給与明細の見方その1(受取る給与のしくみを知ろう)では、私たちが受け取る給与の算出根拠や手当の種類などを説明しました。ここでは、会社が支払った給与からマイナスされる「控除」の内容を説明します。

控除とは?

従業員が実際に受け取る給与の金額は、会社が従業員に支払った「支給額」の全額ではありません。会社が従業員に報酬を支払うときは、従業員の手元に入金する前に、国に税金や社会保険料を先に納めます。これを「天引き」と呼び、給与明細の控除項目欄に記載されます。
また、会社で積み立てをしている場合や保険に加入している場合、貯蓄額や保険料の徴収を給与天引きに設定すると、先にその分が差し引かれた金額が入金されます。
給与明細では、以上のように従業員が収めるべき保険料や税金などを、会社が支給した金額からあらかじめ差し引くとき、これを、「控除項目」としています。

<表3:控除欄の詳細>

控除欄の詳細
天引きされる税金や社会保険料には以下の項目があります。

控除項目の種類:社会保険料

◇ 健康保険料
健康保険とは、従業員が病気やけがで医療機関にかかったとき、治療や投薬にかかる医療費の負担を軽くする保険です。また、病気やけがによって休業や死亡に見舞われたり、分娩をしたりといった際には現金が支給されるしくみもあります。健康保険には会社や職業によって組合健康保険、協会けんぽ、国民健康保険の3種類があります。
保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて算出します。「標準報酬月額」とは給与の平均月額のことです。年に1回、4,5,6月に受けた報酬の平均額により決定します。
保険料率は保険の種類や保険者(会社の健康保険組合、市区町村など)によって異なります。一般的に会社員が加入する組合健康保険では、それぞれの健康保険組合が定めた料率を適用します。協会けんぽは都道府県によって異なり、全国平均は10%(平成28年度)です。国民健康保険は市区町村が定めた料率を使用します。
算出された保険料は、会社と従業員が一定割合ずつ負担します。給与明細では、この従業員負担分が控除されています。協会けんぽや多くの組合健康保険では半分ずつ負担しますが、一部の組合健康保険では負担割合が異なるところもあるようです。詳しくは加入している健康保険の保険者に確認してください(※1)。

※1協会けんぽHP:http://www.kyoukaikenpo.or.jp/

◇ 介護保険料
介護保険とは、寝たきりや認知症などで自力での生活が困難になったときに、介護サービスを受けることができる保険です。40歳から64歳までの従業員は介護保険料を負担します。
保険料は健康保険同様、標準報酬月額に保険料率をかけて計算します。料率は、1.58%(協会けんぽの場合。平成28年度)(※2)で、会社と従業員が半分ずつ負担します。給与明細では、この従業員負担分が控除されています。

※2協会けんぽHP参照:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3130/h28/280203

◇ 厚生年金保険料
厚生年金保険とは、老齢で退職したり、身体に障害を負ったり、死亡したりといった場合に、本人や家族が年金を受給できる保険です。これは、国民年金の上乗せ部分にあたり、一般的に会社員が加入します。基礎部分と上乗せ部分の保険料をまとめて、「厚生年金保険料」として納めます。
保険料は健康保険同様、標準報酬月額に保険料率をかけて計算します。料率は17.828%(平成27年9月分~平成28年8月分適用)(※3)で、会社と従業員が半分ずつ負担します。給与明細では、この従業員負担分が控除されています。

※3社会保険庁HPを参照:http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-gaku/gakuhyo/20150731.html

◇ 雇用保険料
雇用保険とは、従業員が失業した時に次の職に就くために国が生活資金を給付する保険制度です。雇用保険には労働者(31日以上の雇用見込みがあり、1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であることが要件。平成28年現在。)を雇用するすべての事業所が強制的に加入します。
保険料は、報酬(労働の対価とみなされるもの。一般的には給与総支給額。)に雇用保険料率1.1%を掛けて算出します。これを会社と従業員が一定割合ずつ負担します。一般事業所の場合は事業主が0.7%、従業員が0.4%負担します。(平成28年度料率)給与明細では、この従業員負担分が控除されています。

健康保険、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険を合計したものが、「社会保険料合計額」です。この金額は課税対象にはなりません。支給項目欄にある「課税支給額(課税合計)」から「社会保険料合計額」を引いたものが、「課税対象額」として所得税と住民税の対象になります。

◇ 所得税
所得税とは、所得の額に応じて国に納める税金です。所得税の正式な確定額は、年末調整や確定申告によって決定しますが、毎月の給与で概算額を算出することになっています。そして、概算額を従業員の給与から会社が天引きして納税するしくみを「源泉徴収制度」といいます。
所得税には、所得の額に応じて5%~45%の料率が定められていますが、毎月の給与からの源泉徴収では上記の「課税対象額」に応じて定められる概算の税額が天引きされます(※4)。

※4:天引きされる概算の税額については、国税庁のホームページ
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2008/data/00.pdfをご参照ください。

◇ 住民税
住民税とは、住所地のある市区町村に納める税金です。会社員の場合は、雇っている会社に徴収の義務があり、所得税と同様に毎月の給与から天引きされます。
住民税額は、毎年1月1日の住民基本台帳にもとづいて、前年1月1日から12月31日までの給与総額をもとに算出されます。税率はお住まいの市区町村により異なります。

◇ その他
財形貯蓄をしていたり、会社の団体扱いで生命保険などに加入したりしている場合は、この控除欄に貯蓄額や保険料が記載されます。

給料日に受取る給与明細の中身について、普段は入金される金額しか意識しない方も多いかもしれません。しかし、給与明細には、日々の仕事の成果から、将来訪れるリタイア後の暮らしに影響する年金についてまで、人生の様々なお金に関する情報が満載されています。特に、社会保険料に関しては、年金の加入記録になることもありますので、給与明細をなくさずにきちんと管理するようにしましょう。
また、生命保険や損害保険に加入して保険料を支払ったとき、医療費を一定額以上支払ったとき、住宅ローンを返済しているときなど、年末調整や確定申告で税の軽減を受けようとするときにも、給与明細が必要になることがあります。毎日働いて稼いだお給料の内容を理解しておけば、毎年の税金や将来の年金受給など、いざという時にうまく生かせるでしょう。

※ここで説明している社会保険や税のしくみ、料率についてはすべて平成28年4月1日現在のものです。また、加入する保険の種類やお住まいの市区町村により上記と異なる場合があります。個別のケースについては必ずご自身の勤務先や加入されている保険者等にご確認ください。

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本文:CFPファイナンシャルプランナー 加藤梨里