収入保障保険の保険金を受け取ったときには、税金がかかります。ただしそのかかり方や税金の金額は、受け取り方によって異なります。ここでは事例を通して、保険金の受け取り方それぞれでかかる税額を計算してみましょう。

<事例>

Aさん一家は、夫Aさん、妻Bさん、子Cさんの3人家族です。Aさんは35歳の時、次のような収入保障保険に加入しました。 
  月払保険料:4,425円、保険金額:15万円/月、保険期間:60歳
  保険料はAさんが負担し、受取人は妻Bさんです。
保険料負担者 被保険者
(亡くなった人)
受取人
夫A 夫A 妻B

Aさんは、契約から10年後の45歳の時に亡くなりました。(保険料払込期間:120か月)
受け取ることができる保険金額は
一時金で受け取る場合:2,160万円
年金で受け取る場合:月15万円×15年(総受取見込み額2,700万円)
年金受給権評価額(※):2,160万円

収入保障保険は、一時金で保険金を受け取ると、年金形式で受け取った場合の総額に比べて保険金の受取額は少なくなります。

(※)年金受給権評価額とは、年金受給権(年金を受け取る権利)を相続や贈与によって取得
した場合の評価額のこと。

次のいずれか多い額が年金受給権の評価額(年金の権利評価額)となります。
(1)解約返戻金の額
(2)年金に代えて一時金の給付を受けられる場合は一時金の金額
(3)予定利率等をもとに算出した金額
(予定利率とは、生命保険の保険料の計算等に用いられる基礎率の1つです)
つまり、将来受け取る予定の年金総額ではなく、現在価値を評価額として課税の対象にするイメージです。

<事例>一時金で受け取る場合にかかる税金

  保険料負担者 被保険者
(亡くなった人)
受取人 死亡時
(1) 夫A 夫A 妻B 相続税

相続税には生命保険金の非課税枠があり、相続人1人について500万円までは税金がかかりません。Aさんの相続人は妻Bさん、子Cさんの2人ですから、一時金で受け取った2,160万円のうち、相続税の対象となるのは

2,160万円-(500万円×2)= 1,160万円

となります。この1,160万円を他の相続財産と合計して相続税を計算しますが、相続税には基礎控除といって、税の対象とならない枠(3,000万円+600万円×相続人の数)があります。Aさん一家の場合なら、相続財産の合計が4,200万円(3,000万円+600万円×2人)を超えた分に相続税が課税されます。実際の相続税額は、生命保険以外の相続財産によって決まります。

<事例>年金で受け取る場合にかかる税金

収入保障保険の保険金を年金で受け取る場合には、次の2段階で税金がかかります。
1.死亡時:年金受給権評価額に対して相続税
2.年金を受け取るとき:1.で相続税の対象にならなかった受取額に対して、所得税(雑所得)

1.死亡時の相続税

保険料を支払っていた夫Aさんが亡くなり、妻Bさんが受け取った場合、年金受給権評価額に対して相続税がかかります。夫Aさんの例では、年金受給権評価額は2,160万円です。ここに、一時金で受け取った場合と同じように相続税がかかります。

2.年金を受け取るとき

2年目以降には所得税がかかります。所得税は、次のステップで計算します。

(1).年金受け取り額のうち課税対象になる金額を求める
(2).支払った保険料相当分を課税対象から差し引き、「雑所得」の額を求める
(3).ほかの所得と合わせて所得税の税額を計算する
各ステップ順に、税額を計算してみましょう。

(1).年金受け取り額のうち課税対象になる金額を求める

所得税の対象になるのは、受け取る年金のうち、年金受給権の相続税評価割合(一時金として受け取る場合の保険金額÷年金受け取り総額)に応じて決められる金額です。
今回のケースでは、相続税評価割合は、

2,160万円÷2,700万円=80%になります。
相続税評価割合が75%超80%以下の場合、課税されるのは年金受け取り総額の20%です。ですので、

2,700万円(年金受け取り総額)×20%=540万円

に対して、2年目から最後に年金を受け取る15年目までに分けて所得税(雑所得)がかかります。

ただし、毎年同じ金額に税金がかかるのではありません。図2のように、初年度は所得税がかかりません。2年目以降から少しずつ、受け取る保険金の一部が課税対象になり、その割合が増えていきます。

課税対象額:540万円

(2).支払った保険料相当分を課税対象から差し引き、「雑所得」の額を求める

課税部分と非課税部分の図

(1).で求めた課税対象額のうち、支払った保険料部分は、必要経費として差し引くことができます。課税対象となるのは、受け取る年金のうち図2のピンクの部分(年金受け取り総額の20%)なので、必要経費も払い込んだ保険料の20%になります。
これまでに払い込んだ保険料の総額は、

