思わぬ病気やケガで入院をしたら、それだけで慌ててしまいますよね。治療の説明を受けたり、入院のために着替えや日用品を荷造りしたり、職場に休むことを連絡したりと忙しいうえに、病院に支払うお金も工面しなければなりません。

そこで、入院したときのお金の支払いの手続きの流れや、負担を軽くする方法を知っておきましょう。

入院・治療の費用は退院時に支払う

入院をして手術や治療を受けたら、それらの費用は退院時にまとめて支払うのが一般的です。退院をする日に、病室に請求書が届いたり、請求額が確定したことを病院のスタッフが知らせに来てくれたりします。

また、入院期間が長い場合には、入院中でも入院費を請求されることがあります。月に2回などのペースで、病室に請求書が届くことが多いようです。

入院費用の支払い

請求書を受け取ったら、診察券をもって会計窓口に行って支払います。支払うのは自己負担分ですので、保険がきく治療なら現役の方は3割負担です。70歳以上の方は年齢・所得により1~2割負担になります。また、6歳以下の未就学児は原則2割負担、お住まいの自治体が発行する医療証を提示することで、さらに自己負担が抑えられるところもあります。

→詳しくはこちら子どもにかかる医療費をカバーする「医療費助成制度」

医療費の一部負担(自己負担)割合についての図

出典:厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」

領収証で内訳を確認

支払いが終わると、「請求書兼領収証」が発行されます。ここには、受けた治療の種類に応じて、診療報酬の点数、内訳、金額などが記載されています。

保険がきく治療費用の部分は、点数で表示されています。医療費は1点につき10円で、このうち自己負担分を支払います。たとえば入院基本料が960点とあれば、医療費は9,600円、3割負担の場合、うち自己負担として請求されるのは2,880円になります。

保険がきかない費用の部分は、「保険外」などと記され、請求金額がそのまま記載されています。たとえば、保険がきかない治療を受けたとき、分娩、入院中の食事、差額ベッドなどにかかる費用は全額が自己負担です。

費用が高額なら「高額療養費制度」で戻ってくる

入院が長かったとき、大きな手術をしたとき、出産をしたときなどは、窓口で請求される金額が高額になりがちです。自己負担が3割であっても、数万円、数十万円単位の負担になると、家計にはダメージになりがちですよね。

そこで、健康保険には「高額療養費」という制度があり、負担を抑えられるようになっています。たとえば、70歳未満で年収が約370~約770万円の方が、1カ月の窓口負担30万円だった場合、その月の自己負担は87,430円になります。そして、30万円のうち212,570円は高額療養費として後で健康保険から戻ってきます。

→詳しくはこちら「入院・通院費を取り戻す、高額療養費と医療費控除の手続き」「高額療養費と医療費控除の違い、それぞれいくら戻ってくる?」

例:年収約370万円~770万円の場合(3割負担)
100万円の医療費で、窓口の負担(3割)が30万円かかる場合

ご契約例高額療養費制度の図出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度」

高額療養費の対象となるのは、保険がきく診療費です。外来・通院でかかった診療費も対象になります。ただし、入院中の食事代や保険がきかない自費診療は対象外です。また、同じ月に複数の医療機関にかかった場合は合計して、上限額を超えれば高額療養費の対象になります(ただし69歳以下は受診者別、医療機関別、入院・通院別で21,000円以上のものを合算できます)。

高額療養費の受け取り・手続き方法

高額療養費の受け取り方は、加入している健康保険の種類によって異なります。

会社の健康保険組合にご加入の場合

お勤めの方は、自分では特に手続きをしなくても、会社の健康保険組合で高額療養費の計算をして還付の手配をしてくれるのが一般的です。医療機関の窓口で保険証を提示すると、かかった医療費の情報が健康保険組合に共有されるため、会社で手続きをしてくれるのです。のちに受け取るお給料に、還付された高額療養費が上乗せされて戻ってくることが多いです。還付されたときには、給与明細にその旨も記載されます。

協会けんぽ・国民健康保険にご加入の場合

中小企業にお勤めで協会けんぽに加入している方や、自営業、無職、年金生活などで国民健康保険に加入している方は、自分で高額療養費の受取手続きが必要です。「高額療養費支給申請書」を、加入している健康保険窓口に提出します。書類には、診療を受けた日付、医療機関名、自己負担した金額、還付を受け取る銀行口座情報などを記入します。協会けんぽに加入している方は、所属の都道府県支部に、国民健康保険に加入している方は、お住まいの地域の窓口に提出します。

