいます。

「楽観的で、落ち込む暇もないですから」
そうカラっと話してはいますが、ともすると悩みをひとりで抱え込む環境。

感情をコントロールして明るさを失わない姿に「妊娠を叶えてほしい」と願いました。

帰りの新幹線の時刻がある彼女とは、LINE交換をしてそれぞれの現実へ。

以降も、折に触れ思い出す印象的な女性でした。

それから3か月経ったある日のこと、一通のLINEがありました。

彼女からです。

何と、あの出会いの直後に臨んだ5回目の胚移植が着床したというグッドニュース。
読み進めながら、思わず「おぉっ!」とガッツポーズに。

今は、人生初の妊娠というステージに立つことができて、順調に安定期に向かっていること。
私と同じく、出産時には43歳を迎えること。

想いが伝わるメッセージに胸が熱くなりました。

人が願いを叶えること自体感動しますが、新しい命を授かるということは、また格別な輝きが宿ります。

私自身も、安定期を過ぎてから友人たちに直接妊娠報告をした時に、涙と共に祝福してもらったことを温かく思い返すのです。

「大変な時期にもらう言葉は砂金のよう」

これは、自身も体外受精を経て一児の母になった親友の言葉。

治療中、私が心の暗闇トンネルに入りそうな時は、先回りをしてセンスを感じるアドバイスをくれました。
成功例や最新の医療トピックなど、目先が変わる情報も教えてくれて、私が深刻になり過ぎないように、さりげなくガイドしてくれたものです。

今は福井で母になる準備を進めているあの女性も、これから先きっと。不妊治療のことを誰にも相談できずに悩んでいたり、遠距離通院で心が折れそうな人の気持ちを察して、的確な言葉をかける側に回ることと思えるのです。

出会いもまた、お互いにとって砂金のように貴重なもの。
目的に向かって『続けることを止めない』彼女のスタンスには、私自身も力が湧いたものです。

妊活記『私のガラポン不妊治療』を書き進める中で起きた、心の温度が上がる一期一会のお話でした。

プロフィール

【ライターM・T】
1973年生まれ。女性誌、男性誌、音楽専門誌、ライフスタイル誌、CDのライナーノーツなどで文筆活動を展開中。
2017年、43歳の時に第一子を出産。本コラム「私のガラポン不妊治療」では、40歳から開始して約2年間に及んだ不妊治療を振り返る。

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