4,425円×12か月×10年= 53万1,000円です。このうち20%(53万1,000円×20%)の10万6,200円
が、年金受け取り額のうち所得税の対象となる部分の必要経費にあたります。

したがって、(1).で計算した540万円のうち、
540万円-10万6,200円= 529万3,800円が、実際に所得税を課税される対象額「雑所得」になります。

雑所得額:529万3,800円

これをもとに、実際に2年目から15年目までに受け取った年金のうち、所得税の対象となる金額は、以下の通りです。

  受け取る保険金
(年金)
所得税の対象額
2年目 180万円 5万417円
3年目 180万円 10万834円
4年目 180万円 15万1,251円
5年目 180万円 20万1,669円
6年目 180万円 25万2,086円
7年目 180万円 30万2,503円
8年目 180万円 35万2,920円
9年目 180万円 40万3,337円
10年目 180万円 45万3,754円
11年目 180万円 50万4,171円
12年目 180万円 55万4,589円
13年目 180万円 60万5,006円
14年目 180万円 65万5,423円
15年目 180万円 70万5,840円

(3).ほかの所得と合わせて所得税の税額を計算する

実際にどのくらいの税金を支払うかは、保険金以外の収入額によって違ってきます。所得税の税額は他の所得と合わせて税率を決定して計算します。妻Bさんに、保険金以外の収入があれば、それも合わせて所得税を計算するのです。

ここでは、妻Bさんにパート収入100万円と遺族年金100万円があるとして、子Cさんが大学生の場合と、社会人になり独立した場合の2つのケースで、所得税の金額を計算してみましょう。

<前提条件>

他の収入に対する税金は、次のように取り扱われます。
・遺族年金100万円:非課税(遺族年金には税金がかかりません)
・パート収入100万円:収入額がそのまま課税対象になるのではなく、給与所得控除65万円を引いた後の100万円―65万円=35万円を、税の計算上で使う「給与所得」とします。

ケース1:保険金の受け取り10年目、子Cさんが大学生の場合

収入保障保険の年金180万円のうち、10年目の課税対象金額は45万3,754円です(図3)。

所得税の対象となるのは
(収入保障保険の雑所得)+(給与所得)
 45万3,754円 +(100-65)万円=80万3,754円………所得の合計になります。

これらの所得から、税額を計算する前には、妻Bさんの状況に応じた控除を差し引きます。もし、この年に妻Bさんが以下の控除を使えるとしたら、控除額の合計は150万円になります。
・基礎控除:38万円
・扶養控除:63万円(子Cさんが19歳~23歳未満の特定扶養親族の場合)
・寡婦控除:27万円
・社会保険料控除: 22万円(国民年金、健康保険、介護保険の保険料支払い合計額)

38万円+63万円+27万円+22万円=150万円………控除額の合計

先ほど求めた所得の合計と、控除額の合計を比べると、
80万3,754円 < 150万円 です。

所得の合計よりも控除額のほうが大きいので、この年の妻Bさんの所得税は、ゼロになります。

このケースで妻Bさんが納めるべき所得税=0円

ケース2:保険金の受け取り15年目、子Cさんが独立した場合

収入保障保険の年金180万円のうち、15年目の課税対象額は70万5,840円です(図3)。

所得税の対象となるのは
(収入保障保険の雑所得)+(給与所得)
70万5,840円 +(100-65)万円=105万5,840円………所得の合計 になります。

この所得の合計から、税額を計算する前には、妻Bさんの状況に応じた控除を差し引きます。かりにこの年に使える控除が以下の通りなら、控除額の合計は60万円になります。
・基礎控除:38万円
・社会保険料控除: 22万円(国民年金、健康保険、介護保険の保険料支払い合計額)

38万円+22万円=60万円……………控除額の合計
 
(子Cさんが独立すると扶養控除(63万円)と寡婦控除(27万円)が使えなくなり、ケース1よりも少なくなります。)

先ほど求めた課税所得と、控除額の合計を比べると、
105万5,840円 < 60万円 です。控除額よりも所得の合計が大きいので、超えた部分(105万5,840円-60万円=45万5,840円)に所得税がかかります。

105万5,840円-60万円=45万5,840円………課税される所得額になります。

45万5,840円の場合の税率は5%です。すると

45万7,196円×5%=2万2,859円……納める所得税額になります。

この年に妻Bさんが納めるべき所得税額:2万2,859円

このように、保険金を年金形式で受け取る場合には、受取額に占めるその年の所得税対象額や、その年のご家族の状況に応じた控除額によって、毎年変わります。

受け取る年金部分だけで見れば、所得税の対象額が毎年高くなっていくことから、負担する所得税額も毎年高くなります。つまり、年金を受け取る最後の年(この例なら15年目)の所得税額が、最も高くなります。

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文:ファイナンシャルプランナー蟹山 淳子(編集:マネーステップオフィス株式会社)