はじめから自己負担を軽減するなら「限度額認定証」を提示

高額療養費を受け取るまでには、一般的には3カ月~4カ月かかります。お勤め先の健康保険組合であっても、協会けんぽや国民健康保険であっても、診療を受けた医療機関の診療報酬明細書の情報を確認する時間がかかるためです。

ですから、退院して窓口で医療費を支払う時点ではまとまった費用を自分で負担しなければなりませんし、高額療養費を受け取るまでの数カ月は補てんがありません。

そこで、はじめから負担を軽減する方法もあります。それが「限度額認定証」というものです。

限度額認定証とは?

限度額認定証とは、加入している健康保険にあらかじめ発行してもらい、医療機関の窓口に提示しておくと、窓口での請求金額に上限が設けられるものです。

たとえば上記の例で、高額療養費制度による自己負担限度額が87,430円だったら、同じ月にそれ以上の医療費がかかっても、それ以上は請求されません。

限度額認定証は医療機関に提出するものですので、請求の限度額は医療機関ごとに設定されます。仮に、同じ月に複数の病院で医療費がかかったら、それぞれの病院で限度額まで請求されます。

ただし、高額療養費そのものについては、所定の要件を満たすと複数の医療機関での自己負担を合算できます。下記の例では、A病院で87,430円・B病院で87,430円を請求されると、自己負担の合計は174,860円ですが、最終的に自己負担するのは87,430円ですみます。

例:70歳未満・年収約370万円~約770万円の場合(3割負担)

ご契約例高額療養費制度の図出典:厚生労働省「高額療養費制度の概要」を基に筆者作成

限度額認定証の手続き方法

発行してもらうには、加入している健康保険組合に申請します。お勤めの方は、お勤め先の人事部などに申し込む場合もあります。通常は1週間程度で発行されます。申請する際には、保険証が必要です。また自治体の国民健康保険の場合は、マイナンバーカードなどの本人確認書類も必要です。

生命保険金の受け取りのために診断書もとっておく

生命保険の医療特約や医療保険に加入している方は、入院や手術、通院をしたことで給付金を受け取れるかもしれません。受け取りには、原則として各保険会社が定める書類を提出します。必要書類の数や種類は、保険会社や受け取る給付金の種類によって異なりますが、一般的には次のものが必要です。

・保険金・給付金請求書兼同意書
・診断書
・入院証明書
・事故状況報告書(けがの場合)

このうち診断書は、原則として診療を担当した医師に書いてもらわなければなりません。ほとんどの病院では、すぐに診断書を書いてもらうことはできず、受け取りまでに所定の日数を要します。ですから、入院しているうちに診断書の発行を病院に依頼しておくのがスムーズです。保険会社に連絡して診断書の用紙を送ってもらうか、保険会社のウェブサイトから用紙をダウンロードしておくとよいでしょう。

診断書はコピーでよい場合もある

診断書の様式は、保険会社所定の書式が指定されている場合と病院で発行される診断書などで良い場合、原本のみ受付の場合とコピーでも可能な場合などが保険会社によって異なります。複数の保険会社に契約している場合には、原本証明の印を押してもらうなどの要件を満たすと、ある会社に提出するための診断書をコピーして他の保険会社に提出しても受け付けてもらえるところもあります。医師の診断書を発行してもらうには1通当たりおおむね5千円~1万円かかりますから、1通で複数の保険の請求に使えると負担が少なく済みます。

なかには、入院や治療の状況、契約している保険の内容によっては、医師の診断書がなくても給付金を受け取れる保険会社もあります。この場合は「治療状況報告書」や「入院申告書」など保険会社に指定された書類を自分で記入し、病院で領収書とともに発行される「診療明細書」を提出します。診療明細書は原則として無料で発行されますので、保険金や給付金を請求するための費用を節約できます。

このように、契約している保険会社や保険の内容などによって、必要書類が異なる場合もあります。不備なく手続きするためには、まずは保険会社の窓口に電話で連絡して、手続き方法を確認すると安心です。

医療保険ランキングはこちら

参考:全国健康保険協会「高額療養費について」
参考:全国健康保険協会「限度額適用認定証とは」

本文:CFPファイナンシャルプランナー 加藤梨里