乳がんを経験した方にとって、薬物療法や抗がん剤による治療を終了した後も心配なのが「再発」の問題です。そこで、乳がんの再発や転移のリスクについて知っておきましょう。

乳がんの生存率は高い

女性のがんの中で最も患者数が多い乳がん。日本でも患者数が増え続けており、現在は約11人に1人の女性が乳がんを経験するといわれています※1。一方で乳がんは比較的生存率の高いがんでもあり、2006~2008年の5年相対生存率は91.1%。つまり、乳がんと診断された人のうち9割以上は5年後に生きているわけです。

しかしながら、生存率はがんの進行状態によっても異なります。乳がんの5年生存率は、がんが最初に発生した臓器にとどまっている状態では98.9%であるのに対して、離れた臓器やリンパ節に転移した状態では33.7%です※2。ですから、完治のためには早期発見しできるだけ早く治療すること、転移がないことが望ましいといわれています。

乳がんの「転移」や「再発」の種類としくみ

ただ、転移や再発を完全に防ぐことは、現在の医療技術では極めて困難です。では、転移や再発はどのように起こるのでしょうか。

乳がんの「転移」の種類としくみ

乳がんのがん細胞は、比較的小さい時期から乳腺組織からこぼれ落ち、リンパや血液の流れに乗って全身に運ばれます。このため、診断がついた時点ですでに目に見えない小さな転移があると考えられており、これを「微小転移」と呼びます。

このうち、がん細胞が乳腺から離れた臓器(肺、肝臓、骨など)に転移し、小さな転移巣を作ることがあります。この転移巣が次第に大きくなると症状が出たり、検査で検出されたりし、これを「遠隔転移」と呼びます。また、遠隔転移を有する乳がんのことを総称して「転移性乳がん」と呼びます。

乳がんの「再発」の種類としくみ

初めて見つかった乳がんを手術などで治療した後、上記のようながん細胞が増殖するリスクが高い場合には、化学療法やホルモン療法を行って増殖を防ぎます。しかし、それでも死滅しなかったがん細胞が時間をかけて徐々に大きくなり、再び出てくることがあります。これを「再発」と言います。再発の多くは上記の「転移性乳がん」で、他の臓器にがんが発生しますが、手術をした部分だけに再発する「局所再発」の場合もあります。
(参考:国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター患者必携「がんの再発や転移のことを知る」

転移や再発が発見された場合には、長期間にわたる治療が必要になります。また、ステージが進行するに従い、予後が悪くなります。しかし、万一転移や再発が見つかっても、早期であれば生存率が高まることが分かっています。

検診が「転移」や「再発」の早期発見のカギ

そこで、がんの進行を放置せずに早期発見・早期治療を可能にするのが検診です。日本乳癌学会のガイドラインによると、特にマンモグラフィ検診は、40歳以上の女性で乳がんの死亡率を減少させる効果があると、研究で明らかにされています。そのほか、視触診や超音波検査も、早期発見に効果があります。定期的に検診を受けていれば、もし万が一がんが転移、再発したとしても、早期に対応し、手遅れになるのを防ぐことができます。

乳がんの再発を予防する方法は?

乳がんの再発予防に効果的な生活習慣については、現在研究が進められており、断定的な結論はほとんど出ていません。ただ、肥満が再発リスクや乳がんによる死亡のリスクと関連することは複数の研究から明らかになっています。肥満の患者さんの乳がん再発リスクは、肥満でない患者さんの1.4~1.8倍高いことが示されているのです。
(参考:日本乳癌学会「Q54.食生活と乳がん再発リスクとの間に関連はありますか。」

再発を防ぐためには、定期的な健診とあわせて健康的な生活習慣を心がけることが大切です。

乳がん再発・転移に特化したがん保険も

 もし万が一、がんが再発してしまった場合には、完治が難しく治療が長期化する傾向にあります。その場合に心配なのが治療にかかる費用です。

 入院や治療にかかる費用を補てんするには、医療保険が便利です。しかし、一度がんにかかると多くの場合、新規の保険に加入することができなくなってしまいます。もし、既にご加入の医療保険や保険の医療特約があり、がんが再発したときに給付金を受け取りたいと考えるなら、今の契約を継続しておくとよいでしょう。また、近年は乳がんを経験された女性専用のがん保険も出てきています。もしもの時に備えて、がんに対する備えを厚くしておけば、さらに安心です。

 一度かかった乳がんと付き合っていくうえでは、治療だけでなく、その後の生活面においてもさまざまな精神的、身体的負担が伴います。病気はかからないに越したことはありませんが、いざというときに負担を少しでも軽くできるよう、日頃からの備えへの意識を高めておくとよいですね。

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※1 出典:国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター「最新がん統計」より筆者算出

※2 出典:国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター「全国がん罹患モニタリング集計 2006-2008年生存率報告」「地域がん登録精度向上と活用に関する研究 平成22年度報告書」

本文:CFPファイナンシャルプランナー 加藤梨里