女性のがんの中で最も患者数が多い乳がん。日本でも患者数が増え続けており、現在は約12人に1人の女性が乳がんを経験するといわれています。

(詳しくは「乳がんと検診」ページを参照。)
 乳がんを経験した方にとって、薬物療法や抗がん剤による治療を終了した後も心配なのが「再発」の問題です。そこで、乳がんの再発や転移のリスクについて知っておきましょう。

早期発見が再発を防ぐカギ

 乳がんは、早期に発見するほど再発が少ないことがわかっています。進行度の低いがんの場合、がんにかかった10年後に生存している割合は90%以上です。しかし、進行してしまっていると、その割合は2割台になってしまいます。また、がんの中には、最初の診断の時点でがんの転移が進行していて、手術ができないこともあります。がんで命を落とさないためには、早期発見が重要です。

乳がんの「転移」や「再発」のしくみ

 乳がんのがん細胞は、比較的小さい時期から乳腺組織からこぼれ落ち、リンパや血液の流れに乗って全身に運ばれます。このため、診断がついた時点ですでに目に見えない小さな転移があると考えられており、これを「微小転移」と呼びます。

 このうち、がん細胞が乳腺から離れた臓器(肺、肝臓、骨など)に転移し、小さな転移巣を作ることがあります。この転移巣が次第に大きくなると症状が出たり、検査で検出されたりし、これを「遠隔転移」と呼びます。また、遠隔転移を有する乳がんのことを総称して「転移性乳がん」と呼びます。

 初めて見つかった乳がんを手術などで治療した後、上記のようながん細胞が増殖するリスクが高い場合には、化学療法やホルモン療法を行って増殖を防ぎます。しかし、それでも死滅しなかったがん細胞が時間をかけて徐々に大きくなり、再び出てくることがあります。これを「再発」と言います。再発の多くは上記の「転移性乳がん」で、他の臓器にがんが発生しますが、手術をした部分だけに再発する「局所再発」の場合もあります。

乳がんの再発率は、がんの進行度によって違う

 乳がんは、がんの広がり(乳房のしこりの大きさ)や転移の状態によって大きく5段階の臨床病期(ステージ)に分類されます。乳がんの再発のしやすさは、初めにがんと診断された時点でのステージによって異なります。Ⅰ期ならば再発率は1割以下、Ⅱ期であれば3~4割、Ⅲ期以上になると5割を超えるといわれています。

<表1「乳がんのステージ」>

乳がんのステージ(出所:がんサポート情報センターHPより筆者作成)

 転移や再発が発見された場合には、長期間にわたる治療が必要になります。また、ステージが進行するに従い、予後が悪くなります。しかし、万一転移や再発が見つかっても、早期であれば生存率が高まることが分かっています。

乳がんステージ別の予後

検診が転移や再発の早期発見のカギ

 そこで、がんの進行を放置せずに早期発見・早期治療を可能にするのが検診です。日本乳癌学会のガイドラインによると、特にマンモグラフィ検診は、40歳以上の女性で乳がんの死亡率を減少させる効果があると、研究で明らかにされています。そのほか、視触診や超音波検査も、早期発見に効果があります。定期的に検診を受けていれば、もし万が一がんが転移、再発したとしても、早期に対応し、手遅れになるのを防ぐことができます。

<がん検診の方法>

定期健診スケジュール

<推奨グレードについて>
推 奨 表 現
推奨グレードB 利益(死亡率減少効果)が不利益を上回るがその差は推奨Aに比し小さいことから、対策型検診・任意型検診の実施を勧める
推奨グレードI 死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、利益と不利益のバランスが判断できない。このため、対策型検診として実施することは勧められない。 任意型検診として実施する場合には、効果が不明であることと不利益について十分説明する必要がある。適切な説明に基づき、個人レベルで検討する

(がん検診ガイドライン 国立がん研究センターより)

万が一の再発に備えて、乳がん専用のガン保険も

 乳がんの予防に効果的な生活習慣については、現在研究が進められており、こまめな運動や脂肪分の少ない食事が良いといわれています。あるアメリカの研究では、低脂肪食を食べた初期乳がん患者の5年後の再発率が9.8%で、通常食を食べた患者の再発率12.4%よりも再発リスクが24%低かった、という結果も出ています。(※1)再発を防ぐためには、定期的な健診とあわせて健康的な生活習慣を心がけることが大切です。

 もし万が一、がんが再発してしまった場合には、完治が難しく治療が長期化する傾向にあります。その場合に心配なのが治療にかかる費用です。

 入院や治療にかかる費用を補てんするには、医療保険が便利です。しかし、一度がんにかかると多くの場合、新規の保険に加入することができなくなってしまいます。もし、既にご加入の医療保険や保険の医療特約があれば、できる限り継続しておくとよいでしょう。また、近年は乳がんを経験された女性専用のガン保険も出てきています。もしもの時に備えて、がんに対する備えを厚くしておけば、さらに安心です。

 厚生労働省の統計によると、乳がんにかかった方の5年生存率は89.1%です(※2)。多くの場合、治療をすれば治る病気です。しかし、一度かかった乳がんと付き合っていくうえでは、治療だけでなく、その後の生活面においてもさまざまな精神的、身体的負担が伴います。病気はかからないに越したことはありませんが、いざというときに負担を少しでも軽くできるよう、日頃からの備えへの意識を高めておくとよいですね。

※1出所:米国立がん研究所(NCI)、National Cancer Institute誌2006年12月20日号
※2出所:がん情報サービス

本文:CFPファイナンシャルプランナー 加藤梨里